地質学で湯浅町は醤油醸造に適している 巽先生の記事より | 世界一の醤油をつくりたい 湯浅醤油有限会社 社長 新古敏朗のブログ

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湯浅醤油の社長、新古敏朗が想いを綴ります。
和歌山県の情報の発信、イベント情報などの掲載
日本の醤油の発祥の地から世界のトップもしくは、本当に醤油にこだわっている人に知ってもらいたいと思っています。

 

丸新本家湯浅醤油有限会社の新古敏朗です。

 

辰好幸

私がお世話になっている田中愛子先生の紹介で知ることになった、辰先生

地質学から、食との関係切り取る先生です。

先生がなんと湯浅町を取り上げてくれました。

 

 

〈ジオリブ研究所活動報告〉

 

「巽好幸の美食地質学」第20話

和食の名脇役醤油の系譜:(3)由良から湯浅へ

 

ジオリブ研究所所長、ジオアクティビストの巽です。


前回お話ししたように、醤油は様々な微生物の働きによって作られる発酵食品ですが、

私はその一つである麹菌が湯浅醤油発展の鍵を握っていると考えています。
 
穀類のデンプンを発酵可能なブドウ糖へと効率的に糖化させるは、麹菌が健やかに育たなければなりません。

この麹菌の生育にとって最大の敵は「鉄分」であり、鉄分の多い水を用いたのでは糖化がうまく進まず、

品質の良い醤油はできません。

この麹菌の特性に、由良に代わって湯浅で醤油作りが発展していった原因があるのです。
 
この辺りの地質を眺めると、1億数千万年前にまだ大陸の一部であった日本列島にプレート運動で付け加わった「付加体(秩父帯)」、おおよそ1億年前から数千万年前の「付加体(四万十帯)」と

地下深部から上昇してきた変成岩(三波川・御荷鉾(みかぶ)帯)が分布しています。

「付加体」とは、大洋の海底に堆積した泥や微生物の死骸(チャート)、

海底直下の地殻を形成する玄武岩、それに海溝へ陸から運ばれて溜まった砂や泥などが、

海溝から沈み込むプレートによって陸側の斜面に掃き寄せられて形成されたものです。

図に示した地質図では、「砂泥岩」としたものが海溝堆積物にあたり、

「混在岩」は海洋プレート由来の岩石(泥・チャート・玄武岩など)が渾然一体となった地層です。

 

和歌山の地層

さて興国寺の位置に注目してください。混在岩からなる地層の上に建っています。

また由良の背後にもこの混在岩が広く分布して山地となっています。

つまり、この辺りの湧水や川の水は混在岩、特にその中に点在する玄武岩中の鉄分を溶かし込んでいるのです。

そのせいで、醤油の製造に欠かせない麹菌の活動が制限されてしまい、

その結果良い醤油が作れなかったと想像できます。

近隣の港町である有田でも「緑色岩」(変成された玄武岩)が背後にあるために良い水が得にくかったはずです。
 
一方で湯浅の河川や地下水は、鉄をほとんど含まない砂や泥の地層を通り抜けてくるために、

麹菌の働きを最大限に生かせるのです。湯浅の人たちは「湯浅の水が醤油作りに適している」

と言いますが、その原因は地質にあったのです。

 

湯浅醤油有限会社

 

地質学は、面白いですね。

湯浅の水が良いと聞いていました科学的見解でも実証できるのは面白いですね。

 

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