理想だけが立派でも政治家には価値はありません。その意味では、今朝の朝日新聞の天声人語、かなりいただけません。


http://digital.asahi.com/articles/TKY201212271009.html

 滋賀県の嘉田由紀子知事を取り上げ、日本未来の党の分裂劇を「呆れる」と批判したものの、「環境学者でもある嘉田さんに、情と理の整った主張を期待する人は少なくあるまい」と評価しています。いくら脱原発の主張が朝日新聞と同じだからと言って、この期に及んで政治家・嘉田氏を期待するというコラムは見識を疑われても仕方がないと思います。

 
当初から、嘉田知事が小沢一郎氏と組んで衆院選に挑むことについて、「小沢さんに利用されるだけではないか」「知事をしながら国政政党を運営できるのか」などと懸念の声が上がっていました。嘉田知事はこうした批判に真っ向から反論してきました。

 
今回の分裂劇の最中、嘉田知事は「小沢さんと連絡がつかない」とおっしゃったそうですが、小沢氏は都合が悪いと電話に出ないというのは非常に有名です。「国民の生活が第一」に所属していた議員が嘉田氏ではなく、小沢氏の方を向いていたのは明らかでした。すべてが予想通りの結果です。

 
天声人語では「掲げた『卒原発』の志に偽りはなかったのだろう」とも書いていますが、「善意だったんだから能力がなくて大失敗しても大目に見てよ」なんてことは政治家には許されないでしょう。政治家・嘉田氏の一連の行動は厳しく問われなければいけないはずです。滋賀県でリコール運動が起きてもおかしくないとすら思います。

 
それなのに「倒れた党の切り株から、新しい芽は吹くだろうか」と期待を寄せる書きぶり。自分達の主張を担いでくれる人であれば、誰であっても、どういう手法でもいいのかと思ってしまいます。脱原発さえ言えば、どんな過ちを犯しても最後は擁護するのですか。

 
自民党員の中には朝日新聞をひどく嫌う人がいますが、私はそうではありません。朝日新聞の主張とは正反対のことも多いですが、私は昔から朝日新聞をよく読んでいます。異なる意見は非常に有益で、「こういう考えの人もいるのか」と社会を多面的に見るのに役立ちます。鋭い分析をするな、いい視点だなと思う記事もたくさんあります。今朝の『〈記者有論〉橋下離れ まず大阪で信頼取り戻せ』も非常にいいコラムだったと思います。しかもこちらは「大阪社会部・池尻和生記者」と実名です。


http://digital.asahi.com/articles/TKY201212270688.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201212270688

 匿名の天声人語で書けば読者は朝日新聞の社論だと受け止めます。こうしたコラムが続けば、真っ当な批評でも色眼鏡で見られ、社会の公器としての役割を果たせなくなるのではないでしょうか。古くからの読者の懸念が築地まで届くことを願ってやみません。