今も台湾に関する書籍はいろいろと読んでいるのですが、つい最近、このレトロなデザインの表紙に魅かれて、なんとなくこの漫画本を買いました。

 

 

 

 

早速読んでみると、お話の舞台にも内容にも覚えがありました。

 

 

どんどん読み進めていくと、確信に変わりました。

 

 

蔡焜霖先生…!!

 

 

以前台北で行われた講演会でお会いした蔡焜霖先生の、白色テロの実体験が漫画化されていました。焜霖先生は、高校の頃に先生に勧められて参加した学校の読書会を、「共産党の外部組織の集会」に参加したとして捕らえられ、拷問の末自白を強要され、台湾の離島である緑島に流され、そこで10年服役されました。

 

 

焜霖先生は、司馬遼太郎の「街道をゆく 台湾紀行」の作品中に老台北(ラオタイペイ)として登場する蔡焜燦先生の弟さんです。この時の講演に出席されていた方が、焜燦先生に何度かお会いしたことがあるとの事で、焜燦先生が漢気溢れる情熱タイプだとすると、焜霖先生はとても穏やかな方だとその方から聞いていました。

 

 

 

焜霖先生は講演で壮絶な白色テロの体験を落ち着いたトーンで語っていらっしゃいましたが(詳しい内容は、漫画「台湾の少年」に書かれているので、是非一度読んでみてください。一番下の「アウシュヴィッツまで行かなくても、アジアには台湾の人権博物館がある」の記事も併せてご覧ください。)、内容が内容なだけに、私は終始泣き通しでした。

 

 

焜霖先生がすごいのは、先生はあれだけ残酷な仕打ちを長期に亘って受けたにもかかわらず、特定の誰かやグループに対して怒りをぶつけるでもなく、ただご自分が痛く苦しかったこと、お友達を失い、ご家族に心配をかけてしまい悲しかったことなどを話されていました。一生かかっても消えないトラウマを背負っていながら、焜霖先生の口調や眼差しは安定してとても優しかったです。



私はこの講演の時に初めて先生にお会いしてから、焜霖先生が大好きになりました。立ち直れないほどの傷を負ったのに、人はこんなにも強く優しくいられることを教えてくださった、人として誰よりも立派で素敵で魅力的だと思いました。



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焜霖先生はあれだけ長きに亘り悲惨な目に遭っても、暴力や憎しみをもって報復するのではなく、講演や執筆活動などを通して、白色テロの被害者の人権回復に尽力されています。


焜霖先生関連のリンクをいくつか貼っておきます。


◆焜霖先生が旭日双光章を受章されました。


◆受章にあたり、先生ご自身のご挨拶が掲載されています。

https://www.koryu.or.jp/Portals/0/images/publications/magazine/2021/12月/2112_04jyokun.pdf

◆白色テロの実態が詳しく紹介されています。焜霖先生が案内役となっています。