ウイイレばかりが上手くなる…

 

 

ウイイレアプリ。ゲーム機をいっさい持ってない自分のiPadに直撃してきたとんでもないアプリです。

 

 

このウイイレアプリ。本来なら欲しい選手はそんなに揃わないものなんですが、Jリーグが再開されないことで、マイクラブの選手(僕で言えば愛媛FC)を11名プレゼントするという企画を素敵にも2回も行ってくれて、ご覧のとおりもう抜けられなくなった。

 

 

 

 

なので当たり前のように家にいる。ありがとうウイイレアプリ。

 

 

同じように家にいる方に「アオアシ」というタイトルが決まった1日のことを述懐しますね。

 

 

タイトルを決めるというのは、漫画の中でもすごく重要なことで、その重要さがあまりにも面倒くさいので後回しにしておいたと。

 

 

ネームもできて、キャラクターの名前も決まって、なんなら1話の原稿もできて行く中でも後回しにしておいたと。でもそろそろ決めなきゃいけないぞと。

 

 

副編集長のOさんが「打ち合わせがあるから東京に来てください」と。

 

 

それで東京に行きましたが、取材も特になく、つまりなんと「タイトルを決めるため」だけに上京した1日になったのです。

 

 

当時、改装のため竹橋のビルに間借りしていた小学館。神保町と違って食事できる場所がほとんどなく、地下のフロアにあるイタリアンのお店で話し合ったと思います。

 

 

ここで、Oさんの高いハードルを超える戦いを繰り広げます。

 

 

僕は矢継ぎ早に、それほど悪くないタイトルをマシンガンのように考えて撃ち出すのですがしかしOさんのハードルは高く、Oさんはニコニコしながらも、意に介さないという雰囲気で。正直答えがないものでもありますのでわたくしは疲労困憊してまいりました。

 

 

しかし、百戦錬磨かつ編集者として実績あるOさんの「今日ここで決める」というオーラが物凄かったので、「仕切り直しましょう」という雰囲気でもありません。じっさい連載開始は目の前に迫ってるので、ここで決めないとズルズルいくだけでしょう。

 

 

わたしは担当Kの若い力を借りようと、Kを見ました。新人編集者のKは当時Oさんの恐ろしさにやられていた絶頂期だったので、真っ直ぐに虚空を向いているだけでした。ははーん、さてはお前帰りたいんだな?

 

 

私は熱にやられそうな頭をさらに思案することに戻りました。

 

 

2時間くらい話したでしょうか。

 

 

僕が「オシャレなタイトルといえば、最近ヤングジャンプの別冊に「アオハル」っていうのがあって」

 

 

Oさん「アオハル」

 

 

僕「青春とかかず、カタカナでアオハルって、しかも雑誌のタイトルがそれって、かっこいいなと」

 

 

Oさん「青は日本代表の色ですからね、青は入れてもいいですよね」

 

 

僕「カタカナでアオ、アオでサッカー。…サッカーは足使うから、アオ、アシとか」

 

 

Oさん「アオアシ。アシは足だけじゃなく、考える葦という意味で、思考力ともいえますよね。そこにもかかっていいんじゃないでしょうか」

 

 

僕「そうそう!アオも、日本代表の色というだけじゃなく、未熟な、という意味でもありますよね。青い葦。まだまだ未熟な思考力という、この漫画のテーマにも繋がりますね」

 

 

Oさん「それは良いですね」

 

 

僕「ついでに主人公の名前もタイトルから取って、葦人とか。青野葦人とか(最初は青野葦人でした)」

 

 

Oさん「主人公の名前もそこからですか」

 

 

僕「それで行きましょう!良かった、これは良い!帰りましょう、さあ帰りましょう」

 

 

担当K「帰りましょう」

 

 

みんな笑顔で店を出た。私は愛媛にトンボ帰り。

 

 

タイトルも決まったので、後顧の憂いもなく原稿を進めておりました私に担当Kから電話。

 

 

K「Oさんが、本当にアオアシでいいのかと言ってきて」

 

 

僕「ナンジャイヤワリャア」

 

 

K「ヒット作には全て濁点や破裂音が入るのがセオリーで、そこが気になってきたと。ワンピース、ドラゴンボール、スラムダンク」

 

 

僕「セイントセイヤ濁音入ってない、綺麗なもんや。タッチ。ほらタッチ。言ってみ。タッチ。綺麗なもんや。綺麗なタイトルしてるだろ」

 

 

K「このセオリーは割と大事なものではあると」

 

 

僕「北斗の拳!うわー、今気づいたわ。あんなん全ての文字に濁音入ってそうなもんやん。ぼぐどドゲヴ。でも、実際はほくとのけん。爽やかなもんよね。人が爆発する漫画でも濁音入ってないんやで。じゃあサッカー漫画はむしろ濁音入っちゃいけないんじゃないかな。そう思わんかね」

 

 

K「…ただOさんも、最後は小林さんの意思でと」

 

 

僕「アオアシで!」

 

 

押し切りまして「アオアシ」で決定しました。

 

 

一つの漫画を世に出すのに、大の大人が真剣に、必死に、本当に真面目に話し合うのです。それが漫画なんですね。

 

 

「アオアシ」というタイトルに関しては何百回再考しても他のタイトルは浮かびません。つまりこれだったんだろうと。長い1日でしたが、真剣な話合いだったので忘れられない。楽しかったですよ。

 

 

 

今日も少しは時間潰せたでしょうか。当時の自分の苦労を噛みしめてもらうため、もう一周してもらっていいでしょうか。

 

 

まだまだ我慢の時が続きますが、今月末にはアオアシの20巻も発売されるので、もう一踏ん張り。頑張りましょう。