緑内障と片頭痛 | きくな湯田眼科-院長のブログ

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横浜市港北区菊名にある『きくな湯田眼科』

昨日は神奈川県眼科医会の緑内障症例検討会で「頭痛と緑内障」について講演してきました。


急性閉塞偶角緑内障では急激に眼圧が上昇し、主として虹彩の知覚神経である長毛様神経を刺激し、鋭い眼痛を生じ、また三叉神経第1枝領域の関連痛として激しい頭痛を伴います。その痛みが激烈なことから、しばしば頭蓋内疾患と間違われ、MRIや脳血管造影などの検査が行われ診断が遅れることがあります。


しかし、閉塞偶角緑内障は頻度は少なく緑内障の1割程度を占めるだけで、他の多くのタイプの緑内障では眼圧が高くとも、眼痛や頭痛を伴うことはありません。患者さんは眼痛があるから眼圧が高いのではないかと心配して、よく眼科を受診されますが、眼痛・頭痛は緑内障の主症状ではないのです。


しかし、頭痛はやはり緑内障と無縁ではありません。


緑内障性視神経障害を進行させる危険因子は大きく3つに分けることができます。


1.エビデンスの明確なもの(Good Evidence)
2.エビデンスとしては弱いが、可能性が高いもの(Fair Evidence)
3.エビデンスが弱く、可能性としてはありうるもの(Weak Evidence)
の3つです。


1.に含まれるものは、眼圧、神経乳頭部の出血、そしてコンプライアンスの不良があります。

2.に含まれるものは、加齢、強度近視、片頭痛があります。

3.に含まれるものは、人種、神経乳頭周囲の萎縮、夜間低血圧があります。


片頭痛は特に正常眼圧緑内障での神経障害進行のFair Evidenceの危険因子と考えられるのです。


片頭痛の起こる機序は不明なところがありますが、脳血管の攣縮・拡張が一連の流れで起きていることは間違いなかろうと思われます。


古くからの有力な説としては血管説(セロトニン説)があります。セロトニンは消化管の細胞で合成され、血小板内に蓄えられています。脳内血管に何らかの刺激が発生すると、血小板からセロトニンが遊離され、流出したセロトニンは血管内皮細胞の受容体に取り込まれ、血管収縮を引き起こします。すると脳血流の低下により視覚野が刺激され、ギラギラするモザイク状の光が最初は小さく、やがて拡張し、その後に霞んだ感じになる視覚現象(閃輝暗点)が起こります。やがて血小板からのセロトニンが枯渇して来ると、血管は拡張を始めます。脳血管周囲には三叉神経がまつわりついていて、血管拡張により三叉神経の痛覚枝が刺激されますので、頭痛を生ずるという流れになります。


緑内障では特に血管の攣縮により、視神経乳頭の血量低下が起き、これが視神経障害を起こすことが想定されます。