アルトムールタール2日目。

 

まだまだ歩き足りないし、素敵な化石も見つかっていないので、昨日のトレイル(Eichstätt)の先にあるゾルンホーヘン(Solnhofen)に行ってみることにしました。

 

8:30出発のローカル線でSolnhofenに向かいます。

 

ゾルンホーヘンへの行き方(電車):

Ingolstadt → Solnhofen (Nürnberg行き)

所有時間 40分

 

 

ゾルンホーヘンもアルトムールタール自然公園に点在するリトグラフで有名な石灰岩の石切場のひとつで、始祖鳥が発見された場所でもあります。

 

現在、世界で12体しか見つかっていない始祖鳥は全てこの地で採掘されたものらしいのです。

昨日のアイヒシュテットの博物館に1体。

そして、ゾルンホーヘンの博物館に2体。

ベルリン自然史科学博物館に1体。

あとはまだ(わたしは)出会っていないドラゴンボール的なレア感です。

 

始祖鳥は、日本語でも『鳥』の文字があり、ドイツ語でも『Urvogel(vogelは鳥の意)』。

名前からして鳥っぽさが溢れていますが、現在の知見では鳥よりも獣脚類(恐竜)との共通点が圧倒的に多いとされています。

よって正確には鳥ではなく、恐竜から鳥へと進化のターニング・ポイントに位置する、鳥っぽい恐竜。

ダーウィンの進化論を体現するなかなかミステリアスな存在であります。

 

 

ゾルンホーヘン駅前には博物館があるので、石切場に行く前に行ってみました。

 

museum-solnhofen Bürgermeister-Müller-Museum

 

 

 

小さな博物館は町役場の一部で、横断幕でアピールしないと気付いてもらえないレベルの残念な外観でありました。

が、とんでもない充実の展示でありました。

 

まず、99.9%オリジナル。レプリカや模型はほんの一部です。

 

英語併記の説明があり、英語のオーディオガイドまでついている。

学術的に重要な位置づけであるゾルンホーヘンならではの、この規模の博物館には普通はありえないような解説レベルでありました。

 

 

ジュラ紀後期の現ヨーロッパの気候と環境が分かりやすく説明され、色を使って動物園のように当時の住環境別に化石たちが整理されている分かりやすい展示。

 

同じような堆積岩が形成されているヌスプリンゲン(Nusplingen)も同一のラグーン帯の一部だったことがわかり、納得。

 

紺色は外海。ターコイズはラグーンの浅い海。

 

生痕化石というやつです。

太古の海の底をアンモナイトが殻を引きずってが移動した跡がくっきり。

 

ジュラ紀から海老は海老だったんだね、と妙に感心してしまいました。

カブトガニといい、甲殻類は初期から完成度高かったのですね。

 

圧倒的な魚群。

ラグーンに入り込んだ2種の魚群と書いてありましたが、どのあたりが2種なのか全く分からなかった。

 

食うか食われるかの衝撃的なタイミングで共倒れして化石となった魚と翼竜。

 

9番目に見つかったチキン・ウィングと呼ばれる始祖鳥の化石。

 

6番目に見つかった化石。やたらでかい。

 

これはミュンヘン古生物博物館が所蔵する7番目の化石のレプリカであるようです。

翌日、ミュンヘン古生物博物館でポジとネガの本物を見ることができました。

 

じっくり2時間半楽しませてもらいました。 

 

 

ゾルンホーヘンのこともよく分かったところで、今度は化石ハントへ。

 

7kmのパノラマ・ハイキングコースを歩いて行くこともできますが、スタートが遅かったため、ショートカットしてまっすぐ化石採掘場所に向かいました。

 

昨日ほどではないにせよ、森の上り坂を進み石切場を目指します。

 

森を抜けると倉庫が立ち並ぶ一般道路にでます。

人っ子一人いない道の真ん中を歩くアジア人。

 

谷全体が大きな石灰岩の堆積岩でできているので、どこもかしこも石切場だらけでありました。

 

博物館から2kmほど歩き、ようやく到着。

 

Hobby Steinbruch Solnhofen

 

 

化石採掘場は、大人5ユーロ(工具貸し出しもあり)。

小さなキオスクですが、軽食やケーキなども提供しているので、手ぶらで来ても1日楽しめる遊び場です。

 

 

 

朝から何も食べていなかったので、ここでランチを頂きました。

醤油がないのにやたらとバター醤油味のするジャーマンポテト↓。

コーヒーと自家製りんごケーキもつけて、10ユーロという破格の安さでありました。

 

13:00 化石ハント開始。

 

 

植物のようなマンガンの結晶。

このあたりの石灰岩にはこのような紋様がたくさんついています。

化石の割れ目や隙間に入り込んだ鉄(茶色)やマンガン(黒)が、気の遠くなるような年月のなか温度や圧力の変化により結晶化して、割れ目の端に枝分かれしたような形状を作り出すんだそうです(←昨日のJura Museumで習った)。

 

 

ゾルンホーヘンの露出している石灰岩は、ハンマーで削っても割れるのに1週間くらいかかりそうな硬度。

しかも、昨日よりもさらに細かく散らばるので、目を守るため2.5ユーロのプラスチックのゴーグルを購入ました。

 

 

昨日と同じような調子では、石灰岩の層を剥離するのは無理だと考えて、作戦変更。

 

時間をかけてカケラの山を取り除き、掘り下げて作業場を作りました。

粘土が入り込んだ頁岩は湿気があるので比較的剥がしやすい。

 

ここまでくれば、ノミとハンマーでそこそこの大きさの層を剥がすことができます。

が、堆積岩のなかにがっつりクリスタルが形成されており、大物の層の剥離を邪魔するのです。

小さく割れてしまうと悲しい。

 

はじめてアンモナイトと貝以外のなにかを見つけました。

と、興奮しましたが、博物館で購入した化石ジャーナルに掲載されていた情報によれば、アンモナイトの口顎の部分(Lamellaptychus)であるらしい。

結局、アンモナイト。

 

分かりやすいアンモナイトもたくさんいた。

 

ここでもやはりお一人様はわたしだけ。

そんなことを気にするドイツ人はいないけど、

1人で来ていることで漂う玄人感にこの日はやたらドイツ人から質問を受けました。

 

『この化石がなにか分かりますか?』

『どのようにハンマーを使うのが正しいやり方なんですか?』

一緒にくる人がいないので1人でいるだけの日曜ハンターなので、こっちが聞きたいくらいであります。

 
 

石灰まみれになりながら3時間、夢中で掘りました。

 

見つけた化石を選別し、厳選したものだけさらに周りを小さく割り、持参したタッパーにナプキンをミルフィーユのように重ねながら保管しました。

しかし、重い。

 

 

下の写真は石切場の裏。見事な石灰板が谷の奥まで形成されています。

 

 

帰り道。

この藪具合が交通量を物語ります。

このトレイルを使って石切場に行く人はほとんどいないのでしょう。

 

高度的にはドナウの方が迫力があるけれど、1億5000万年前に始祖鳥が飛んでいた空だと思うとワクワクします。

 

 

2日間楽しんだアルトムール川も谷もこれで見納めと思うとちょっとさみしい。

 

いつかまた来たい場所と思える場所が増えました。

  

この日は暑かったので、沢山のカヤックがアルトムール川をパドリングしていました。

 

 

 

ローカル線に揺られてインゴルシュタットのホテルに戻り、シャワーを浴びて石灰石を洗い流したら、今日はレストランです。

 

昨日はスーパーのパンだったので、最終日はレストランに行くと決めていました。

 

 
片道3kmの果てしなく遠い市街地まで歩くこと40分。
当初このあたりにホテルをとろうとしていたなんて、狂気の沙汰であります。
ちょっと高くても駅前にして本当によかった。

 

2日ぶりのドナウ川を渡り、旧市街地へ。

 

 

町のお祭りが開催されていましたが、めぼしいものはなく、コロナも怖いので何も食べずに引き返す。

 

結局、ホテルのそばのビストロで夕ご飯を頂きました。

アボカドと海老のサラダ。

これが絶品でした。普段なら、サラダで一食だけど、活動量が多かったので炭水化物もいきます。

 

ゴルゴンゾーラ、ハム、アーティチョークのピザ。

さすがに多かったけど、なんとか完食。

 

樽のようになったお腹をかかえて歩いて帰るのはなかなか難儀でありました。

 

いまさらですが、車って便利だな。
 

 

寝る前に2日間で収集した化石を簡単に分類しメモをつけて、タッパーにしまいました。

うちに帰って調べるのが楽しみです。

 

充実の二日間でありました。

 

次はいつ化石ハントに行けるかな。

 

次回は成果物の重量を気にしなくていいように、車で行きたいと思います。