一つ前の記事に、漫画「台湾の少年」の主人公である蔡焜霖先生にお会いした時のことを書きました。

 

 

私は本、教科書、授業を通して学んだことや、人から口伝で聞いて知ったことのうち(すべてではありませんが、多くの授業も私的には口伝だと思っています)、自分が興味があることならば、実際にご本人に直接お会いして、ご本人から直接お話を聞いてみたいと常々思っています。ご本人を間近で見てご本人の雰囲気を感じてみたいですし、もしご本人と直接お話できる機会があれば尚更嬉しく思います。本に書かれていることは、100%ご本人の思いなのか、デフォルメが入っているのか、編集が入り不本意な仕上がりになったのか等も知りたいですし、ご本人はどんな言語でどんなトーンで、どんな言葉を使ってどんなニュアンスでお話しされるのかも、自分の目や耳で直接確かめたいからです。(だいたい直接お会いすると、文面だけを見て想像していたより、ご本人ははるかに素敵でチャーミングだったりして、より好きになるパターンが多いです。)

 

 

私はもともと台湾には人脈もないというか、知り合いは一人もいませんでした。でも、台湾の人たちが親切で優しかったからというのが大きいのですが、いろいろな人のつてや協力、己の根性🤣もあって、とても会いたかった李登輝元総統、烏山頭ダムの建設工事に携わり、八田與一さんと実際に一緒に働いていた方などに会うことができました。学生の頃は、日本統治時代に生まれ育った日本語世代の方々に直接お会いしてたくさんお話を聞きたいと思っていましたが、それはそれはたくさんの日本語世代の方々に会うことができ、みなさんにはとてもかわいがってもらい、本当にお世話になりました。

 

 

会いたいと思っていた人に実際会って話してみると、私たちはそれぞれの場所でそれぞれの人生を生きて、それぞれの体験をたくさんたくさん積み重ねて、それを自分という宝箱の中にギュッと押し込めたのが「人」なのだと思わせられます。どの人も、本当にこの世に一つしかない、眩しい眩しい宝箱だといつも思います。

 

 

私が台湾にいた時、とある場所でたまたま日本語世代のグループとご一緒したことがあるのですが、みなさん流暢で美しい日本語を話し、日本語で俳句や和歌を詠んだり、小説を書いたりされていました。北京語が得意な方もいれば、北京語は苦手だったり、白色テロへの反抗の思いから敢えて北京語は使わない方もいらっしゃり、台湾語ができないお孫さんとは(お互い台湾人でありながら)日本語で会話をされているという方もいらっしゃいました。私がその場にいると、みなさん気を遣って台湾語から日本語に会話を完全に切り替えてくださるのですが、不思議なことに、台湾の方同士お互いの日本語を聞くと、「あなた、もしかして苗栗の人?」と、日本語の微妙なアクセントから出身地までわかるようでした。(私には標準的なきれいな日本語にしか聞こえませんでしたが)

教科書や本でしか読んだことのなかったことが、目の前に事実としてあり、みなさん様々な経験と様々な思いを抱えて生きていらっしゃる姿は、どんなに辛い経験や負の思いがあったとしても、私にはとても煌めいて見えました。私は英語、北京語、日本語なら理解できるのですが、これらの言語でしたら、ニュアンスや美しさなどもある程度わかるため、その言語を使っている人の煌めきが余計に身に染みて感じられます。外国語や日本語ができてよかったと心底思う瞬間です。

 

 

どれだけ年齢が違っても、地位が圧倒的に違っても、住んでいる場所が離れていても、同じ時代を奇跡的に共に生きられたのならば、労力さえ惜しまなければ、会いたい人には必ず会えるような気がします。会いたい人に会って、その人と直接言葉を交わした時は、お互い違う場所で積み重ねてきた宝物を交換するような気持ちになります。

 

 

では、どうしたら見ず知らずの会いたい人に会えるかと言うと、これは私のやり方なのですが

 

1. その方が所属している団体や、今でしたらその方のSNSアカウントがあるなら、そこに連絡してみる。きちんと自己紹介をし、会いたい理由や熱意を伝えて、危険人物ではなくただのガチのファンであることを丁寧に伝えて、理解してもらえるように努める。

 

2. その方が好きであることを、事あるごとに周囲に触れ回っておく。そうすると、誰かがその方の連絡先や、その方が参加されるイベントの情報を教えてくれたり、その方に近しい人を紹介してくれたりして、そこから人脈が広がってその方に行き着いたりする。

 

3. 金で解決できる事は金で解決する(笑)  私の場合は、台湾で開かれる講演会に、きっちりお金(そこそこ高い参加費と渡航費)を払って、会社も休んで日本から参加しました。思い切って台湾の大学院に進学し、台湾に住んでみたのも、3とも言えるかもしれませんし、2の土台作りとも言えるかもしれません。

 

 

これをやれば、たいてい会いたい人には会えると思います。労力を惜しまず、誠意と熱意と、その方に対する愛情と尊敬の気持ちを持ってさえいれば、会いたい人に会えると思います。私は上のことを13年くらいやって、大好きな阿輝伯(李登輝元台湾総統)にお目にかかることができ、2度お手紙をもらい、記念品のお皿をいただきました。私の生涯の宝物です。

 

 

《阿輝伯からもらったお皿》



私は人生で後悔していることはあまりないのですが、蔡焜燦先生にお会いできなかったことだけは今でも心残りです。

でも、焜霖先生から聞く焜燦先生のお姿は、著書通りの方だなと思わずにはいられません。焜霖先生も焜燦先生も、性格は結構違うようですが、お二人ともとても素敵でいらっしゃいます。