オレは逗子の社宅から引っ越し、横須賀のマイホームへと移った。
初めは「おうちにかえる!」と言ってなかなか新築の家に慣れず、追浜にあった祖父の官舎に数日いたみたいだ。
それからしばらくして、ねぇちゃんのあとを追っかけ、オレは幼稚園の年少クラスへ入った。
確かクラス名はバンビ。
一クラスだけだった。
二つ上のねぇちゃんは友達をつれてはオレをバカにしてきた。
だから「ふざけんな!」って中指を立てたのを覚えている。
その頃から後先考えずにすぐに行動を移してしまう性格は出まくっていた。
年中になるとクラスは二つに分かれ、うさぎ組ときりん組になって、オレはうさぎだった。
当時、ユウジってやつがいて、こいつがかなりの悪だった。
が、なぜか波長が合い、二人していつも悪さをしたもんだ。
その頃はまだ今ほど世間もうるさくなかったから、先生たちも平気でガッツリ叱ってきた。
よっぽど言うことを聞かないと連れていかれるのが、運動会の用具が入った倉庫。
通称ネズミ部屋。
悪いことするとネズミ部屋に閉じ込められるのがここの名物だった。
何度入れられたかわからない。
ただユウジはオレよりひどいってことで、子ども一人が横向きで体育座りしてやっと収まるような戸棚みたいなとこに閉じ込められてた。
今思えば体罰になるのか知らないが、オレらはそこで悪いことをすれば罰が下ることを覚えた。
あるときは、ある女の子に「臭い」と言っただけで、その子からのクレームにより閉じ込められたこともある。
とにかくオレはチクリの対象だった。
ただこの幼稚園はオレらが最後の卒園生だった。
年中のときにはすでに閉園が決まっていたため、年少クラスは無かった。
年長に上がったときはオレらの学年しかいない寂しい幼稚園になっていた。
そこは寺が運営していたのか、寺と墓地と同じ敷地内にあったんだ。
だから卒園式は寺で行った。
詳しく覚えていないが、朝の会や帰りの会に仏教的な挨拶をしていた気がする。
そんな荒んだ幼稚園時代であったが、外ではヒーローになれたんだ。
あいつらと一緒に。
THE ONE.