自民党と民主党は何が違うのか。よく聞かれる質問です。「民主党政権がまずかったのは分かった。じゃあ自民党はどうなのか」と。私が出馬予定の参院選は来年夏ですが、衆院選が間近に迫った今、なぜ私が自由民主党から国政に挑戦するのかをこの機会に記しておきたいと思います。

 
私は新聞記者として自民党、民主党どちらも担当しました。日々、国会議員の話を聞いていましたが、両党の間には明らかに考えの違いがありました。それは内政においても、外交においても。まずは内政について書きたいと思います。

 
私が民主党担当だった2011年は子ども手当をどう見直すかが与野党協議の大きなテーマでした。民主党と自民党は所得制限を設けるかどうかで激しく意見が対立しました。自民党は「お金持ちに支給する必要はない」と所得制限導入を求め、民主党は「お金持ちも貧乏人も子どもを育てることに変わりはない。子育て世帯を国として支援することに差をつけるべきではない」と主張していました。

 
所得によって政策に差異を認めるかどうか。民主党内には公の政策で差をつけることに拒否感が強く、平等を重んじる意見が大勢を占めていました。民主党の方々は「所得制限を設けることは理念に関わることで受け入れられない」と何度もおっしゃっていました。自民党は手当は弱い立場の人に限定すべきだとの考えでした。結局、民主、自民、公明の三党で妥協案がまとまり、一定額以上の年収の世帯には減額して支給することになりました。

 
現金給付というやり方がいいかどうかは別にしても、高齢者福祉に予算が偏っている状況を是正し、子育て支援を厚くするという方向性には共感します。ただ、所得把握の難しさはあるにしても、高所得者の世帯にまで支給する必要はないのではないでしょうか。これは民主党政権が始めた高校授業料の無償化についても言えることだと思います(現在、高校の無償化には所得制限がありません)。

 
民自両党を比べると、民主党は平等を重んじる方が多く、自民党は差が多少ついたとしても経済成長に資する政策に資源を投入しようという考えでした。ある国会議員が例えて言うには「民主党はパイの一切れ一切れが均等になるように腐心する。自民党は隣の人の一切れと自分の一切れの大きさは違うかもしれないが、みんなが今日より明日たくさん食べられるようにパイ全体を大きくすることに力を注ぐ」。格差ばかりをあげつらっていては経済を成長させるのは容易ではないと思います。鳩山由紀夫首相の時代は、経済成長を追い求めず、別の価値を見出そうという姿勢も見えました。私はこの点で、民主党より自民党の考えに近いと感じました。

 
外交・安全保障面でも両党には明確な違いがあります。こういうことがありました。防衛に関する知識不足が原因で一川保夫防衛相が更迭されることになりました。後任人事を取材している時、「防衛に詳しい人を充てるだろう」と予想していましたが、選ばれたのは田中直紀氏。田中防衛相が一川氏以上に支離滅裂な答弁を続けたことは記憶に新しいと思います。なぜこんなおかしな人事をしたのか。ある民主党議員はこう解説をしてくれました。「幹部の中に『防衛政策に強い人物を防衛相に充てると中国や韓国が警戒する。対外関係を良くするにはむしろ防衛に詳しくない人を起用すべきだ』と考える人がいるんだよ」と。

 
確かに民主党の中には旧社会党出身の方を中心に非武装中立的な考えにシンパシーを持つ方が少なからずいました。自衛官を父に持つ野田佳彦首相は本来、対極の考えの持ち主のはずです。しかし、こうした人事に踏み切りました。党内の空気に配慮せざるを得なかったのではないでしょうか。野田佳彦首相は以前、著書で「自衛隊をきっちりと憲法の中で位置づけなければいけない。自衛隊などといっているのは国内だけで、外国から見たら日本軍だ」と書いていますが、現在は「自衛隊を国防軍と名前を変えて中身が変わるのか」と自民党の改憲案を批判しています。

 
ただ、こうした民主党内の主張を「政治家として不見識だ」と批判することはできないと思います。なぜなら日本国憲法には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあります。これに従えば、外国人はフェアーで信頼に足る人ばかりなんだから、日本は自衛隊なんて持つ必要ないよ、ということになります。憲法改正の論点はたくさんありますが、この前文を変える必要があると思うかどうかで考えの違いが明確に分かれると思います。安全保障観、憲法改正の必要性という点でも私は自民党を支持しています。

 私が地域を歩いていると、
「橋下さんのところ(維新の会)から出馬しようとは考えんやったとね?」と聞かれることがままありました。最近は太陽の党との合併で迷走気味なことが影響してか、そうした質問はほとんどなくなりました。一方で、「自民党も民主党もしょうもないから、手あかの付いていない新しい党が世の中を一挙に変えて欲しい」という声も根強くあります。しかし、多様な意見の中からいかに合意を生みだしていくかが政治です。100人が100人満足できる答えを出すことはできません。既成政党が批判されるのは当然です。完全無欠のヒーローを追い求め、日本新党に熱狂し、次は民主党、今回は第三極に。青い鳥探しは政治不信を増やすだけではないでしょうか。

 
新しい党の方の中には「既成政党は組織や団体の言いなりじゃないか。我々は既得権、業界団体とは一切関わらず、民意・国民を向いて行動する」と言われる人もいます。私はこうした行動は取りません。農業、漁業、建設業、商工業、運送業、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、税理士、行政書士などなど数え上げればきりがないですが、幅広い業界の方と深いお付き合いをし、意見を伺いたいと思っています。業界団体の方も国民ですし、民意の重要な一部です。団体や組織を排除しての「民意」とは何なんでしょうか?TVキャスターの意見?新聞が取り上げる街の声?デモが掲げるプラカード?机上で論理を組み立てて居丈高に「真理」を押し付けるのではなく、複雑で多様な声を聞いたうえで、悩みながらも自分が信じる道を進むべきではないでしょうか。その点で、自民党への支持を明確にしつつある団体にも、民主党の候補者の方が推薦願を出すという姿勢は立派だと思います。支持してくれるかどうかは別にして多様なパイプを開いておくことは重要です。

 私はどんな方の意見でも丁寧に
伺うよう心がけています。その上で、最終的にどう行動をするかはすべて候補(予定)者である私の責任です。その行動が業界団体におもねっていると見られることもあるかもしれませんし、逆に意見を全く取り入れなかったと思われることもあるでしょう。そうしたこともすべて、みなさんから投票で判断してもらうしかないと考えています。ただ、判断してもらうに当たり、私がどういう理念を基に自民党を選んだかを書かせていただきました。

 
消費税、TPP、原発――。今回の衆院選で争点となりそうなテーマはたくさんあります。そうした各論は非常に大切ですし、これらを基に投票先を決めるのは決して悪いことではないと思います。ただ、衆院の任期は4年、参院の任期は6年です。2、3年後には世の関心を集めている課題は変わっているかもしれません。2005年の衆院選は郵政改革が大きな争点でしたが、いま郵政問題を投票行動の基準に挙げる人は多くないと思います。個別の政策の立ち位置以上に、どういう理念を持った政党・政治家なのかを見極めることは重要だと考えます。選挙後に「党が進めている方向が私の理想と違う」などと言って安易に政党を替える政治家を許さないためにも、タイムリーな論点だけでなく、寄って立つ理念を基準に政党、政治家を判断していただくことも大切なことだと思っています。