【針】〜夢の中の物語〜2幕 | 齊藤夢愛オフィシャルブログ Powered by Ameba

【針】〜夢の中の物語〜2幕

やっ、やばい…!!



このままでは…
そう思ったその時、


「そこの集団!やめなさーい!!」



黒いバンの奥から、白い車が走ってきた。車の頭には赤いランプ。

警察だ…!助かった…


「チッ」

男達が大きく舌打ちをして警察の方を睨む。
友達の一人が、胸ぐらを掴まれていた男の手をバシッと叩いて振り払った。

「いてっ」

離した隙にもと居た場所に走り、フンッと言った。


友達は4人とも、男に殴られたり擦ったりした傷があったが、持ち前の気の強さでなんとか持ちこたえている様子だ。
私はというと、運良くまだ殴られる前に警察が来たために傷一つない状態だった。

パトカーの止まっている辺りで、
男達が不機嫌そうに警察と離している。

何人かの警察は話しながらチラチラこちらを見て、男たちをなだめるようにしながら説得している様子だ。



「ゔんっ、ぅゔんっ」

喉は相変わらず痛かった。


「何か、話し合い長くない??」

「わたしもそう思った」


じっと睨みを聞かせて居た友達が口々にそう話し出した。

確かに、パトカーが来てから、もう20分ほど経つが、特に男達が暴れる感じでもなく、すぐに撤退させればいいものを、
先ほどから立って話をしているだけで、時折こちらを見たり、何か様子が変だ。


そしてそれから更に10分ほど経った頃だった。


警察がこちらに向かって歩いてきた。

何だか今にも私たちが叱られそうな怖い表情で。

「なんだろう。。。」


不安に掻き立てられる私たちの前に警察が足を止めた。


そして。


警察の一人が、とんでもない一言を放った。



「ここは、彼らの極秘な敷地であり、許可なく足を踏み入れた君達は不法侵入と見なされ厳重な罰を受け刑務所に収容されることになる。
しかし、話し合いの結果、彼らの合意により、君達には軽い罰を与えるという事で意見がまとまった。
これから君達には罰を受けてもらいます」



一瞬、時が止まり、私たちは暗い暗い穴底へと突き落とされた感覚に囚われた。


私たちが…罰を…???


「何でっっ?!私たち普通に歩いていただけなのにっっ!!」

「そうよっっ!!立ち入り禁止とか何もなかったしっ!それに罰って何よっ!!」



突然突きつけられた理不尽すぎる判決に、必死に食いかかる私たちに、警察は、

「決定事項だ。これから罰を受けてもらう場所に向かう。」


そう冷たく言い放った。


どうやら、二股に分かれた道の左側は行っていけないという、地元では暗黙のルールがあったようで、
立ち入り禁止の看板も鉄柵もあったはずだったのだ。

しかし今日に限って、その看板と鉄柵を新しいものにするために取り去られて居た。

そこに運悪く私たちが来てしまったということだった。

しかしルールはルール。男達は私たちを許しはしなかった。
軽い罰ってなんだ。
何で私たちが。。



そして5人はパトカーに乗せられ、山の奥へと進んで行った。

ふと友達の方を見ると、

恐怖と悔恨の情か。一点を見つめたまま唇を強く閉じて、ぎゅっと拳を握っていた。

また一人は、これから自分の身に降りかかる恐ろしいことを想像しての恐怖なのか、ガタガタと震えながら唇を抑えている。


私も、怖くて仕方が無かった。

罰って一体…。。

喉が一層痛む。

「ゔんっ、ゔんんっ。」

何かが引っかかっている感覚。何だろう。魚の骨…?いや、昨日はそんなもの食べていないし…。


そんな事よりも、これから私たちに起こることの方が、よほど恐ろしい。

この車がいつまでも到着しないで欲しい。。


そんな願いも虚しく、

パトカーは、山の奥の奥にある大きな建物の前で停止した。


「さぁ、出なさい」


警察の指示で私たちはパトカーから降りた。


物々しい雰囲気の大きなお城のような建物。
これが彼らの(アジト)なのか。。


警察に誘導されながら、建物に入る。
男達は既に入っているらしく、そこにはあのどす黒いバンが止まっていた。



建物内を歩きながら私は考えていた。

警察は、なぜこの男達の肩を持つのか。
敷地に入っただけで刑務所?
そんな事ってあるのか…?



その真相を知ることになるまでには、そう時間は経たなかった。



しかし気持ちの悪い雰囲気の建物だ。

外観もそうだが、中に入ると更に薄気味悪く、嫌~な雰囲気だ。

しばらく歩くと、だだっ広い廊下の真ん中から何やら歓声のようなものが聞こえてくる。
時折沢山の拍手もおり混ざりながら、かなりの人数と思われる歓声が聞こえてくる。


どうやら廊下の真ん中の方は吹き抜けのようになっていて、何か仕掛けが施されているような作りになっている。

私たちがいるところは一階だと思っていたが、

その吹き抜けから考えると、この建物の地下はかなり深く繋がっており、そこで何かが行われているようなのだ。


その、井戸のように丸くくり抜かれた吹き抜けから除けばそこが見られるようになっているようなのだが、

そこは見せてくれなかった。



「こっちだ」


警察からバトンタッチした、建物の監修のような大きな男に連れられ、5人は無言で歩き続けた。



「ここだ。」


到着したのは、ガラス張りになった、牢屋のような密閉された部屋だった。


「え…?」


「ここで待っていろ。」



半ば強引に部屋に押し込まれた5人。


監修達が去って行くと同時に、それまでピンと張っていた糸がパツンと切れたように5人は声を上げた。


「何なのこれ?!私たちどうなっちゃうの?!」
「嫌だよ、死にたくないよ!」
「でも軽い罰って言ってたよね?!」
「何で私たちがこんなことされなきゃいけないの?!」
「帰りたいよぉ…」


口々に嘆き、叫んだ。


私は、喉の痛みを抑えながら声を殺して泣いていた。


友達の一人がこう言った。


「なんかこれ、おかしくない?警察もこの組織に加担してるんじゃないの?」

「でも…何で?あんな不良共に。」


「それは、分からないけど…」





パチッッ…




突然、部屋の角に置いてあった一つのテレビが勝手についた。




画面には…




「え。何…これ…」




画面には、両手両足を縛られ自由を奪われた、大きな体をした男性が、台の上に寝かされている、信じがたい映像が映し出された。




晴れ夢愛晴れ