昨日(9月8日)、自由民主党の総裁選挙が告示され、安倍晋三総裁(内閣総理大臣)が無投票で再選されました。私が参議院議員になって初めての総裁選でしたが、安倍総理・総裁に引き続き政権を担って頂きたいと考え、20人の推薦人に名前を連ねました。今回の総裁選をめぐり感じたことを書き留めておこうと思います。

■安倍総裁の姿勢、政権運営

 安倍総裁が8日の出陣式で述べられたように「間違いなく雇用も収入も向上しています」。円高やデフレに苦しんでいた日本経済が、2012年末の第二次安倍政権の誕生で劇的に変わりました。株価をはじめとした経済指標の多くが反転しました。

  「実質賃金は上がっていない」「地方まで景気が行き渡っていない」「物価上昇の目標に達していない」など、課題はあります。しかし、前政権の経済政策の方が良かったと思っている方は少ないはずです。実際の経済運営で安倍政権以上に成果を出せる選択肢が見当たりません。

 アベノミクスを継続しつつ、表面化している課題にどう対応していくかが重要なのだと考えています。安倍総裁自身も「経済の好循環を回しながら、地方の隅々に景気の実感を届け、完全にデフレから脱却し、未来に向けて力強く経済を成長させていく、それが私たちの使命だ」と指摘されています。

 私は国会議員になる前は政治記者でした。ですが、「安倍番」の記者になったことはなく、政治部に配属になったのは福田康夫内閣からなので「政治家・安倍晋三」に接する機会はほとんどありませんでした。そのため、以前は「安倍さんは自身の信条と合う人の意見ばかり聞く」という論説を読んでも、「そんなもんなのかな」というくらいにしか思っていませんでした。しかし、国会議員になって総理の姿を垣間見るようになり、世の中でつくられた「安倍晋三」像はかなり歪められていると感じています。

 戦後70年談話では多くの識者が予想していたものと異なり、幅広い方々の意見を取り入れたバランスの取れたものになりました。国内外からも評価の声が上がっています。さらに、安倍総理は談話を読み上げた後、こう付け加えられました。

 「私たちは歴史に対して謙虚でなければなりません。謙虚な姿勢とは、『果たして聞き漏らした声が他にもあるのではないか』と常に歴史を見つめ続ける態度であると考えます。私はこれからも、謙虚に、歴史の声に耳を傾けながら、未来への知恵に学んでいく、そうした姿勢を持ち続けていきたいと考えます」

 私のこのブログのタイトルは「以管窺天」。細い管の穴を通して空を見上げるように、自分が見えているものは非常に限られている、という戒めの言葉です。「葦(よし)の髄から天井を覗く」という言い方もあります。政治家が常に自覚しなければいけない姿勢だと思います。

 私は今国会では予算委員会と平和安全法案に関する特別委員会に属しているので、安倍総理の答弁・対応を間近で何十時間と見てきました。極端な例を出してレッテル張りをする質問や揚げ足取りを狙った問い掛けにも丁寧に対応されています。

  マスコミで「総理がヤジった」などと書かれたこともありますが、質疑者の後ろから罵詈雑言が総理に浴びせられる場面が多々あることは報じられません。(テレビ中継のマイクは質疑者と答弁者の声以外はほとんど拾わないようになっています)。政府は立法府に法案の審議をお願いしている立場ということで、耐え忍ぶ姿には本当に頭が下がります。

 自民党の中で安倍総裁に代わってほしいと思う人が少なかったという事実はうなずけます。

■自民党は単色か

 総裁選が無投票になったことでリーダーが政策を戦わせる場が失われたという批判があります。今朝(9月9日)の朝日新聞では「折しも、米国では来年の大統領選に向け、民主、共和両党で何人もの候補者が論争を始めている。そんな光景こそ、本来のリーダー選びのはずだが、自民党はその機会を自ら放棄してしまった」(西山公隆政治部次長)と論評しています。しかし、8年ぶりに現職が引退する米国の大統領選と、政権選択の衆院選から1年も経たない時点の自民党総裁選を比較すること自体ナンセンスです。

 また、現職の総理が候補なのに党首選が盛り上がる方が異常だと言えます。日本では菅直人首相と小沢一郎氏が争った与党党首選がありましたが、あの選挙が日本のためになったとはとても思えません。

 政党は考えの近い人たちの集団のはずです。その中で選挙をやれば小さな違いを大きく見せなくてはならなくなります(メディアは小さな差異を大きく報道します)。9か月前に衆院選で国民の審判を受けたばかりなのに、路線闘争をする必要があるでしょうか。ちなみに日本ほど国政選挙が頻繁にある国は多くありません。政策論争のチャンスはこれからいくらでもあります。

 「自民党が単色になった」「安倍官邸に自民党は物を言えない」。そう断じる向きもあります。果たしてそうでしょうか。新国立競技場の建設問題では与党から批判が噴出し、安倍総理に方針転換を促しました。現在の1550億円以内の建て替え案に対しても、「新たな競技場は造らず、既存の施設を利用すべきだ」と求める声まで自民党内にはあります。

 また、9月3日に中国が開催した抗日戦争勝利70年記念式典に国連の潘基文事務総長が出席すると発表した際、政府の要人が事務総長に直接中止を要請しなかったことなど政府の一連の対応について、自民党の外交部会などで批判が相次ぎ、党自ら国連に抗議文を送ることとなりました。

 予算や税制などを巡っても、自民党内にはさまざま意見があります。これからも侃々諤々の議論をしながら、最後はまとまるという自民党の文化を大切にしていきたいと思います。