俺を使い魔にしているエリスさんという吸血鬼はずいぶん変わった人だった。
普通、吸血鬼はコウモリやネズミなどの動物を使い魔にしているらしい。
人はもちろん狼人間を使い魔にするということは異例だった。
しかも、俺を使い魔にした理由は「おもしろそうだから」らしい。
・・・冗談じゃない。
吸血鬼は一応不死身のため、エリスさんが一体いくつなのかは知らないが他人から見た限り美人でいい女とかいう分類に入るのだろう。
だが、それは見かけだけだということを俺は知っている。
性格は自由奔放で気まぐれ。
血割りのお酒を好んで飲み(それだけならまだ良いのだが)しかも酒癖が物凄く悪い。
しかも面倒がって部屋の掃除をしないもんだから俺が代わりに掃除している始末だ。
エリスさんの服は俺がクリーニングに出さないといけないし、吸血鬼はご飯を食べないからご飯は俺一人が準備して食べる。
この人は俺のことを身の回りの世話係と思っているのではないだろうか?
「・・・血生臭っ・・・」
家に帰れば今日も、真っ赤な液体が入っていただろうと思われる酒瓶が散らばっていて異臭を出していた。
それを飲んでいたと思われる吸血鬼はソファーの上でぐっすり眠っていた。
一つの場所にとどまらないエリスさんは、人から家を借りてそこに住んでいる。
いつか家主が自分の家に帰ってきたときに、家中に漂う血の臭いに気付くのではと俺は思った。
とりあえず、床に落ちてる酒瓶を拾ってると吸血鬼はその物音で目が覚めたらしい。
「・・・ん~・・?よう、おかえり~・・・」
「・・・おはようございます」
―もうすぐ夕方なんだけどね。
吸血鬼も狼人間も基本的に夜行性だから、夕方がお早うだと言うことは言わなくても分かるだろう。
「・・・あっれ?ヘルから人間の血の匂いがするね?」
エリスさんは俺の方を向いてそういった。
「・・・相変わらず鼻が敏感ですね」
「んじゃ、次は何処に引っ越すか決めなきゃねー・・・日本は結構過ごしやすかったんだけど」
「・・・できれば、学校は行きたくないんですが」
俺が学校に行けば、他の生徒に必ず迷惑がかかってしまう。
「あははっそうだねー。じゃぁあと30分寝かして」
「・・・は?まだ寝るんですか?」
「まだ夕方でしょ・・・おやすみ」
エリスさんはそういってまたソファーで寝始めた。
―本当にマイペースな人だな
俺はそう思って溜息をついた。
きっと、明日から俺にとって地獄の日々が始まるのだろう。
ともかく、しばらくはそれを我慢しなくてはならない。
一体、一日中血生臭い家の中にいるのとどちらがマシだろうか。
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