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Another Half Moon

そういうこと。



「あなたはきっと、ずっと光の中で生きてきて、

此れからも沢山の人に囲まれて生きていく人。

だから大丈夫、もう少しで忘れられそうだから……。





自分の力で手に入れて、自らの手で捨ててきた。

今でも大事に育んでいれば花は咲いただろうか……

知らない誰かが受け継いで、知らない花を咲かせている。

私にはあなたが何色なのかさえ分からない儘……

届かない太陽に憧れる月のように、遠い恋をしていた。





あなたに寄り添う男の写真、

私の胸は痛むどころか少しほっとしている。

何かや誰かに力を注ぐことに少し疲れてしまったから、

此の儘あなたを諦め切れるなら、いっそ傷付いてしまいたい。

白くて柔らかい頬は、何度も抱き締められている。

私は誰にも気付かれない真昼の月のように、少しだけ泣いた。





誰にも言えないことが多すぎて、

私が今何処で何をしているのかなんて、

信じているほとんどの答えが間違っている。

私はすべてから解放されることばかりを望んで、

其の度に寂しさに傷付いてまた誰かを求めている。

行ける筈のない場所を目指す夢を見た……

会える筈のないあなたに出会う夢を見た……

途切れそうになる夢と現実を行き来する瞬間に、

何処にどう隠れようとも逃げ切れない現実を知る。





其処に存在した筈の何かが消えてしまうと、

此の目で見た真実ですら不確かなものになる。





名前も知らないあなたと知り合って、

あっという間に与えられた時間は過ぎ去った。

あなたがどんな声だったのかさえ忘れそうで、

此の気持ちが確かなものなのかどうかさえ、

今はあなたに誓える自信がない。





また逃げ出してしまった……

まるで誰かに駒を動かされるように、

走った分だけマス目を戻されてしまう。

誰かや何かに期待して生きる今日も、

ただ耐えるだけのつまらない毎日変わる。

誰にだって、其れは多かれ少なかれ同じこと。

ただ、私だけが其れを簡単に放棄してしまう。

此処で独りで居たって何も起こらない……

何がどうなることが本当の理想なんだろう。

理想がないから毎日が単調なのかもしれない。





其の人と過ごした時間以上に、

其の人を忘れるためには時間がかかる。

あなたを好きだったほんの僅かな時間……

忘れるためにもうどれぐらい経っているだろう。

だけどきっと順調にあなたを忘れている……

だからもう二度と二人を引き合わせたりしないで。」





秋、季節は廻った。

私は何も変わってないじゃないか。

だからもう二度と二人を引き合わせたりしないで。




ひとりになると、

自分の弱さに閉じこもってしまう。

ひとりで居ると、

そんな自分を許してしまう。

私はあなたの強さを知って、

そんな自分に気付きました。

“私はとても甘えている”

そう思ったんだ。



心を許して誰かに甘えるのと、

心を閉ざして自分を甘やかすのは違う。

私は失うことと傷付くことばかりにとらわれて、

強がる強さを身に付けてしまったよ。

“頑張るから”

そう云えるあなたに、

“頑張ってよ”

と返せずに寂しがるばかりの私は、

あなたにも自分にも甘えた儘だね。



私が今拘らなきゃならないのは、

星だとか月だとか自分自身だとかじゃなくて、

あなたと私。

何かしてあげたくて、

今すぐ何かしてあげたくて、

何だってしてあげたいのに、

事足りないことばかりが頭の中を巡るよ。

こんな時にこそ、

こんな時だからこそ、

自分じゃないあなたのためにって考えるのに、

何時も突き詰めてる思想や倫理は役立たなくて、

どんな日よりも無力に感じてしまう。

ただね、そんなエゴはどうでもよくて、

揺るぎない願いがひとつだけあって、

あなたに笑って欲しい、

それだけ。

あなたには私より多く笑っていて欲しい。

これは“ガンバレ!”に繋がるのだろうか……

きっと合ってるよね。



“そういうの、羨ましく思うよ”

私だって同じ気持ちだよ。

だから言葉に出来ない程に、

其の強さに憧れる。



“頑張ってよ”

云える前にあなたはもう頑張っていて、

私は何時だって遅れてエールを送る。

私はあとどの位であなたに追いつけるでしょうか。



そんなことを考えているうちに、

東の空が明けてきました。

全然無駄じゃない。

誰かのために過ぎてく時間なら、

孤独のためだけに時間を費やすよりもずっと。

だけど淋しい。

あなたはもっと淋しい筈なのに、

やっぱり甘えてるね。



大切な人が少し遠くに行きます。



自分を粗末に扱うことは、

他人との縁をも粗末にしていく。

やがて本物のヒトリになるとわかっていても、

こんな自分を可愛がってやることはできない……



相手に心も身体も委ねるなんて出来ない気がした。

結局のところ、起きていても眠っていてもヒトリがいいのだろう……

だったら其れに納得して眠ればいい。

こんな風に夜明けまで毛布にくるまって、

虚しさを押し付けている場合じゃない……

此の儘朝を迎えてしまえば、

余計に虚しくなるばかりだ。



高い場所まで上がるには、階段が要る。

川の向こう岸に渡るには、船や橋が要る。

目標にたどり着くには、其の手段が必要となる。

夢を描いても、理想を描いても、

其処にたどり着く為の手段を先に見付けなければ、

地上から見上げるだけの月や星と同じ存在だ。

ならば、此処から抜け出す為の手段は?



“好きです”と云われた。

だけど“好きです”と返せなかった。

何故だか安っぽく聞こえてしまう……

何故だか嘘っぽく感じてしまう……

其れは自分からは伝えないからで、

云われた科白を其の儘返しているせいだ。

まるでお芝居のように、

まるで挨拶のように、

心などなくても当たり前のように返せてしまう。

そうはなりたくない、決してそうではない、

だから“うん”と答えてしまう。

愛されていることを頭で理解して何になる……

愛されていることを心と身体で理解しなければ、

何時まで経っても誰かに安心して眠ることはないだろう。



一方で、言葉という範囲を裕に越えてしまうほどに愛してしまう。

其れを何らかの方法で相手に伝えられてしまった時、

私の愛情表現はすべて尽きてしまうように思われる。

もっとも、そんな方法が見付かっている訳ではないのだけれど……

単純に好きになることを恐れている。

愛されて、其れを認めてしまうことを恐れている。

其のことに対する言い訳、其れに対する嘘偽り。

私は深く深く此れ以上なく深く愛し過ぎて、

其れ以上なく愛されてしまったことが、

そして其の結末を知ってしまったことが、

今でも信じられずにいる。

私は捧げてしまった……

私が愛せるすべてを。



夜が明けてしまう。

また始まってしまう。

新しい今日という孤独。

たくさんの人々が目覚める数時間後……

おやすみなさい。