今年も1月6日に、田辺市にある熊楠顕彰館にて新春恒例の「十二支考輪読シリーズ」の講演会が開催され、私も会場最前列で聴講してきました。小峯和明名誉教授(立教大学)、金文京名誉教授(京都大学)、松居竜五教授(龍谷大学)から、熊楠の辰年に因んだ十二支考「田原藤太竜宮入りの譚」(龍は、十二支の中で唯一想像上の動物のため、熊楠も表題に苦労した?)を起点にした龍関連のお話しがいろいろな角度から紹介され、その後のQ&Aも含めて大変興味深く勉強になった2時間半でした。

 



熊楠顕彰館におけるこの「十二支考輪読」シリーズは、2012年の辰年から始まったとのことで、ぐるっと干支を一回りして、今回が2回目の辰年だそうですが、熊楠の龍の考察に関わるお話はまだまだ新鮮で、いろんな想像をかき立てて興味が尽きないというのがすごいです。特に今回の講師陣の中の金先生と松居先生はお二人とも辰年生まれで、「龍(竜)に対する愛」がすごいと感じました。(松居先生は、お名前は「竜五」ですし、大学は「龍谷大学」とのことで、このあたりも何か運命的なもの?も感じてしまいました。)

この講演会でのお話しの詳しい内容はともかくですが、私が特に印象に残ったことをいくつか紹介させて頂きます。
① 龍と竜は、その意味合いやニュアンスも微妙に違う。もともと竜という漢字が先に出来て(甲骨文字)、あとから「龍」という漢字ができた模様。

 



② 龍の爪は何本か?  ⇒ 中国では、人々は龍の子孫と自称し、王朝時代の龍は皇帝の象徴だった。そこで、皇帝の龍とそれ以外の龍を区別するため、皇帝の龍は爪が五本、その下の親王や高級官僚は四本、一般庶民は三本と決められた。このため(中国のしきたりに忠実な)日本では、いろいろなところに描かれている龍の爪は三爪がほとんど。一方で、韓国では(こっそりと?)あちこちの龍が五爪となっている。(因みに、ベトナムの龍は三爪とのこと)

③ 龍のモデルとなった動物は何? ⇒ 熊楠も特に力を入れていろいろな説を紹介している。蛇、トカゲ、ワニ、恐竜、さらには、ウミヘビやサメのような海洋生物、といろいろな説が交錯。

④ 龍は聖獣か、あるいは退治されるべき悪龍か? ⇒ 中国の龍はもちろんめでたい聖獣で皆がなりたがる存在なのに対し、インドの龍(ナーガ)や、西洋の龍(ドラゴン)は、お釈迦様やキリスト教の聖人に退治される存在であることが多い。

ドラゴンというと、ついつい私は、ゴジラのライバルである宇宙怪獣「キングギドラ」や、ドラゴンボール、ドラゴンクエストなどを思い浮かべてしまいますが、一方で、龍は、竜宮、龍神(田辺にも龍神温泉があります)など、はるかな憧れの、あるいは神格化された存在にも思えます。

実力伯仲の英雄・豪傑などを指す「竜虎」という言葉もあり、寅年生まれで虎ファンの私としては、それを誇りにも思ってきたのですが、今回、辰年生まれの二人の先生方のお話しを伺っていると、龍の方が虎より格上で「最強」とのことで、ちょっと複雑な心境になったりもしました。いずれにしても、辰年の今年は年明けからいろいろありましたが、これからどんどんいい方向にのぼっていく(昇竜のように)ことを願っております。