今国会で最大の対決法案となっている『重要土地利用規制法案』が参議院本会議で審議入りしました。
自衛隊施設や原子力発電所など重要施設の周辺を国が指定して、土地を売買するときには事前に氏名や国籍の届出を義務づけたり、施設の機能を阻害する行為があった場合には中止を勧告・命令できるようにしたりする内容です。

衆議院では自民党、公明党に加えて、日本維新の会や国民民主党が賛成、立憲民主党と共産党は反対しました。
この法案は安全保障や危機管理の認識の隔たりを浮き彫りにしています。

自衛隊施設や国境離島など安全保障に関わる土地が外国資本から買収される事案が度々、報道されています。
自治体からも、政府に対応を求める意見書が出されています。
自民党の和田政宗議員は質疑で「米国や豪州などでは安全保障上、重要な土地の所有などに一定の規制や制限をかける法律を制定している」と指摘されました。

今回の法案でできるようになるのは土地売買時の事前届出や阻害行為の中止命令などに過ぎません。
与党や日本維新の会の中では売買の中止や国による強制買取をできるようにすべきだとの声も少なくありませんが、小此木八郎領土担当大臣は参院本会議で「有識者会議の提言では『今般の制度的枠組みの実施状況、有効性などを見極めた上で安全保障をめぐる国際情勢、諸外国の取り組みなども踏まえ慎重に検討していくべき』とされた。提言を踏まえ、法案では当面、土地等の利用状況の調査および利用規制の枠組みで対応することにした」と説明し、法案附則に明記された5年後の見直しの際に検討する考えを示されました。

法案の内容が不十分だという指摘はあっても、国の重要施設への備えを高めていく必要があるというのは共通認識だと考えていました。
しかし、参院本会議での質疑で立憲民主党の木戸口英司議員は「私権制限を正当化する理由として、国家の安全保障という漠然とした保護法益を挙げることで説明できるのか」と述べ、届出義務や利用状況の調査に応じなかった場合の罰則規定を削除するよう求められました。
共産党の田村智子議員は「日本国憲法は自由に居住地を選択し、土地や建物を所有する権利を保障している。この基本的な権利を国家が『安全保障』の名のもとに直接制限する違憲立法だ」とまで言い切られました。

世界にはスパイ活動やテロを主導している国や勢力があるにも関わらず、日本は国内での活動状況すら十分に把握できていないと思われます。
国家の主権が侵され、国民の生命や生活が脅かされようとしている現状下で、法案を廃案に追い込めば誰が一番喜ぶのかを私たちは考えなければいけないと思います。

国民民主党の大塚耕平議員が質問の最後で仰った「日本の競争相手・安全保障上緊張関係にある相手がいなかった高度成長期やバブル時代の幻想から目覚め、現実を直視した有効な経済安全保障体制を構築することを求める」との警鐘を胸に刻みはました。

立憲民主・共産両党は成立を阻止する姿勢を鮮明にされていますが、必ず成立させなけばならないと確信した質疑でした。
秋までに行われる衆議院選挙でも、どちらの考えが国益にかなうのかは大きな争点だと思います。