ここから結論まで一気です。


2) 本件議会内発言及び本各投稿の国賠法上の達法性


ア 本件議会内発言について


普通地方公共団体の長が、議会における答弁や発言において、どのような形でこれを行うかについて


普通地方公共団体の長の政治的判断を含む一定の裁量が存在する


普通地方公共団体の長の議会における答弁や発言について国賠法1条1項にいう違法があるという条件


• 発言の動機、目的、内容及び発言態様等を考慮し、


• 普通地方公共団体の長としての政治的判断を含む一定の裁量を逸脱したといえることが必要


これを本件についてみると、


本件議会内発言は、


• 原告の名誉を毀損するもの


• 原告が本件発言をしたという事実が真実であるとはいえない


• 同事実が真実と信じるに足りる相当の理由があるといえる状況でなされたものともいえない


• また原告が本件発言をしたか否かは、政治的判断が必要となる事項でもない


結論:本件議会内発言は、石丸の市長としての裁量を逸脱したものといえ、国賠法1条1項にいう違法な行為があったものといえる。


イ 本件各投稿について


アで示したことと同じ観点で違法性ありとする


ウ 被告安芸高田市の主張


被告安芸高田市は、判例を引用した上で、本件議会内発言や本件各投稿について、被告石丸の行為が国賠法上違法と評価されるのは、


• 被告石丸が、市長としての職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示する


• あるいは、虚であることを知りながらあえてその事実を摘示する


=その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があった場合に限られるものと解すべきであると主張。


裁判所の判断:上記判決は、国会議員の国会における発言についてのもので、本件とは事案が異なり、被告安芸高田市の上記主張は採用できない。


(国会議員様と市会議員ごときとは並べられない?)


4争点(4)市議選告示日(11月13日)以降の被告石丸の行為が民法上又は国賠法上達法であるか否かについて


(1) 原告は、石丸が、

• 本件に関して追及を終了することを宜言した後も、SNS上で原告に対する本件発言に関する責任追及や非難等を続けたこと


水谷弁護士をして、

• 完全(編集前) な録音データの送付

• 原告のホームページに掲載されている記載の削除・訂正


等の各種要求をさせたことが社会通念上許されない達法な追及行為で、名誉毀損とは別に不法行為を構成する旨主張する。


裁判所の評価


• 証拠(甲1)によれば、11月13日以降、本件発言に係る被告石丸によるTwitter上の投稿が高頻度で行われているとは認められない。


• 水谷弁護士を介した文告による各種要求については、本件発言等に関する被告石丸自身の主張や認識に基づく交渉行為にすぎない


• 要求の態様等において不適切といえるような事情も見当たらない。


結論:被告石丸による11月13日以降のTwitter 上の投稿や水谷弁護士を介した各種要求が、名誉毀損とは別に不法行為を構成する旨の原告の上記主張は採用できない。


(原告の損害)について


既に説示したとおり、被告石丸による本件議会内発言及び本件各投稿については、国賠法上の違法性が認められる


=被告安芸高田市は、右行為について国賠法上の責任を負う。


そして、本件議会内発言及び本件各投稿は、原告の市議会議員としての評価を揺るがすようなものであって、


• 原告の下には、市議会議員としての素質や適性を疑い、辞職を求める非難のメールや話が殺到したこと


• 本件議会内発言が報道陣の前でされたことによって、原告が本件発言をした議員であるかのようにテレビ等で報道されたこと


• 本件各投構が、市議会議員候補者にとって重要な選挙期間内にされたこと


その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば、原告の慰謝料は30万円、弁護士費用はその1割程度の3万円と認めるのが相当である。


なお、原告は、被告石丸が、10月20日全員協議会の際、自ら報道陣を集めたことや、被告石丸による本件議会内発言及び本件各投稿によって、原告の得票数が減少したことを主張するが、これを認めるに足りる証拠はなく、原告の上記主張は採用できない。


第4 結論

以上によれば、原告の請求は、被告安芸高田市に対して33万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、被告石丸に対する請求及び被告安芸高田市に対するその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。なお、仮執行官言は相当でないからこれを付きない。


以下ブログ主の私見である。


以上が広島地裁が下し,高裁が支持し,石丸氏が上告受理を請求している判決である。


 反石丸派が宣伝するような「完全勝訴」ではないことは明らかであるが,勝訴の根拠も公人としての前提を無視したものの上に立っていることがわかる。なんとか一部でも原告の請求を認めるために必死に重箱の隅をほじくった印象があり,結果それでも請求の10分の1しか認められなていない。


対して原告のその他の請求を却下する部分では全く澱みなく却下している印象がある。


安芸高田市の新市長はこの33万円を,石丸氏の重大な瑕疵から安芸高田市に生じさせた損害であるという理由で石丸氏に賠償させようとしている。


それは当然我が身にも降りかかることだと覚悟して行うべきだろう。「Kの手記」(あそこでは架空の話だが)でもモチーフとして扱っている市立吉田保育園の件で,現実の話では石丸前市長(執行部)は速やかに移転手続きを進めていたのに,市議会が遅らせ,今は新市長が止めている。もし今天災で犠牲者が出れば,当然市や市長,議会の責任を問われるだろう。そして今の市長がやろうとしている33万円を補償させる理屈は万一の数億円でも応用されるのは当然だろう。市長市議は移転が済むまで神仏に祈り続けなければならないのだが。