20日の本会議をもって通常国会が終わりました。憲法改正の手続きを盛り込んだ国民投票法、教育委員会制度を見直す教育行政法、電力の小売りを全面自由化する電気事業法、小規模企業基本法など重要な法律が成立し、政府提出法案の成立率は97%と高い数字となりました。ねじれ国会が解消され、与野党が激突する場面も減ったせいか、国会で十分な議論がなされなかったとの指摘があります。加えて、「どうせ国会はまともな議論はしていなんだから、国家議員なんかもっと減らすべきだ」といった声まで聞きます。国会議員として初めて150日間の通常国会を経験して感じたことを書いてみようと思います。

 今国会では私は予算委員会、法務委員会、憲法審査会に所属しました。法務委員会では参議院自民党の執行部や閣僚、税制調査会の幹部が委員になっていたこともあり、ほぼ毎週、私に質問の順番が回ってきました。法務委に付託された法案12本のうち11本の審議で質問に立ちました。仮に参議院議員の数をこれ以上減らしていけば、おそらく委員会での実質的な審議は成り立たなくなるでしょう。法務委の法案は、社外取締役の設置を促す会社法を除くと、ほとんどメディアに取り上げられることはありませんでした。しかし、新聞紙面に載らないからどうでもいいとか、どうせ成立するから議論しなくていい、なんてことはありません。

 少年法の改正では刑期の上限が引き上げられました。私は改正には賛成しましたが、少年法でも刑法でも自動車運転でも重大な事件が起きる度に、最高刑を引き上げていけば刑の上限はどこまでも上がっていくが、果たしてそれでいいのだろうか、と問いかけました。出入国管理法の改正をめぐっては、日本には既に毎年3000人も難民申請があり、世界的にはアフリカからの難民増加が深刻化する中、日本としてどう向き合っていくのか、問題提起しました。どちらも世間の耳目を集めるような話題ではないですが、国として放っておくわけにはいきません。

 国会の各委員会では法務委に限らず、様々なテーマについて多角的な議論がなされています。審議の過程では法案に取り入れられなくても、その議論が将来の改正や新たな政策に生かされることも多々あります。報道では、永田町では集団的自衛権と法人税と農協改革しか議論されていないように見える時もありましたが、そんなことはありません。(しかも、その3件は法案として国会に提出されていません)マスコミが取り上げない重要な論議がたくさんなされています。

 国会議員の数は減らせば減らすほどいい、といった政治のデフレスパイラルを進めていくと、政治的に注目される案件にほとんどの議員が縛り付きになってしまい、地味だけど重要な課題が見過ごされかねません。国会議員の立場の人間がこんな主張をすれば手前勝手なことを言っていると批判されるのは重々承知しています。国の仕事を思い切って地方に分権できれば国会議員の数を大幅に減らすべきだと思います。しかし、いまの国の体制下でデフレ政治の傾向が続くならば国の役目は果たせません。もちろん、まずは我々、国会議員が仕事の中身で評価してもらえるようにさらに努力ならなければならないと肝に銘じています。