暗い話題や、自粛の期間が長いので、家から出られない人たちのために何か読めるものを書こう。

 

 

アオアシの制作秘話などを書こう。

 

 

●阿久津の名字は最初、一条だった

 

阿久津のキャラデザが出来上がった時、「この顔は一条だ」と。

 

それから、阿久津が出てくるまでネームでも「一条」で通していたのですが、ギリギリのところで他の名前でお願いしますと言われました。

 

最初から一条と思って、改めて見返しても顔がどう見ても一条だったので、シナっと直さずにおりましたが、やっぱり直してくれと言われて「阿久津」としました。

 

 

浮いた「一条」はそのまま花にスライド。

 

 

なので、阿久津は一条渚だったかも知れないし、花は阿久津花だったかも知れない。

 

 

阿久津花。

 

 

「わたし、見てたんだよ」と言いそうな。

 

 

●大友の名前は最初「F井」

 

イニシャルにさせていただきますけど僕の仲の良い友達に「F井」というのがおりまして、アオアシではできるだけ自分が投影できる設定をと思ってF井とつけていましたが、担当Kが「主人公が青井で、かぶるから他の名前を…」と言いにくそうに言ってきて、確かにそうだなと頭では思いましたが、担当Kには彼女がいないので、従いたくなかったのですが、最終的に従いました。

 

1番の友、が大友となるような、そのままだなというような名前でしたが、大友でよかったと思いますよ。

 

 

●セレクションで、最後にアシトが点を決めるか決めないか

 

ユース生に圧され続ける鬱屈した展開の最後にアシトが点を決めますが、最初、決めれない展開も考えていました。

 

あのシュートがそれでも入らないというのもリアルだし、最後までユースの壁に跳ね返され続ける展開の末「ここまで強いJユースとは何なんだろう」という強い思いからJユースに入っていくのも良いのではないかと。

 

当時が一番打ち合わせが壮絶なころで、僕も担当Kもお互いボロボロでした。それでも担当Kは「最後は頼むから点を決めてくれ」と、言いにくいことをおっしゃり、わたくしはゴングと共に襲いかかり、その光景たるや素晴らしい様相を呈したものです。

 

「ならば俯瞰の伏線として、ラストパスを大友か橘に送りどちらかが点を取るのは。それなら」

「頼むからアシトが点を決めてください」

 

ゴングがまた鳴って、美しい光景が地球に広がりました。

 

しかし、主人公が点を取るというのを見たい、読者を喜ばせるのが漫画の使命でもあるのだと納得しましてアシトは点を決めました。

 

エンターテイメントか、リアルなこだわりかという別れ道だったと思いますが、そこでアンケートが跳ね上がりました。

 

そのとき自分は「こだわりより、読者が喜ぶものを描かなければならない時がある」という体験を初めて覚えました。

 

担当Kが壮絶な打ち合わせの末諦めて「最後は作家さんの好きなように」と描かせる人間だったなら、アシトを点を決めず、アオアシは人気が出ずに終わっていたかも知れません。

 

 

どうでしょうか。窮屈な毎日が続いていますが、少し時間潰せたでしょうか。

 

 

こういったことで喜んでもらえるなら、また書くので。何とか今は耐えて頑張りましょう。