12月ゆいの会の報告 | 障がい児・者の「性」を学ぶ会 《ゆいの会》

障がい児・者の「性」を学ぶ会 《ゆいの会》

障がいのある人たちの豊かな生活を支援していくために、「性」について学びましょう

あけましておめでとうございます。

今年もゆいの会をよろしくお願いします。


12月の報告をします。今回は、菅井純子さんに記録をお願いしました。

参加者は、特別支援学校教員1人、障害者施設長1人、作業所職員1人、高校教員1人、元教職員2人でした。




《相談事例その1》

・中学部の男子生徒に対して、男性の寄宿舎指導員がマスターベーションについての指導をしているが、なかなかうまくいかない様子。学校では友人の頬にキスしたり、若い女性教員に体を接触させたりすることがある。またハイテンションになるとコントロールできなくなる様子が見られる。マスターベーションが確立していないことと落ち着きのなさには関係があるのか? また具体的にどのように指導していけばよいか?

【アドバイス】

・知的障害と自閉的傾向のある生徒というお話なので、マスターベーションをする際の性的ファンタジーを結びにくいのではないか。寄宿舎では本人がリラックスしてできる環境があるか、指導員との信頼関係は十分かが気になる。リラックスした状態で性的なイメージが持て、その上でスムーズなタッチができるような力の入れ具合などを教えると、うまくいくかもしれない。本人の手を外から包み込むようにして介助するとか、対面ではなく背後から抱きかかえるようにして介助するとか、いろいろとやり方はある。学校で情緒不安定になる時があるというお話だが、情緒を安定させるためにはどうしたらいいのかを、あわせて考えていくとよいのではないか。

《相談事例その2》

・作業所の利用者(男性)が友人から性についての情報を得て、性交を体験したという話を職員にしてきた。具体的な話を聞いていくと、つじつまの合わないところもあり真偽は不明だが、「とてもよかったので、これからもっといろいろな人と性体験をしていきたい」と言っており、性的な関心は強い。上司からは保護者に報告するために真偽を確かめるように言われているが、本人は母親には言いたくないと思っており、報告するために確認するというのは、自分としては少し違う気がする。




【アドバイス】

・そういう時こそこの『イラスト版 発達に遅れのある子どもと学ぶ性のはなし』を使って、一緒に学習するのが効果的。教えるのではなく、一緒に読んで学ぼうというスタンスのほうが受け入れやすい。

・指導員が異性だと言いにくいこともあるのでは?

・うちの施設では性の学習を始めてから利用者と職員の関係がとても良くなったが、保護者との相互理解はまだまだこれからの課題である。成人の利用者の場合、研修を実施しても保護者はなかなか来てくれず、連絡のおたよりなども読まない保護者もいる。特にお母さん方には「自分が責められる」という感覚を持っている人が多いように感じる。保護者への接し方、声かけのしかたについても気を配っている。

・性教育の根底にあるのは、自己肯定感を高めること。自分を尊重できるようになると他者も尊重できるようになる。クラスや施設全体の雰囲気が良くなる。その際、職員も利用者も一人の人間として対等な立場でともに学ぶという姿勢が必要である。

・学校での性の学習はとても重要だが、発達に遅れがある場合、卒後も学習が必要である。生活年齢と性的発達(体の発達)ほぼ同じように進んでいくが、心の発達に遅れがあると体の発達とギャップがあるまま学校を卒業する。特に男性は18歳以降にホルモン分泌が最も盛んになる時期を迎え、性的行動が発現しやすい。それに対して指導員が禁止するやり方では絶対にダメ。否定的な言葉かけはしないようにする。また職員が決めるのではなくて、本人が自分で決定する経験をさせて力をつけていくようにしたい。交渉する力、妥協する力をつけていく。先ほどの本を一緒に読みながら学習するのもいいし、サイコロゲームを活用するのもよい。

〔参加者の感想より〕

・性のことを考えることは人間として、生きるうえでとても大切なことだと思います。現在、利用者間恋愛について、どういうふうに取り組んだらいいのか悩んでいます。教材を使って2人でじっくり話し合ってみては、というアドバイスをいただいたので是非やってみたいと思います。

・今まで自分が声かけしてきたことが良かったのだと確認できました。これからも勉強していきたいです。

・思春期男子の性的行動が顕著になってきたことがマスターベーションの確立と関係があるのではと思って伺いましたが、テクニック以前に指導員との信頼関係や本人の不安に対する支援が前提という重要なことを再認識しました。



今年のゆいの会の予定は、次回の記事にてお知らせさせていただきます。