ウォン・カーワァイ4K 2本目。
なんか、個人的には香港映画っぽさを感じましたね。なんというか、ものすごい事件があるわけではなく、映画の中の登場人物にとっての日常や出来事を描いている感じ。出来事は起きるんですが、流れる時代や生活の中のほんの一部でしかないような感覚の展開と作り方。そんな感じを受けました。香港映画っぽさというか、これはウォン・カーワァイぽさなのかしら。
やはり何よりも感じたのは音楽の使い方のおしゃれさ。たった100分程度の映画ですが、繰り返し出てくるいくつかの音楽はその短時間で圧倒的に印象に残り、雄弁に物語る。音楽自体もおしゃれで耳に残るのはもちろん、映像に対しての音量がものすごく心地よい。BGMというよりもセリフと同等にきちんと聞かせるべくしてそこに存在する感じがします。
あと、これもやはり、映像の色彩がとてもきれい。香港らしさといってもいいのかわかりませんが、色彩豊かな街の姿をきれいに切り取っている感じ。そして、記録映画としても意味深いのだろうなと。道路に突き出したネオン看板をみながら感じました。あの映画の中の熱気とか人の感情とかまざりあった少し影のある街そのものの様子。きっといまはあの空気感の映画は作り出せないのだろうなと感じます。なんかなんともいえない人間臭いしっとりとした情感のような空気。わたしはとても好きなんですけどね。ちょっと話ははずれますが、香港映画のトイレとかお風呂とかわりと映像内に出てくる感じ、好きです。日常を垣間見てる感じがして。ちゃんと登場人物が生きている感じがして。その距離感的なのか香港映画が好きな理由の一つかもしれないなとも思ったりします。
内容的にはなによりも、金城武さんがとても印象的でした。むちゃくちゃしているところは、はぁ!?って思うんですが、恋してるところは、なんかものすごくとにかくかわいい。すごく素敵でした。こんな役者さんだったのねとなんか、再発見した気分。特にお父さんとのシーンがとてもよくて。お父さんが嬉しそうに金城武さん演じるモウが撮影したビデオを見ているシーン、モウがその後そのビデオを見ているシーンはなんだか泣けてきました。決して裕福な親子ではなかったけれども、そこに間違いなく幸せの形があったんだなぁと。刺さりました。どちらかというと様子を描くことで感情を推測して受け取ることをこちらに投げかけている映画の気がしますが、あのシーンは圧倒的な幸せの形が内包していた気がします。
しかし本当に映画でありながら映像芸術に感じますね。ストーリーと映像美と音楽とそれが組み合わさって映画はできている(もちろんほかにも要素はありますが)大体はストーリーが映画というものの中心に来ますが、映像美と音楽にも比重が置いてあって、その3つをバランスよく組み合わせるとこんな世界が生まれてくるようななんだかそんなことも思いました。
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監督:王家衛
出演:黎明、李嘉欣、金城武 他
1995年/香港
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