yugamiuta

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一日一回7行短文。

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――あの子はかわいいね。
そう云ったら、保護者のような立場だと推測される彼は目に見えて表情を引き攣らせ、噂に聞き及ぶ毒舌を必死に吐き出すまいとでもするかのようにぎゅっと唇を噛み締めた。
「最近、こういう料理が作ってみたい。これはどうやれば出来るのかって、色々と訊いてくるから、どうしたのって尋ねたら君に作ってあげるんだって。教えてくれたら無邪気にありがとうって。とても素直で、いい子だよね?」
なにをどうしたらそうなるんだと思わないでもないのだけれど、黒い前髪の下、青白い額は包帯で覆われていて、肌には薄っすらと痣が残る彼は今日も具合が悪そうだ。
「……つまり、あいつがやたらとこれを食えこっちも食べろ、血にいいらしいとわけのわからんことを云ってきたのは」
「君の為、だねぇ。素直にお礼を云ってあげれば、きっと喜ぶのに」
嫌がらせじゃなかったのか、とぼやく彼のズレっぷりに苦笑しながら促せば、ものすごく面倒そうな顔をされた。

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カズエ・アヤ
題名無き100の、
「アイラ、」と彼が名を呼ぶ度に、本当は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
お互いを共犯者に仕立てあげるほどの仲でもなかったのに、こんなにも寄り添って、私の為に紡がれているわけでもない言葉を一心に受け取って。
「なぁに、テンマ。テンマは本当にアイラが好きだね。アイラが傍にいないとダメなんだね」そう云って、笑ってあげる。
それが、私に出来る精一杯で、他に許されることなどなにもなくて。
声を、言葉を、紡ぐ度。嘘で塗り固めたそれを告げる度。
その都度、彼は嬉しそうに笑って、苦しそうに微笑んで、小さく息を飲み込むのだ。心の準備をする為に。
「あぁ。アイラ、俺にはお前しかいないからな。アイラが俺を自分のものだと云ってくれる限り、そうでもなきゃ、俺は何処にもいられないよ」

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テンマ・アイラ
題名無き100の、
愛玩してもらえるとわかっていて籠から飛び立つバカがいるわけがない。
たとえそれがどろどろに溶け尽くして原型を保つのがやっとと云った状態の鳥籠であっても、なまぬるくやさしい世界に浸っていられるのなら余程にそのほうがしあわせだ。
つまるところ、この空間にはそういった惰弱な連中が勢揃いしていて、みながみな好きなように停滞し続けているということになる。
「……バッカみたいなくせにー、なかなかしっぽは掴ませないんだ。厭になっちゃうなー」
蕩けた鳥籠の中心にいる男を守るのは、狂信的な崇拝者。その目を掻い潜るのは困難だけれど、そいつはあの頃には関係がないから除外するとして。
「足りないなー。もっといい駒、見つけないとなー。……外に出られるようになれば、いいんだけどー」
自らもこうして捕らわれて、身動きが取りにくいからかなわない――諦めるつもりはまるでないけれど、と笑って、空飛ぶ鳥を睨めつけた。

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ツバサ
生まれたときから、ありとあらゆるものから命を奪って生きてきた。
母体の命、血縁者は端から死んでいき、当たり前のように稼業となった暗殺、当然だが生きるためには他の命を屠り摂取しなくてはならない。
故に、簒奪者であることに慣れきった自身に突如として舞い込んだ云い知れぬ感情はひどく奇妙で、奇異で、奇抜でしかなく。
「……ジ、ヨージ、どうしたの?」
「………………あぁ。いいや、少し考え込んでた。怪我の手当は不慣れだから」
指を切ったと薄く涙を浮かべる相手のしろすぎる手を掴み、普段なら手折るべきそれにやさしく触れている自分への葛藤――嘘ではない。不慣れなのは本当だ。
奪うことしか知らなかった存在が、たった一度きりでいいから、このちっぽけでいとおしい存在を守りたいなどと、慣れないことを考えるから。

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ヨージ・アズマ
にこりともしない、凍りついた表情に心を惹かれた。
次に、笑って欲しいと思うようになって、すぐに俺に向けて笑いかけて欲しいと願うようになるのに時間なんてかからなかった。
ページを繰る神経質そうな指先が眼鏡を押し上げる仕草が気難しげに寄せられる眉が、なにもかもが愛おしいと感じてしまって、珍しく感情のとどめ方を見失う。
「好きだ」
「あの、」
「アンタが好きだ」
ストレートすぎるとか素直にも程があるとか、文句を云い募るアンタは知らないけれど、こんな気持ちになったのは初めてなんだ――どうか愛して、どうか、どうか。

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クミ・イツ
題名無き100の、