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映画鑑賞備忘録

香港映画が大好き人間の映画鑑賞の記録

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』が話題になったとの同じ頃に香港で話題になっていると知ったこの作品。

どこかで見たいなと思っていたら、大阪アジアン映画祭で上映になったので、さっそく。

 

はじめのあたりにお葬式のシーンがあるんですが、これをよく映像化したなという印象から始まりました。

ただ、こういうのを見たかったなというのも同時に思いました。私は個人的には香港ノワールが好きだし、アクション映画も好きですが、こういう今の香港の生活を切り取ったような映画を一方で見たいと思っていた気もします。見たいという想いと共に、完全なリアルではないけれども、リアルに近い一般の人の日常のようなものが映像の中に残り続けてほしいという願いなのかもしれません。今回で言うと伝統的なお葬式のシーンはもちろん、家の中の様子とか。10年以上前の映画に出てくる家庭(部屋)の様子とは変わってきているなと印象でした。

 

お話上結構びっくりしたのは、「道士」が現代にも存在していること。物語の中に出てくる昔いた存在だと思っていました。でも、冷静に考えると日本のお坊さんのようなものなのかな。お葬式の場で、死者を死者を弔っていたし。そういえば、劇中で「人はバスが終着駅まで行ったら(死んだら)次のバスに乗り換えて次の人生をまた送る」「残されたものが死者を手放さなければ次の人生に行けない」というようなことを言っていて、日本ではあんまり輪廻転生的な感覚って現代はないのですが、香港はそういう風に死生観をとらえているのだなと感じました。

 

人々が自分の町で生きる中で、風習などにとらわれてでもとらわれている事にすら気が付かないまま誰かを傷つけ、なにかを守ろうとしてまた誰かを傷つけてしまうそんなお話のように感じました。香港でも日本と同じようにコロナ禍を経て、それぞれがいろんな苦労を経験してきて、その上でいま人の死について向き合うこと。死に向き合って生きることに向き合うこと。そんなことが描かれていた気がします。

 

劇中で驚いたのは、結構町の音などいろんな音をおそらくあえて残して入れてあること。セリフの背景にある音が町の音であり生活の音であり。だからこそそこの描かれた生活や生きるための活動にリアリティがあるのかもしれない。

 

ストーリーとしては後半にああ、こういう問題も入れてくるのねという感覚がありました。家族の話はまあ割と見る気がしますが、あんまり中国の映画で男性が女性がって言ってるシーンの見た印象がないんだよな。実は。多分そういう問題はあるんだと思うけれども。だいたい強い女性がまじってるじゃん。警察とかでも。それがフィクションとリアリティーなのかもしれませんね。この辺りは完全に主観なのでこの捉え方が正確なのかわかりませんが。

 

すごく丁寧に作り上げられている作品だと感じました。決してアクション映画のように華があるわけではない。でも、こうやって映画が寄り添ってくれて、見た人が前を向けるのであればと感じさせてくれる映画でした。

 

余談ですが、香港の家にも仏壇みたいなのあったけど、欧米って家の中にああいう祭る?弔う?もの(場所)ってあるのかな。そして、完全に余談ですが、黄子華さんが高橋克典さんに見えたの私だけ?笑

 

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監督:陳茂賢

出演:黄子華、許冠文、衛詩雅 他
2025年/香港

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