満洲民族シャーマニズムの源流『ロスト マンチュリア サマン』金大偉監督の素晴らしい作品をお誘い頂き観てまいりました。
 

愛新覚羅家末裔のひとりでもあり、親族の金さんの長年かけて仕上がった、忘れてはならない満洲民族の言語「満語」とシャーマン文化のドキュメント映画。
 

金さんとの出会いは、10年ほど前からでしょうか。
 


金大偉さんのプロフィールはこちら


金さんは、お父様が満洲民族、お母様が日本人のハーフでいらっしゃいます。13歳のころに日本にいらっしゃったようです。

 

日本では、愛新覚羅溥儀というラストエンペラーが映画にもなっていますから大変有名ですが、実は愛新覚羅家一族というのはとても大きいのです。どこにあたるかを見分けるのが輩字と言われるものだったり、漢化されたときの姓との組み合わせで照らし合わせることができます。
 

現在の満洲民族は革命後、漢化し、愛新覚羅は『金』または『趙(肇)』に改姓しました。 ちなみに韓国の『金』姓と愛新覚羅の『金』姓は由来は同じではありません。愛新覚羅の「愛新(AIXIN)=金(ゴールド)」という意味があるので、そこから「金」姓に漢化されている方が多いのです。

 

私の祖母たちの場合は『愛新覚羅から肇』に漢化したあと更に『趙』に改姓しました。遼寧省満州自治区の出身で、革命後に黒龍江省に渡りました。
 

我が家のことを過去に少しだけ記事にしました↓
http://ameblo.jp/yuhan28/entry-11084826575.html
 

家系図などは↑上記

 

 


私自身は黒龍江省ハルビンで生まれ、両親の仕事の都合で5歳で来日し、日本で歴史教育を受けてきました。


日本の歴史教科書では、辛亥革命、文化大革命後に、代表的なラストエンペラー溥儀のことは書かれていても、その親族たち、自分のルーツでもある満洲民族がどうなっていったかは書かれてはいませんでした。


大きくなってから、中国名と日本名を持つ自分自身のアイデンティティの模索と、興味と探究心で、沢山の文献を読みつづけ、歴史や革命に多くの親族が翻弄されたことを知りました。昔、祖母たちはそれを言いたくありませんでした。私が質問してもとっても頑なでした。
 

どうしてだと思いますか?


今でも、何か起こるんじゃないかと未だにおびえているからです。それだけ激動の中華の革命後というのは我が家にも悲惨な状況(粛清)があったのです。
 

漢化されていき、名前や身分を変えない(隠さない)と当時は本家の子孫を守れません。


しかし、今の中国は、満洲民族の文化を残すために名誉回復や、さまざまな面でゆるくなったようです。

我が家の系図を調べてくれた先生方からも、2006年以降に少数民族に対する法律などが大きく変わり、安心して「名乗って」ほしいと来日したときに教えて頂きました。末裔の人たちが、その家系の流れをくんでいることを誇りに思い、隠すことなく、堂々としていればいいと励まされました。

わたくしはこれで良かったし、来日できて、日本で教育をうけて本当に良かったと思っています。歴史や政治には、時代が変わるときというのは大きな代償がでるものです。

 

よく私はこの2つのアイデンティティをもっている立場から、こう自分自身をとらえています。

 

「祖国」は中国(生まれた国)、「母国」は日本(育ててくれた国)と。

 

自分は何者なのか、皆誰しもが通る道ですが、私が何者であっても、私は私であり、その「私」には「自我」というよりも「私を形成した全てのもの」を強く感じるからなのでしょう。

 

北京大学に留学したとき、紫禁城を歩いてみて感じました。


もう、王朝は終わり、ここに龍はいないとも感じました。
私たちに残された満洲民族のDNAの記憶を大切にしていこうと思いました。


今はもう、なにも隠さないでいい時代になり、本当に良かったと思ってもいます。

 

 

 

写真はロストマンチュリアサマンのパンフレットから。


現在、1000万人いると言われる満洲民族のうち、満語を話せる人は35人。シャーマン(薩摩サマン)に至っては文化大革命の制圧によりかなり淘汰され、後継者も少ないことを、金さんの映画で知りました。


満洲民族は、シャーマニズムを原型にした原始的な精霊崇拝、祖霊崇拝であることは知っていましたが、失われそうな先祖の文化をこのように長年にわたりドキュメントをつくり公開に至った経緯は尊敬以上の言葉に言い表せられない感謝を感じました。

 

こうやって残された親族や子孫たちが、表現の自由を得て、先祖の痕跡を受け継いでいくのは、素晴らしい芸術活動だとも思うのです。

 

映画のなかで、一番印象に残ったのは、
 

『満洲民族は、来世や過去世がどうではなく、今どのように生きるかを重要としたシャーマニズムである』

という言葉でした(うるおぼえだけど意味は同じ)。
 

まさに、今を生きる、そのすべを支えるのが、満洲民族のシャーマンなのだと感じました。
 

金さんの音楽もまた凄く素晴らしいの!もちろん、いくつか私も持っていて聞いています。


私も来年は時間をつくり、黒龍江にある先祖のお墓参りをし、満洲自治区肇家村にいき、聖地である長白山にいってみたいと思います。

 

金さん、素敵な作品をありがとうございました。第二弾も楽しみにしております。

 


愛新覚羅ゆうはん拝