「本物…?返信していいのかな…?」
悩んで悩んで悩みきった後、意を決して返信する事にした。

『Re:
返信していいのか迷いましたが返信しちゃいました(>_<)
まさか大さんからメールが来るなんて…
今日から勉強頑張れそうです(*^_^*)
それでは☆』

度胸を振り絞り送信ボタンを押す。
「送信しちゃったぁ…」
心臓が口から飛び出そうなくらい動いて痛い。
それからすぐに放課後となり、大会に向けての練習は大詰めを迎えていたが、私は浮ついていてどこかおかしかった。
携帯を何度も確認していき、メールが来てないことにがっかりするという行動を繰り返していた。
夜になり、今日の練習が終わって全員で帰る頃に携帯が鳴る。
『ラジオの収録じゃったわーい!ゲストはお笑いのTですごいテンションじゃったよ笑いつでもメールしてきてよいよー。』
送り主は大だった。
私は嬉しくなりすぐに返信する。
『今ちょうど部活が終わった所で返事が返ってきてびっくりです☆
ラジオ毎週聞いてますよo(^o^)o』

『部活いいねー。何部なの?ラジオ聞いてくれてありがとな!』

『演劇部で今度の26日に大会があるんですよ(>_<)
よかったら見に来ます??(笑)』

『その日は仕事じゃー!すまぬ…』
『仕事なら仕方ないですね(;_:)
お仕事頑張ってください☆』

その日はそれで終了した。
次の日、あまり寝付けなくて目覚ましより早く起きてしまった。
真っ先に携帯を開き受信ボックスを見る。
するとそこには大からのメールがしっかり残っていた。
今まで通りに支度をし、自転車を漕いで駅に向かう。
いつも聞いているMDの中身はもちろんC。
発売されたばかりのアルバムをノリノリで聞きながらいつも一緒に登校している絵美と落ち合う。
電車の発車を待ちながら絵美と他愛のない話で盛り上がりながら大にメールを打つ。

『おはようございます☆
今日携帯見たら大さんのメールが残っててびっくりしました(>_<)』

送り終わった後、学校に着きいつもと変わらぬ景色に溶け込む。
大の返事はお昼頃に返って来た。

『なんでびっくりしたん?』

『昨日が夢オチかと思いまして…』
『あはは!夢じゃなかったろー。結衣はおもしろ子じゃな』

『よく面白いって言われます☆(笑)
何で私の名前知ってるんですか?!』

『手紙に書いてあったじゃろー!』
『そうでした…(^_^;)
あと、私アカペラサークルに入ってるんですけど、大会の後にライブがあるんですよ(>_<)
緊張しない方法ありますか??』

『ライブいいねー!手に人書いておけば大丈夫じゃよ』

メールをしながら部活をやり、家に帰る。
明日はアカペラの練習で大宮に行く。
朝10時 大宮。
メンバーは埼玉、群馬、栃木から集まっている男女7人。
普通のアカペラグループよりも大人数だ。
発表する曲は
DREAMS COME TRUE
「うれしい!たのしい!だいすき」
坂本九
「上を向いて歩こう」
の2曲にした。
アカペラをした事がない7人は下手くそながらも一生懸命練習し、何とか聞かせられるくらいにまでなった。
そんな日々を送っていたある日。
いつものように大とメールをしている時だった。
『26日の夜空いてる?』

『ライブが終わり次第ですけど空いてますよ☆』

『じゃあその日飲みに行くか!』

『私なんかとでいいんですか?!』
『(笑)会ってゆっくり話そう!時間はまた後で連絡するよー』

突然大との飲みが決定してしまった。
心臓が高鳴る。
ただでさえ大会とライブで緊張しているのに同じ日に大とのデートが重なってしまい私は10kgも痩せてしまった。
そして当日。
朝7時に大会場所の会館前に集合する。
順番は3番目で午前中に舞台は終わる。
2番目の学校が終わり、自分たちが使う大道具をステージに運び入れる。
劇の題名は
『クッキー』
主人公(琴美)はお母さんを早くに亡くし、父親は仕事でなかなか家に帰って来ない孤独な女の子。小さい時にもらったクマのぬいぐるみのクッキーといつも一緒にいた。
そんなある日、突然父親から「新しいお母さんと妹(初音)が来る」と連絡があり、一緒に暮らす事になるが打ち解けられず自分の殻に閉じこもってしまう。
それを見兼ねたクッキーは妖精となり、琴美の前に現れる。
琴美はクッキーに「お母さんに会わせてほしい」とお願いをする。
クッキーはしぶしぶお母さんを死者の国から呼び戻すが…
というストーリーで、私は妹の初音役だった。
始まりのブザーが鳴り、会場は暗闇に包まれる。


程なくして劇は終わった。
私は大道具を片付け、誰よりも先にメイクを落とし着替える。
「美樹ちゃーん!これからライブだから先帰るけどごめんね!」
そう言い残し駅まで走り電車に乗り込む。
幸いライブ会場までは乗換えなしで行けた。
「もうリハーサル終わってるんだろうな…」
そう思いながら電車の中でメイクをし直す。
メンバーの彩華に電話をし、今の状況を聞く。
「今はお天気ぐもさんが歌ってますよー。しかも会場にCの林さんが来てます!!」
何故かというと、サークルの先輩グループのヘルプとして林さんの彼女がいるからだ。
私は走って会場まで行く。
会場前では彩華と瑠奈が手を振って待っていた。
「走らなくてもよかったのにー。」
「早く合流したくて…」
「ってか制服かよ!」
「午前中部活の大会だったんだから仕方ないじゃーん。本番までにはちゃんと着替えるから。」
そう話しながら中へ入る。
会場は満員だった。
一気に足が震えてくる。
そして何組か終わり、私たちの番になった。
私はDREAMS COME TRUEの歌でリードを任されていたが、舞台の直後のため、声が思うように出ず苦戦した。
無事に歌い終わり、最後の全員でLOVE LOVE LOVEを歌う為に舞台袖に移動した。
無事にライブは終了し、一行は新宿のカラオケに大移動して打ち上げをした。
私はこの後の大との約束があるために少ししか参加しなかったが、解放感からかとても楽しかった。

夜7時になり、私は打ち上げを途中で切り上げ埼玉の浦和へ向かう。
待ち合わせ場所は浦和にある駅の西口に夜8時。
電車の中では緊張がピークだった。
一駅一駅が余計に長く感じる。
約束の10分前に着き、柱に寄り掛かりながら大の到着を待つ。
心臓の音が周りに聞こえてしまうくらいに高鳴っていて呼吸すら上手く出来なくなりそうだった。
約束の時間を5分程過ぎた頃、遠くから自転車を置く大を発見した。
こちらに向かってくる姿を確認すると急に恥ずかしさが増し、気付かない振りをしてしまった。
「…おぅ。」
顔を覗き込むようにして大がやって来た。
「…どぉも。本当に大さんだったんですね。」
「まだ信じてなかったんかい!普段は眼鏡なんじゃな。幼くて可愛いよ。」
「童顔なの気にしてるんで言わないでください…」
「ははは!まぁどっかに入ろうや。」
そうして二人並んで近くの居酒屋に入る。
席に着くなり店員の注文の催促があり、とりあえず飲み物を頼む。
「生と…」
「…カシスオレンジで。」
店員が去った後、メニューを見ながらたどたどしい会話が続く。
「今何歳だっけ?」
「17歳です。」
「高校2年生か。」
「3年です。」
「部活とライブはどうじゃった?」
「めっちゃ緊張してあまり覚えてないんですよ…。そういえば、林さんがライブに来てましたよ。」
「あいつは休みだったからなー」
そんなこんなでお酒が運ばれて来た。
「じゃ、カンパイ!」
「初めまして。」
「なんじゃそりゃ!」
緊張はしてたものの、何とか会話が出来た。
「結衣は彼氏いるのかぇ?」
「いましたけど、この間別れました。」
「て事は体の関係は…?」
「…ありました。」
「最近の子は早いなー」
「おっさんみたいな発言ですね。」
「おっさんじゃからな。避妊はちゃんとしといた方がええで?」

避妊という言葉を聞いて私は何も言えなくなってしまった。
「…どうした?」
大が不思議そうな顔をする。
「私2回堕ろしてるんですよ…」
「…。」

沈黙が流れる。
「…それは辛かったな。」
大から意外な言葉を聞く。
「引かれると思ってました。」
「そんな事では引かんよー!」
大に話した事で胸のつっかえが取れた気がした。
そうしている内に終電の時間が迫って来ていた。
「そろそろ帰るか!」
「そうですね…。」
このまま時間が止まればいいと願っていたが叶うはずもなく、席を立ちお会計に向かう。
「私いくらですか?」
財布を出して金額を尋ねる。
「奢っちゃるよ。年下には奢るのが俺のポリシー。」
「そんな悪いですよ。」
「いいから黙って奢られときぃ。」
「すいません…ご馳走さまです。」
そうして駅に向かい、大はホームまで見送りに来てくれた。
「今日はありがとうございました。楽しかったです。」
「うむ。こっちも楽しかったよ。」
このまま離れたくない…
その言葉を飲み込み続けている間に電車が来てしまった。
「じゃ、またな!」
「また遊んでください。」
ドアが閉まる。
『またな。』
この言葉がたまらなく嬉しかった。
またという事は次があると言う事。
私は電車の中で大にメールをし、家に着きまだ興奮冷めやらぬ体を休ませた。