阿部市長の自治についての文章を取り上げて川崎縦貫高速鉄道に対しても住民投票や市民意見の集約について質問しました。共通認識として行政には説明説得責任が求められるが民意の形成が前提だと展開しました。

 ◎市長(阿部孝夫) まさしくこの案件は,住民投票制度ができていれば住民投票にかけるべき案件だと思っておりますし,そこに書いてありますとおり,その制度がなければ,それにかわる形での市民意見の集約が必要な事業である,

(中略)

さらに,これまでの市民部会,専門学識者部会の出される結論を踏まえて,そして再度市民の皆様方の御意見を伺う機会を設けて、この答弁によって2ヵ月後の12月には1万人の市民アンケートの実施が決定されていきました。

実施結果は後述しますがアンケートによる民意は、川崎縦貫高速鉄道に経済状況と市財政が良くなるまで一時延期との考えが集約されました。

そして事実上、鉄道事業の廃止へとつながっていきます。横浜市営地下鉄3号線が再び日の目を見る大きな転換点だったかもしれません。

 

平成14年 第3回定例会-1008

24番(雨笠裕治) 御理解をいただければ本当にいいんですが,また,そうしていただかなければいけないと思うんです。非常に厳しい財政状況の中ですから。ただ,そうは言っても,そううまくいけばいいなと思いますが,例えば,直近で言いますと,長野県の事例なんか,あれはかなり国は,変化した出方がもしあるとすれば,出してくると思うんですよ。ですから,この辺の変化等も,市長さんはもう本当にそういう意味では地方自治の運営によくたけていらっしゃる方ですから,このあたりの分析というのがわかりましたら,その時点で結構ですが,他都道府県のことについて言われるのは厳しいかもしれませんが,ぜひこの辺についての分析がもし市長さんの方でおわかりになりましたら,そのときにはお示しをいただきたい。それは要望でございます。
 それでは,3点目に移らせていただきたいと思います。それでは次に,市民意見の集約について伺わせていただきたいと思います。まず,「地方議会人」という,こういう雑誌,拝見させていただきました。市長さんが寄稿された文が載っております。「第三の改革は何を目指すのか」。私,これは正直に言って,ことしいろいろな文章を読みました。いろんな社説も読みましたし,それからいろんな論評,寸評も読みましたが,この文章は一番よくわかります――済みません,これはお世辞じゃないんですよ。うまく答えを誘導しようということでお世辞じゃなくて,本当に端的に,国と地方の関係,それから,今の混沌としたこの地方の自治のカオスというんでしょうか,この状況がもう端的にあらわれている。
 その中で私がいいなと思ったのは,きょうこれから質問させていただきます市民意見の集約,これについて出ています。本当は全部読みたいんですね,いい文章ですから。わからない方は後で,ほかの職員の方もぜひお読みをいただきたいと思います。
 その中で,まず第1点,重要な部分が出ています。「地方自治において、代表者の決定を住民が信頼せず、住民が自ら判断しようという傾向が強まってきていることは否定しようもない事実である。しかし他方、こういった傾向に自治体が対応していくシステムは確立されていないし、また運用においてもその準備体制はできていない。広報は必ずしも読まれていないし、説明会を開いても、必ずしも知ってもらいたい住民が多く参加するとは限らない。パブリック・コメント方式は有力であるが、行政が住民を説得しなければならないケースにおいては、行政側の意向を伝えるのに十分ではない。住民投票は、よほど大きな案件だけに限らざるをえないと思う」。まさにそうだと思います。
 そこで,質問させていただきますが,この末節に「住民投票は,よほど大きな案件だけに限らざるをえない」とありますけれども,本市の場合で言えば,この住民投票に仮に当てはまるものとすれば,どういう課題なのか,お答えをいただきたいと思います。

◎市長(阿部孝夫) 住民投票についてのお尋ねでございますけれども,この制度は市政の重要な問題について政策形成等における市民参加を促進し,多様な市民意思をより適切に市政運営に反映させようとする制度でございます。電子投票の導入費用の試算において多額の費用が必要であることが明らかとなった等のこともありまして,現時点において市民投票を実施すべき特定の事案を想定しているわけではございません。本制度につきましては,いろんな課題がございますけれども,まさしく全市民に関係してくるような大きな投資額を持っているような事業,あるいは広く多くの市民の利害関係に直接関係するようなもの,あるいは市民の負担を大きく求めるようなもの,そういったものが想定されるのではなかろうかと思います。以上でございます。

24番(雨笠裕治) 市長,済みません,突然で申しわけないんですけれども,そうしますと,今明確にお答えをいただきましたが,仮にこの投票ができる状態が整っているとすれば,縦貫高速鉄道はこれに当たるとお考えでしょうか。

◎市長(阿部孝夫) 制度がまだ制定されておりませんので,あくまでも想定になるわけでございますけれども,現時点での私の考え方では,もし制度ができておれば該当するものと考えます。

24番(雨笠裕治) ありがとうございます。
 そういう中で,もう一点あるんですね。市長さんのこの文章の中で,端的に市民意見の集約があらわれている。アメリカ型の個人主義が広がってきている。これはもう一番最後のこのところが,最後のくだりがいいんですけれども,そこはちょっときょうは読みませんけれども。「せめて運用だけでも住民中心の考え方を浸透させていかないと、住民の行政に対する批判や反発は大きくなっていく一方である。とくに重要なのはアカウンタビリティ(説明説得責任)である。手間もかかるし、財政負担にもなる。しかし、これなくして新しい時代の地方自治は成り立たなくなっている」,そう思います。
 そこで,アカウンタビリティーというのは説明説得責任。ここで重要なのは,説明説得の「説得」ということだと思うんですよ。「説得」というのは,例えば物に名前をつけるのと同じように,一つの方向性を出すと,その意思がやっぱり入っていく。そういう意味でいけば,一つの意思決定に基づいて説得をされるわけですから,市長さんはこのプランの中では,前提条件としては厳しいということを挙げておられますね,言ってみればこの鉄道について。それで市民に説明をしようとしている。しかし,この前提条件というのは,いろいろ研究部会でも出されました。あれは市長さんの功績だと思います。2割も削減する。あんな削減額というのは僕は見込めないと思っていた。しかし,開いてもらったら,何と2割も削減をすると。大きな効果が出た。これは市長さんの発案での功績だと思います。しかし,それにしても,前提条件となる財政状況は,今議会を通じて厳しいという状況は一向に変わっていない。
 けさありました嶋崎議員の質問にも,ああいう状況で,これからも厳しい状況の中で運営をしていく。そういうフレームは変わっていかない。そうしますと,これは財政が許せばやりたいんだが,財政が許さなければ,やはり中止ということがあり得て,市民に説明をされるのではないかということが非常に危惧されるんです――。というか,市長の本音の部分でのお考えを率直に述べていただきたい。それほど大きな市民にとっての重要な関心事になっています。ひとつお答えをいただければと思います。

市長(阿部孝夫) まさしくこの案件は,住民投票制度ができていれば住民投票にかけるべき案件だと思っておりますし,そこに書いてありますとおり,その制度がなければ,それにかわる形での市民意見の集約が必要な事業である,そのように判断しているところでございます。したがいまして,これまで市民の方々に代表になっていただいた検討会,市民部会を設けて意見をいただいておりますし,また,一方においては学識者部会という形で専門家の御意見も伺って,その間にまたいろんな形で情報が市民の間に出ていきますので,それと同時に市民の御意見もお伺いする。そしてまた,さらに,これまでの市民部会,専門学識者部会の出される結論を踏まえて,そして再度市民の皆様方の御意見を伺う機会を設けて,先ほど御指摘がございましたアカウンタビリティーを実現してまいりたい,そのように考えておるところでございます。

24番(雨笠裕治) 実は市長さん,これはもうここからはお聞きしません。僕は今,非常に誠心誠意,明確にお答えをいただいたと思っています。
 それで,私,実は9月3日の行財政改革プランを出されてから,自分なりに市長さんが多分こういうふうにされるだろうなという方向性で,自分なりにアカウンタビリティーというのをやってみたんです。約100万円かけました,まだ支払っていませんけれどもね。しかし,総額100万円かかって,情報を提供し,そして夜遅くメールが来たことについて,もう誠意を持ってお答えをし,朝,駅頭をすれば,その中であいさつをしていただく中の方には,どうなんでしょう,地下鉄どう思いますかという問いかけをし,ファクスでも郵送でもさまざまな意見をいただきました。総数,少ないかもしれませんが,約300件近くに及びます。この問題の関心の深さを如実にあらわしていると思います。
 その中で,やはりアカウンタビリティーというのは非常に厳しいと思うのは,その意思の出し方によって,残念ながら今回は――市長さんの行財政改革プランの骨子にほぼ沿った形で出させていただきました。その300件の中でお寄せをいただいた麻生区民の皆さん方では,9割以上の方がこの建設には反対という意思を私のところへお寄せをいただいた。しかし,そういう意見をお寄せいただくというのは,実は反対の方が意思を表明することが多くて,その残り約1割の方の,麻生区内にもう1駅でもつくって進めるべきだという意見は少数になってしまう可能性が高い。このあたり,今市長さんがお答えいただきました,住民投票条例にかわる,それにかわる市民意見の集約が必要だと。ですから,ぜひこれは工夫をしていただき,大きな問題ですから慎重に扱っていただきたいと思うんです。市民の方向を向いて,今後,これが大きな川崎市の命運を握るということについては,認識は一致をしております。ぜひ,今,誠心誠意お答えをいただきましたので,その行方をきちっと見守らせていただきまして,質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。