街人の話し4 Kou
文武に秀でたKouという人がいた。
ある時、幼少の頃から想いを寄せていた女の子に再会したそうだ。アルバイト先に、その彼女と友人が買い物にきたのだ。
彼女の友人が話しかけてきた。
あれ?Kouじゃない?久しぶりだね。ここでバイトしてるの?
2年振りに会った。Kouは、昨年の夏休みに、自転車で日本縦断をしたことや近況を話した。話は尽きなかったが、アルバイト中であった為、連絡先を交換し、次に会う約束を交わした。
約束の日、Kouは自分の男友達を誘い、4人で会うことにした。近況を話したり、昔話しをしたりして、あっという間に楽しい時間が過ぎたのだ。
それから、ちょくちょく4人で会う様になった。子どもの頃からの知り合いは居心地が良く、思いを寄せていた彼女は、年頃になり、とても綺麗になっていた。
いつしかKouと彼女は頻繁に電話をするようになっていた。そして、電話をすると、Kouは可愛い、好きだと必ず伝えたそうだ。
何度目かの電話でKouは切り出した。
あのさ、好きな人とかいるの?
うーん。いないよ。
へー。本当?
うん。まぁ、でも、良いなって思っている人はいるよ。
どんなヤツ?
Kouも良く知ってる人だよ。
ふーん。
平穏を装ったが。内心かなりショックで、その後は、正直なところ、何を話したか覚えていなかったそうだ。
その後、Kouは、友人や学友に、彼女のことを尋ねた。すると、彼女と付き合っている男がいることが判明した。それを聞いて、好きになっていただけに、しばらく、悶々としたそうだ。
何で、付き合ってるヤツがいるって、最初から言わなかったんだ。
腹がたっていた。頻繁にしていた電話も、1ヶ月間、全くしなかった。
しばらくすると、彼女から連絡がきた。
腹が立っていたKouは返事を返さなかった。
すると、彼女から電話が来たのだ。
何度か無視をしたが、何度目かで電話にでることにした。
忙しい?テスト期間だった?
まぁね。
Kouは何だか優しくできなかったそうだ。
で、何?
いや、嘘。本当は出たくなかったんだ。俺さ、最近、ショックな出来事があって。失恋したんだ。
最近、好きな人ができたんだ。良いなって思ってて、ずっと忘れられなくて。久しぶりにあったら、めっちゃ可愛くなってて。一緒に遊びに行くようになって、結構、好きになってて。でも、友達に話したら、その子、付き合ってるヤツがいたんだ。結構、遊んだり、電話したりして、自分がその子の事を好きなこと、自分なりに伝えてたんだけど。無理だったみたいだな。
結構、へこんでる。
そっか…。
Kouは、その子の事が好きなんだね。
でも、もう…忘れるかな…。
そっか…。ショックだね。その子の事が好きなのが、伝わる。そんなに仲が良い子がいたんだね…。ずっと忘れられないくらい好きだったんだ…。それは、ショックだね。
まぁね。君が付き合ってる人は?
Kouは鎌をかけた。
いないよ。誰とも付き合ってない。ってか、前にも言ったしね。
???
付き合ってる人がいるって、噂で聞いたんだけど。
えっ?私に付き合っている人がいるって?誰から?
いない、いない。
?!
えっ?ヤバいヤツと付き合ってるんでしょ?
ヤバいやつ?何それ。誰の話をしてるの?
Takeっていうヤツだって…。
私が?付き合ってないよ。大体、ヤバいヤツとは付き合わないし。ってか、Take君が、ヤバいって、どんな風に?そんな感じはしないけど。
君のことを悪く言ってるって…。
えっ?何で?
わからないの?
わからない…。そんなに関わってないし。でも、どっちにしろ、自分のことを悪く言ってる人と付き合わないよね。なんで、そんな噂が立つの?
本当に私のこと?
君の話。
誰が言ってたの、そんな事。
誰?誰が言ってたの?
誰とも付き合ってないしね。怖いよ。その噂。
本当に?
本当だし。怖いんだけど。
何、それ。そうやって、ない事言われるの、めっちゃ怖い。本当に嫌。
いや、君と同じ学校の子から聞いたんだ。付き合ってるヤツがいるって。みんな知ってるって。
だから、誰が言ってたの。そんな事。本当に付き合ってるなら隠さないでしょ。
そっか。そうなんだ。そっか。じゃあ…じゃあ、いいや。
Kouは途端に嬉しくなってきた。
ねぇ、今度、うちに来ない?
えっ?何で?行かないよ。
えっ?何で?
何でって。何で行くの?どこかで会えば良いじゃん。
何?怖がってるの?
怖がってないし。そういうことじゃなくて、Kouの家に行ったら、その…Kouの好きな人に悪いし。見られたら誤解されるかもよ。
大丈夫だよ。その子もうちに来るし。多分。
ん?
一緒に遊ぶってこと?誰が来るの?
2人だよ。
2人?その子と?
…いい。遠慮する。悪いし。邪魔したくないし。ってか、失恋したその子の事?
まぁね。大丈夫。おいでよ。
だから、イイって。全然、大丈夫じゃない。
トラブルになっちゃうじゃん。そういうの巻き込まれたくないし。
巻き込まれないよ。
ってか、そんな状況で、普通はその場に居れないから。邪魔したくないし。嫌じゃん。2人の世界に入られたら…そんなとこ。じゃあ、そろそろ私帰るねっとか言って早々と帰るよ。だから、行かない。
ってか、何か、今日、変だよ。話の辻褄が合ってないよ。
合ってるよ。
いや、合ってないよ。とにかく、やめておく。変だよ。変。
そう?めっちゃ普通だけどね。それに、一緒に居たいし。
あのさ、好きな人がいるなら、誤解されるような事、言わない方が良いよ。
大丈夫だよ。
大丈夫じゃないと思うけどね。
Kouは、その日、本当に安心したそうだ。
彼女がヤバい奴と付き合ってるという話しが、嘘だったことを、Kouは友人に話したそうだ。
しばらくして、彼女と電話で話した時のこと、
ねぇ、なんかさ、前に私が、ヤバいヤツと付き合ってるって話ししてたよね?それってさ、誰が言ってたの?
まぁー…色んな人からだけどね。何かあった?
んー…。
多分、その本人から、その事、言われたんだよね…。
えっ?大丈夫?
んー…。何か、よくわからない。俺たち、付き合ってるんじゃないの?って言われたんだよね。だから、付き合ってない。って言ったんだけど。
何でこんなことになってるんだろう。
そいつが噂を流してるからじゃない?
君さ、教室でそいつにキスされた?
はぁ?教室で?するわけ無いじゃん。
見てるヤツがいたんだって。
誰それ?
何人もだよ。
何人も見てたら、私が一番覚えてるでしょ。
教室では眠らない方が良いよ。危ないから。
眠ってないよ。みんないるし。
放課後は、すぐに帰ってるし。
何で、そんな噂ばかり…。嫌だな…。本当に…。
まぁ、それでも、俺は良いけどね。もう、気にしないから。
…Kouは自分のことじゃないから平気かもしれないけど…。
好きなんだ。君のこと。ずっと。小さい頃から。忘れられなかったんだ。付き合う?
ハイハイ。もう、良いから、そういうこと。
この前、女の子と歩いてたの見たよ。
たまたま帰りに見たんだよね…。あの子が好きな子なんでしょ?
たまたま一緒に歩いてだけだよ。
ふーん。
それからお互いにしばらく連絡をしなかったそうだ。
卒業して、新しい道を歩み始めた時に、彼女から連絡がきた。
気になってる人は、Kouの事だったんだよ。
とある街の街人から聞いた噂話だ。