フィリピンのマニラを舞台にしたイギリス映画。イギリスの映画賞をいくつか受賞している作品です。一見、戦争映画にも見えるジャケット写真ですが、兵士ではなく武装した現金輸送警備会社の社員です。マニラという街がそれだけ物騒だということです。
田舎から職を求めてマニラに出てきた親子4人の一家。
いきなり貸室詐欺に合ってなけなしのお金を全部巻き上げられ、日雇いの肉体労働をしても報酬は一欠けらのパンとお水だけ。
涙を流して虫歯を痛がる娘を歯医者に連れて行くこともできません。
止む無く一家はスラム街に住み着きます。
ホームレスや貧困の問題は日本にもありますが、マニラの治安の悪さや衛生面の劣悪さを見ると、貧困問題もより深刻なのかもしれません。
夫はなんとか、常に強盗に襲撃される危険に晒される現金輸送車の警備員の職に就きます。
妻は"おさわりバー"のような店で働きはじめますが、店のオーナーに9歳の娘も店に出すように迫られます。恐ろしい世界です。
夫の仕事は危険な武装警備の仕事とはいえ、給料は少なく、働き始めてもなかなか生活は良くなりません。そんな折、彼に優しく色々と便宜を図ってくれた上司から、現金強奪の片棒を担ぐように迫られます。
貧乏でも「罪は犯したくない」と思っている彼ですが、とうとう家族のために大きな罪を犯し、死んでしまうことになります。
経済的弱者がなかなか貧困から抜け出せない構造はどの国でも同じで、強者が弱者に「小さな施し」を与えるのは「大きな搾取」をするための「エサ」に過ぎないと思わされます。エサだとも知らずに小さな施しに縋り、心から感謝する弱者の気持ちは無残に踏みにじられます。
犯罪を犯し、自分の命を以てしか家族を守ることができなかった男の人生が身に詰まされました。
脚本・監督のショーン・エリスは、もともと写真家なのだそうです。
ペニンシュラホテルをはじめとするマニラのきらびやかな「都会」の部分と、スラム街とのコントラストが映像で上手く描かれていました。
そして、人の顔のどアップのカットが多いのも印象的でした。画面から顔がハミ出すぐらいのどアップや、目だけのアップなど、「顔」が画面に映る時間が長かったように思います。
表情とは裏腹な心の奥を見極めろ、というメッセージだったのかもしれません。