以後,筆者が書き加えた部分は斜字で記す。それ以外は判決文を引用している。該当部分の判決文は後掲する。


3) 本件各投稿に係る被告石丸の原告に対する損害賠償責任の有無


前記(2)のとおり、本件各投稿は「職務を行うについて」されたものであるところ、原告は、本件各投稿について、国賠法1条1項の適用があるとしても、被告石丸がこれについての損害賠償責任を負うべきものである旨主張する。


(根拠の提示)


したがって、本件各投稿が原告の名誉を毀損するものであったとしても、被告石丸が、原告に対して損害賠償責任を負うものではなく、原告の上記主張は採用できない。


なお、上記と同様の理由から、本件議会内発言についても、被告石丸が原告に対して損害賠償責任を負うものではない。


石丸氏個人の賠償責任を簡潔に否定している。



2争点(2)(本件議会内発言及び本件各投稿の名誉毀損該当性等)について


(1) 本件議会内発言及び本件各投稿の名誉毀損該当性について


ア、本件議会内発言について イ本件各投稿について


本件議会内発言は、本件発言を原告がしたとの表現と、本件発言は恐喝であるとの表現に分けられる。


前者の意味内容は、原告は、被告石丸の行う政策等についての賛否を、当該政策等の是非ではなく、被告石丸が自身や市議会にとって敵か味方という立場によって決める市議会議員であると解釈され、


後者の意味内容は、上記のような市議会議員である原告が、被告石丸を脅し、自身や市議会に従うように仕向けようとしたと解釈される。→ 原告の社会的評価を低下させるものといえる=名誉毀損条件成立


本件各投稿のうち、本件発言をしたのは原告であるとの事実を摘示する部分及び本件発言は恫喝に該当するとの意見を表明する部分については、上記アのとおり原告の名誉を毀損するものといえる=名誉毀損条件成立


原告が本件発言をしたことを認め、これについて説明等をしないという事実を摘示する部分についても、被告石丸が一方的に、原告が本件発言をしたと主張しているだけでなく、原告もそれを認めた上で説明等もしないとなれば、原告が本件発言をしたという点についての真実味が増す上に、原告は、本件発言をしたことを認めていながら、そのことについて説明もせずに逃げていると解釈されるところ、これは、原告の市議会議員としての素質や適性、原告自身の人間性に対する評価に疑義を生じさせるものであるから、原告の社会的評価を低下させるものといえる。

したがって、被告石丸による本件各投稿は、いずれについても原告の名誉を毀損するものといえる。


(石丸氏の議会内での発言及び投稿は名誉毀損の条件を満たしているという判断を示している)。


ウ被告石丸の主張について

被告石丸は政治家の発言は自由な意見や批判にさらされるべきという前提において(=この部分,記述を入れ替えた)本件議会内発言も、原告の社会的評価を低下させるものではないと主張する。


しかし、、本件発言をしたのが原告であるか否かといった点や、本件発言が恫喝に当たるか否かといった点は、原告の人間性ないし議員としての素質や適性に関するものであって、原告の社会的評価にも直接関わるものというべきである。また、上記各点は、政策等の是非のように、議論を行った上で民意を形成していくべきものとは異なり、自由な意見や批判に晒されるべき政治家の発言などとは一線を画するものである。

よって、被告石丸の上記主張は採用することができない。政治家の議会内での発言といえども全ての発言に対して説明責任が生じるものではないという前提の提示


(2) その余の不法行為の成立に係る原告の主張について

原告は、被告石丸が、市議会議員選挙の告示日等の原告の選挙活動における最重要日を狙って、原告に当選を得させない目的をもって本件各投稿を行っており、本件各投稿は公職選挙法235条2項及び142条の7に違反し、名誉毀損とは別の不法行為を構成する旨主張する。


しかし、本件全証拠によっても、被告石丸において、本件各投稿の内容ないしその前提事実(本件発言を原告がしたとの事実)が虚であるとの認識を有しながら本件各投稿に及んでいたとまで認めることはできず、=公選法による選挙妨害行為の否定(中略)石丸氏がでっち上げをしているという原告の主張を否定している。でっち上げとは捏造(ねつぞう、でつぞう),実際になかったことを故意に事実のように仕立て上げること(出典:Wikipedia)を意味する。


したがって、被告石丸による本件各投稿が、名誉毀損とは別個の不法行為を構成するとの原告の上記主張は採用できない。