協奏曲第4番は1720年頃の作とされており,全6曲中もっとも最後に書かれたのではないかと考えられている。
リコーダー2本が彩りを添えるが,事実上ヴァイオリン協奏曲と言えるほどヴァイオリン・ソロの活躍が華々しい。

 楽器編成
   ヴァイオリン・ソロ,リコーダー I,リコーダー II
   ヴァイオリン I,ヴァイオリン II,ヴィオラ,通奏低音(チェロ,ヴィオローネ,チェンバロなど)

弦オーケストラに2本のリコーダーが加わったちょっと豪華なヴァイオリン協奏曲だと思えば,6曲のブランデンブルグ協奏曲の中で,一見すると最もノーマルな編成に思える。
しかし,楽器選択に難題がある。
リコーダーのパートには,リコーダーを指すイタリア語の‘Flauto dolce’ではなく,‘Fiauti d'echo’と謎めいた表記がなされている。
そもそも‘Fiauti d'echo’とはどんな楽器なのかよくわかっていない。
また,G管のリコーダーが使われるのかどうかも謎である。
普通はF管のアルト・リコーダーが用いられているが,かつて,ネヴィル・マリナーがアカデミー室内管弦楽団を指揮し,ソプラニーノ・リコーダーを用いてのレコーディングを残しているのも興味深い。
現代楽器の演奏ではフルートで代用されることもあるが,‘Flauto traverso’とは表記されていないため,作曲者の意図はフルートではなくリコーダーである。



  祐仙の自己満足の自己愛わーるど-第4番マリナー盤

The Academy of St. Martin in the Fields
Directed by Neville Marriner


Philips:426 089-2
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フーガ形式の応用

第3楽章はフーガ仕立てになっている。
大バッハはフーガを得意としており,フーガの作曲にかけるプライドは半端なものではなく,協奏曲にもフーガ形式を応用して独自の境地を開いている。
ブランデンブルグ協奏曲においては,第2番,第4番,第5番の3曲のそれぞれ第3楽章がフーガになっている。
この3曲の中では,第4番の第3楽章が一番フーガらしい厳格さを備えてはいる。
しかし,原理主義的なまでに厳格なフーガではなく,自由な展開が挿入されていて,大バッハのフーガとしてはまだ軽いノリであろう。



ライプツィッヒ時代の編曲

ライプツィッヒの聖トーマス教会のカントルとして勤めていたライプツィッヒ時代の1730年代に,大バッハはこの曲を編曲している。
その頃,教会や市当局とのいざこざに疲れていた大バッハが,ライプツィッヒ大学の学生らと一緒にコーヒー・ハウスでボランティア的なライヴ活動を行っていた。
ライヴの場であったコーヒー・ハウスが「カフェ・ツィマーマン」である。
当時,ちょうどヨーロッパでコーヒーが普及し始めたところであった。
大バッハは,過去の作品を編曲してせっせとチェンバロ協奏曲を書き,自らチェンバロに向かっての弾き振りで独奏パートを演奏した。
現存する7曲のチェンバロ協奏曲と1曲のチェンバロ協奏曲断章は,すべてこのライヴのために用意された曲である。
7曲のうちの4曲は原作が消失されているが,第6曲BWV1057はブランデンブルグ協奏曲第4番からの編曲である。
調性はト長調からへ長調に下げられ,両端楽章では,ヴァイオリン・ソロのパートがチェンバロ・ソロに編曲されており,リコーダー2本はやや形を変えて残されている。
第2楽章では,リコーダー2本とヴァイオリン・ソロのフレーズがチェンバロ1台で演奏される。



推薦盤

この曲はいろいろ名演があるが,コンラート・ヒュンテラー指揮の18世紀カメラータによる演奏が印象的である。
この盤では,普段フラウト・トラヴェルソを吹いているヒュンテラー自身が珍しくリコーダーを吹いている。
業界内では,実はヒュンテラーのリコーダーも定評があるらしい。
もう1本のリコーダーを吹くダニエル・ブリュッヘンは,大家フランス・ブリュッヘンの甥にあたる。
ダニエル・ブリュッヘンと言えば,アムステルダム・ルッキ・スターダスト・カルテットでのリコーダー・アンサンブルにおける活動をすぐに連想する方もあるだろう。
ヴァイオリン・ソロは,ベルリン・バロック・カンパニーでも活躍しているライナー・クスマウルである。
ムジカ・アンティクヮ・ケルン盤のような極端なアップ・テンポではないが,きびきびとした印象で歯切れのよい爽やかな演奏である。



  祐仙の自己満足の自己愛わーるど-第4番ヒュンテラー盤

Brandenburg Concerto No.4 in G major, BWV1049

  1. Allegro, 6:42
  2. Andante, 3:36
  3. Presto, 4:33


Daniel Brüggen, Recorder I
Konrad Hünteler, Recorder II & Direction
Reiner Kußmaul, Violin
Camerata of the 18th Century, on period instruments


Musikproduktion Dabringhaus und Grimm: 311 0746-2
☞ http://www.amazon.co.uk/Bach-Brandenburg-BWV1046-51-Johann-Sebastian/dp/B0000021FZ/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1287583699&sr=8-1