湯浅醤油有限会社 丸新本家の新古敏朗です。
和歌山県で「ピエモンテ料理」を提供する、
ミシュランスターの「小林清一シェフ」の
生き方が素晴らしいので特別に紹介させていただきます。
シェフとの出会いは、何年前になるかわかりませんが
FBのメッセンジャーに11年前のコメントが残ってます。
2024年7月に湯浅醤油のHPのプレスの中に名料理「かく語りき」というコーナー
が有るのですが、その取材の時に聞いた話で感銘を受けたので掲載する事にしました。
「トラットリア・イ・ボローニャ」は、ピエモンテ料理にこだわるその理由
小林シェフは愛知県出身で、幼い頃から料理が好きで、
将来的に料理で何かできればと考えていました。
辻調理師専門学校で学び、ホテルよりも小さな店で経験を積むことを選び
静岡県の家庭的なイタリア料理店「ルチア」に入店しました。
当時はまだイタリア料理が日本で一般的ではなかった時代です。
2〜3年後、そこのシェフが亡くなったため、
シェフは肩書きにとらわれず皆で協力する形で店を支えました。
この経験から、東京での研修や料理本の読書を通じて独学で学びを深めました。
ルチアで9年間働いた間に、独自の料理を作るようになりましたが、
それらの料理が「本当にイタリア料理と呼べるのか」という疑問を抱くようになりました。
この疑問を解消し、「本物のイタリア料理」とは何かを知るために、
シェフはイタリアへ渡ることを決意しました。
トリノにある外国人向けのイタリア料理学校「ICIF」に入学し、半年間の座学と半年間のレストラン研修を受けました。
当初はミシュランの星付きレストランで働くことを目標としており、
トリノの星付きレストラン「バルボ」で研修生として働き始めました。
半年間の研修後、バルボのシェフに正式に誘われ合計2年間そこで働き、
自分の料理が間違っていなかったという確信を得ました。
シェフの指導をスムーズにこなし、自分の提案も受け入れられる経験を通して、
完全に納得するに至りました。
日本に帰国する前に、コテコテのピエモンテ料理を体験したいと考えたシェフは、
「イ・ボローニャ」という店を紹介され、そこで働くことになりました。
ここから小林さんは、本当のイタリア料理に出会う事になるのです。
この店はロケッタ・ターナロという小さな村にあり、オーナーの苗字が「ボローニャ」でした。当初は2〜3ヶ月で帰国するつもりで入店しました。
しかし、そこで初めて食べたシンプルな「タヤリンのトマトソース」に衝撃を受けました。
最初は賄い料理のように感じたその料理は、一口食べると信じられないほど美味しく、
その味の秘訣を探ろうとしましたが、店の料理はレシピも分量も時間も「適当」に作られているように見え、ミシュランで培った正確な技術を用いても同じ味を再現できませんでした。
彼はゼロから学び直す必要があると悟り、村人や年配の住民との会話を通じて、
パプリカを焦がすように炒めるなど、一見「手抜き」に見える調理法が実は味の秘訣であることを知っていきました。本物の味を再現できるようになるまで5年の歳月を要し、
その頃にシェフのポジションを任されるようになりました。
イ・ボローニャでは合計15年間働きました。
その経験を通じて、自分の作っている料理が、多くの店が手抜きをする中で貴重な本物のピエモンテ料理であると認識し、これを残していく使命感を感じました。
後の10年間は、教え導いてくれたイタリアへの感謝の気持ちから店に留まったと語っています。この店は家族経営で、シェフを含め4人の料理人が100人規模の料理を提供しており、手打ちパスタはオーナーの母親が生地を作り、シェフたちが仕上げていました。
イタリアで15年間働いた後、
シェフは自分の店が自分がいなくても回るようになっていると感じ、帰国を決意しました。
日本に帰国後、東京、大阪、名古屋などからオファーがありましたが、
魚料理を出さず、メニューの変更も頻繁ではない、
ピエモンテ料理に特化した自身のコンセプトに合う場所が見つかりませんでした。
そんな中、和歌山の編み機メーカーの社長と出会い、
彼の料理と哲学に共感してもらうことができました。
和歌山で自身の理想とするピエモンテ料理を提供することを許可され、
特別なパスタマシンやエスプレッソマシンも用意してもらいました。
こうして「イボローニャ」は2013年7月にオープンしました。
現在、日本では唯一、ほぼ100%ピエモンテ料理を提供するレストランであるとされています(唯一の例外は、彼が日本で働いていたルチアで完成させた「タラコスパゲッティ」です)。
シェフは、料理の本質はレシピ通りではなく、
感覚と経験によって引き出されるものだと考えています。
また、イタリア料理は最初のひと口で「美味しい」と感じさせるべきだという哲学を持っており、日本人にもイタリアの食文化を伝えたいと考えています。
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