早いもので三が日も本日までです。

 皆様いかがお過ごしでしょうか?

 正月太りなどを経験されていないでしょうか?

 

 休みは自宅でゆっくり過ごしたい私のようなタイプの方にとって比較的長期の休みは非常に危険です。

 仕事が忙しければ、職場では三度の食事以外に間食などの誘惑にかられることありません。

 ところが、休みの日となると、口寂しくなってつい冷蔵庫やお菓子の棚を物色してしまいます。

 

 私が内科の診療に携わるようになったのは訪問診療・総合診療に専門を移したこの数年が初めてではありません。

 一般外科で勤務していた際に、毎週土曜日に消化器内科のクリニックで外勤(簡単にいえばアルバイト)をしていたことがあります。

 

 消化器科のクリニックとはいえ、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの内科的疾患は当然扱います。

 また院長が漢方薬の処方を得意としていたため、私も漢方薬に関する勉強を行いました。

 

 高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病ともよばれる疾患では、治療と同等、あるいはそれ以上に生活習慣の見直しが重要です。

 

 私は患者さんへの話題にでもなればと、『医師が教える食事術 最強の教科書』というものを手にとりました。

 そこには、ジュースには角砂糖10個分ぐらいに相当するようなかなりの糖分が含まれていることが記載されていました。

 当時私は一般外科医で、手術終わりや仕事が一段落すると必ず500mLのコーラを口にしていました。

 眠気覚まし的な役割もあり、1日1本は必ず飲んでいました。アメリカ留学時は恐ろしいことに毎日コーラを少なくとも1.5Lは飲んでいた気がします。

 

 同書の中で、ジュースの中にはかなりの量の糖分が含まれるという記事が何度も出てくるのを見て、私は次のように考えました。

 

 「では、摂取する白米などの炭水化物はそのままに、ジュースだけやめたらどうなるのだろう?」と。

 

 最初の一ヶ月あたりはそれほど変化がみられませんでした。

 しかしながら、二ヶ月程経過すると、自分でみても顔周りがスッキリし始め、周囲からも「痩せたね』と言われる機会が増えてきました。

 

 7月頃からジュースを辞めたのですが、12月下旬には5kg体重が減りました。

 運動量等は変わらず、ただジュースを辞めただけです。

 

 ただここに例のものがやってきました。

 そうです。正月休みです。

 

 当時の私は、朝食抜き、手術が終わると500mLのコーラとともに菓子パンあるいはおにぎりをたべ、夜にがっつり一食食べるという、医師としてあるまじき食生活を送っていました。

 

 7月以降はジュースは控えていたものの、ここに正月休みが入るとどうなるでしょう。

 

 朝ご飯を食べ、気がつけば間食に手を伸ばし、三食しっかり食べる。

 しかも雑煮やら、焼いたおもちは別腹です。

 

 あっという間にリバウンドしたものの、−2kgの体重減少は維持できていました。

 

 ほんと『ジュース恐るべし』です。

 

 栄養指導するようになって気づいたこともあります。

 

 コーラやサイダーなどの炭酸水も飲まず、これといった間食もされていない。

 食事のカロリーバランスも悪くない。

 なのに体重が減らないばかりか、少しずつ増えていく。

 

 そういった方々はよくよく話を聞いていると

 体にいいと思って、野菜ジュースや果物を多く摂取されている場合があります。

 

 野菜ジュースなどは結構盲点で、体にいいという思い込みがあると、ジュースとしてカウントされていない場合があります。

 ビタミンや食物繊維が含まれるという点では野菜ジュースは体にいいかもしれませんが、飲みやすいということは多くの場合、それなりの糖分が含まれていることが少なくありません。

 体によかれと野菜ジュースを多く摂取すると、その分だけ、糖分も多く摂取してしまうというわけです。

 

 また日本の果物は甘くて非常においしいです。

 ところが、あまくておいしいということはやはり、糖分を多量に含んでいることが多いのです。

 

 『健康食品』という名称にも注意が必要です。体にいい成分が入っていれば『健康食品』と呼ばれがちです。しかしながら、それらが摂取しやすいように、あるいは売れやすいように、糖分やその他の過剰摂取が望ましくない成分がふくまれていれば、それは決して『健康食品』とは呼べません。

 

 代謝異常が起こる病気や、心不全などでむくみがひどくなると、摂取エネルギーが多くなくても体重が増えることはあります。

 しかしながら、体重が増えるのは、それなりのエネルギーを摂取している場合が大半を占めます。

 

 私は自分自身へも言い聞かしながら患者さんには次のように説明しています。

 

 「お金と一緒で、体重も、入るものがなければ自然には増えていかないものですよ」と。

 

 最近、痩せ薬として糖尿病の治療薬を使われる方などがいらっしゃるようですが、こちらも要注意です。

 

 よく、人間には血糖を下げるシステムより、血糖を上げるシステムの方が多いと言われます。

 これは人類の歴史を通じて、十分な食事にありつけた時代が比較的短く、どちらかというと常に食糧不足の期間が長かったからとも説明されます。

 

 太るのも問題ですが、どんどん痩せていくのも問題です。

 

 薬にはかならず求める効果とともに、副作用が存在します。

 

 『努力もせずに楽に痩せられる』という裏に存在する『エネルギーを摂取しているにも関わらず体重が減っていく』という不自然さにきづいていただけると幸いです。

 

 『学問に王道なし』とはいわれますが、『ダイエットにも王道なし』といえるでしょう。