昨年同様、2011年に第1巻(もしくは短編集)が発売になった作品に限定します。
第1位 石黒正数『外天楼』(講談社)

初めは1話完結のオムニバスかと思いきや、実はストーリーもので、それぞれの話にしっかりと伏線が張ってあり、それが後半に向けて絡み合って行き、衝撃的なラストを迎える。あちこちで絶賛されているだけあって、圧倒的な面白さ。
第2位 市川春子『25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ』(講談社)

名作『虫と歌』に続く作品集第2弾。今回も彼女にしか描けない世界観で溢れている。何でこんな事が発想出来るんだろう?と驚く事ばかり。そろそろ長編モノも見てみたい気もするけど、彼女にはこのまま我が道を突き進んで行って欲しい。
第3位 森田夕次/アダチケイジ『グラゼニ』(講談社)

当初は不定期連載だったが、すぐに週刊連載化して人気爆発。「このマンガがすごい!」でもオトコ編第2位と2011年を代表する作品になった。これまでの野球マンガとは違う、現実により近い“リアルガチ”な展開が読んでいてドキドキする。男がハマる作品。
第4位 山上たつひこ/いがらしみきお『羊の木』(講談社)

大御所同士がタッグを組んだ事で話題となっていたが、さすがに作品から発せられる緊張感がハンパない。第1巻ではまだ何も始まっていないのに、読み進めていくだけでゾクゾクしてくる。第2巻以降が楽しみなような怖いような…途中で頓挫しない事だけを祈る。
第5位 こざき亜衣『あさひなぐ』(小学館)

いかにもスピリッツらしいスポ根青春モノ。薙刀をチョイスするあたりが狙い過ぎ?と思っていたけど、なかなかどうして奥が深い。登場人物もみんな魅力的だし、実写化したら面白そう。これからどんどん人気が出るのでは。
第6位 南Q太『ひらけ駒!』(講談社)

『ハチワンダイバー』のような派手さも、『3月のライオン』のような切なさも、『王狩』のようなゲーム性も無いけれど、主人公の宝クンの将棋に対する直向きな姿がグッと来る。その宝クンを優しく見つめるお母さんがまた魅力的。
第7位 玉川重機『草子ブックガイド』(講談社)

主人公の少女が毎回本を読んだ後に書く感想文(これを古書店の店主は“ブックガイド”と読んでいる)が物語の中心になっているんだけど、コレが素晴らしい。この作品と共に作中で紹介された本を読むともっと面白いんだろうな。本好きの人に読んで欲しいマンガ。
第8位 久保ミツロウ『アゲイン!!』(講談社)

『モテキ』の次はこう来たかと。まさか再びマガジンに戻るとは思わなかった。いわゆる“逆行モノ”で主人公は時間が巻き戻って徐々に輝きつつあるのに、現代ではかなりイケていた少女が一緒に過去に戻ったら何をやっても上手く行かない。そのひねくれ具合が久保ミツロウらしい。
第9位 浅野いにお『うみべの女の子』(太田出版)

この作品を身も蓋も無い紹介の仕方をすれば「閉鎖的な田舎町でセックスに溺れる少年少女の物語」といったところ。そこには優しさや甘えは無く、ひたすら殺伐とした展開が続く。そこが浅野いにおの描き続ける現代性なんだろう。批判的な声も多い作者だけど、断固支持。
第10位 佐原ミズ『鉄楽レトラ』(小学館)

『マイガール』の佐原ミズの新作。彼女初の少年誌連載。彼女らしい優しい画風が魅力的。第1巻ではまだ何も始まっていないけど、面白くなりそうなニオイはプンプンしている。期待こめて10位に。
次点 鳥飼茜『おはようおかえり』(講談社)

主人公の上司がたまたま道端で出会った美しい女性がその主人公のお姉さんで…って世の中そんなに狭くないだろうとツッコミつつ、作品全体から滲み出て来る温かさが心地良くてついつい読み返してしまう。個人的には主人公の勤める会社のお局さんがもろタイプなんだな。
そんな訳で11作品紹介してみました。他にも鈴木マサカズ『七匹の侍』(終了の仕方が唐突だったのが残念)や安田弘之『寿司ガール』(相変わらずのシュールっぷり)も面白かった。
どの作品もまだ巻数それほど進んでいないので、興味が出た作品があればぜひ読んでみて下さい。
