今でこそ疑り深い中年に成長しましたが、若いころは財布をなくして困り果てたというおじさんに現金を渡してしまうという大変に騙されやすいナイーブな女子でした。

小額とはいえ、見知らぬ相手に現金をわたすとは、とんだ世間知らずであります。

  


一方、夫にははっきりとしたポリシーがあります。

演奏や芸などの対価なくお金を恵む行為は一切しませんが、食べることに困っている人に対してはできることをしたいと考えているようです。

 


一昨年ハンブルグに旅行に行ったときのこと。

駅前で物乞いをしていた男性にさっそうと話しかけに行き、お金はわたせないが、おなかがすいているのであればあなたのために食べ物を買うよと申し出る夫。

駅構内で購入したホットドッグを男性に手渡す彼を見て、この男大したもんだと思ったものです。


彼の優しさに感動とかそういうことではなく、ドイツでも目を瞑ることのできない貧困格差について、自分がしたいことが明確であり、且つこれを実践できるところがよい。


貧困問題に限らず、自分で思考し行動するドイツ人にはこういう人が多いような気がします。



このように「食べる」ことをダイレクトサポートする慈善事業がドイツ全土で行われていることを知ったのはだいぶ最近のことでした。


Tafel(ターフェル)という、いわゆるフードバンクです。


スーパーの売れ残りや寄付などの食物を生活に困窮する人々へ提供するボランティア活動です。

食品廃棄を減らし、必要とする人に届けると言うベルリンからドイツ全土に広がったムーブメントらしい。


わが町の街角にもあります。

ドイツに来たばかりのころは個人商店だと勘違いしていました。

開店しているところは一度しか見たことがありませんが、店外にたくさん人が並んでいました。

 

 

 

今日、買い出しのためスーパーREALに行ったところ、入口に一台のカートがあり、その半分くらいが食べ物で埋まっていました。

てっきり誰かが放置したカートかと思い、邪魔だなと眉を顰めるわたし。

 

順調に買い物を進め、我々のカートも埋まってきたところ、遠くから夫が1kgのパスタ2箱と巨大なシリアル2箱を抱え歩いてきました。

保管場所もないし、2kgのパスタとか誰が食うんだと怒り気味のわたしに、これはターフェルのために購入したいという彼。


さらに、巨大ジャム、チョコレート、洗剤などを買い込み、レジ前で小さな紙にかかれたリストを見せてくれました。

実は入口のカートは、寄付する食品を入れるためのもので、寄付をしてほしい商品の希望リストが添えられていたようです。

 

どうせなら需要の高い食品を寄付するほうがもらったほうはうれしいだろうし、それならば希望リストではっきりと意思表示をするほうが効率がよいというドイツ的な考えにはちょっと苦笑いではありますが、ターフェル自体は非常に有意義な取り組みと考えます。

 

わたし一人だったら、まったく気づかなかったので、図らずも参加できてよかったです(←出費は基本折半なので私の寄付でもある)。

 

 

誰しも食べなければ生きていけないので、現物支給でダイレクトに食をサポートする仕組みには賛同しますし、シンプル且つ必要なセーフティネットなのだと思います。


明日どうなるか誰にも分からないし、私たち2人が失業してフードバンクを必要とする日が来るかもしれない。

地球に優しく、人に優しく。

まわりまわって助け合いなのですね。