明日の最終節をもって、2023年のJ3は閉幕します。

 

 

愛媛FCを応援する者としては、素晴らしい1年でした。そうとしか言えない。

 

 

15年近くサポーターをしてきて、はっきり報われたと言えるシーズンでした。僕なんかよりもっと長く、濃くサポートを続けてきた生粋のサポーターの方々。その人たちに、この結果をもたらせられたこと、応援が報われるのだと知ってもらえたこと。あの辛かった日々を自分たちの力で取り返したこと。本当に良かった。そういった意味でも11月11日は、あまりにも完璧な1日でした。

 

 

愛媛FCサポーターのみなさん、改めて、本当におめでとうございます。

 

 

 

僕は選手に直接会うことはないのですが、偶然ベン・ダンカン選手とだけ話す機会があり、彼は愛媛FCについてこう言ってました。

 

 

「河原コーチは偉大な指導者になる」

 

「(石浦)タイガはスーパーだ」

 

「オムはクレイジーだ」

 

 

外国から1人あの若さで、この愛媛を選んで来てくれた選手の言葉はきっと重みが違う。その言葉の意味が、来年からまた始まる新しい愛媛FCで知っていけたら嬉しいですね。

 

 

そのときベンに「愛媛で注目してる選手はいるか?」と聞かれ、僕は迷わずこう答えました。

 

 

「森脇良太選手。彼のおかげだ」

 

 

優勝への、J2復帰への大きな原動力になった人。僕の中で、間違いなくMVPは森脇良太選手です。多くのサポーターが同じことを感じたのではないでしょうか。

 

 

たった1人の選手がチームを変えられるというのは、サッカーでは困難だと僕は思っています。ただ、今年の森脇選手はそれに近いことをやった人です。

 

 

もともと森脇選手は、愛媛FCのJリーグ初年度となった2006年に広島からレンタル移籍で来て成功し、その後一気にJリーグの一線に羽ばたいていった選手でした。

 

 

前強化部長だった児玉雄一さんは、その当時の森脇選手をこう言ってました。

 

 

「(前年の2005年に)僕は引退して正解だった。森脇とか高萩を見て、こんなギラギラした奴らに敵わないと思った。まだ若いくせに、人生がかかってる感が凄かった。人生を終わらせないために愛媛に来たという感じだった」

 

 

その後活躍して、Jリーグファンだったら誰もが知る存在になった森脇良太選手。愛媛の人たちからすると「有名人」が戻ってくるという感じでした。効果は絶大で、長年閉じていた愛媛FCというクラブを外に向いて開かせてくれました。

 

 

自分の持つ経験、エンターテイメント性、キャリアの終盤に拾ってもらったこの愛媛FCに全て還元しようという気持ちが強かった。あまりにもガツガツに突き進む彼に、大人しい愛媛の人まで引っ張られてガツガツになっていく様は面白かった。

 

 

もちろん、去年入団した時からとっくにその気持ちは強かったと思います。

 

 

だけど森脇選手は去年試合に絡むことがあまり出来なかった。言いたいことは今年と同じくらいあったと思うけど、サッカーでは、チームではどうしても試合に出られてる人間が発言力が強くなる。だからきっと、去年はもどかしくて仕方なかったろうと思います。

 

 

サッカー選手として意見を口にするということは皆やりたがりません。なぜならリスクを伴うからです。

 

 

誰もが自分のプレーに集中したいです。みんなそうです。生活がある、家族がある、守りたい。それはそうなんでしょう。なので、ほぼ全ての選手はチームより自分を優先してサッカーをします。それもプロの一つの姿だとは思います。放っておけば、チームに意見というものは生まれなくなります。試合に出てる、決まった選手しか発言できなくなるからです。

 

 

ただ、森脇選手ははっきりと自分を犠牲にしてでもチームを助けるという道を選びました。

 

 

去年試合に出ていなくても、その立場からでも発信を続け、チームに呼びかけ、鼓舞しました。

 

 

それがどれほど強いことか、自分にそれができるか考えてみればわかると思います。本当に強い人間しかできません。時には道化を演じてでも愛媛を救おうとしてることに、去年までの僕は気づけなかった。

 

 

それが今年、森脇選手は中盤のポジションでスタメンを奪取しました。森脇選手がピッチの中からでも鼓舞できるようになったこと。その発言に魂が乗るようになりました。

 

 

今にして考えても、ここが今年の愛媛FC躍進の最大のポイントだったと思います。

 

 

試合に出るため、36歳で中盤に転向し、勝ち取る。誰も文句は言えないでしょう。こんな人間がいるのかと思いました。

 

 

そしてそのとき、ああそうか、この人は漫画の主人公なんだと思いました。

 

 

めちゃくちゃ声を出す愛媛の心臓は、とんでもない勢いをチームにもたらし、有言実行で愛媛FCを元いた場所に返しました。

 

 

愛媛FCとしても。中盤に転向させようと思った人間が凄いし、落とし込めたコーチも凄いし、合わせられた周りの選手も凄いし、何よりやってのけた主人公が凄すぎました。

 

 

たった1人の選手がチームを変える。ありえないと思ってたことを、最も間近なチームで見られるとは思わなかった。

 

 

松田力選手の言うとおりです。本当に凄い。普通こんなことはできない。

 

 

自分を犠牲にしてチームを救う人。本当にいるんだと。僕もこの年で学びました。

 

 

 

あなたのおかげです。

 

 

 

森脇良太選手。

 

 

 

あなたは広島で育ち、浦和で輝き、愛媛を救った人です。

 

 

尊敬を込めて。

 

 

ありがとうございました。

 

 

 

小林有吾