★新しい年が明けました。本年も当事務所を宜しくお願い致します。さて,年の初めの話題として当番弁護士についてお話しさせていただきたいと思います。当番弁護士制度は各地の弁護士会が弁護士を派遣して留置場などで被疑者と接見し,無料で相談に応じる制度です。令和4年12月23日,大阪地方裁判所は,建造物侵入容疑で大阪府警に現行犯逮捕された被疑者(不起訴になりました。)が当番弁護士の派遣を要請したのに警察署員が弁護士会への通知を怠り,必要な助言を得られず苦痛を受けたとして大阪府に154万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で,11万円の賠償を命じました。裁判所は,警察署員が通知を怠った過失を認めて被疑者の弁護人選定権を侵害したと判断したのです。

 

★この判決によれば,被疑者は,令和元年年10月31日正午頃,市議会議員の事務所に侵入したとして逮捕され,警察署での取り調べ中に当番弁護士の派遣要請を依頼しました。ところが,同日夕方に留置担当者に確認すると弁護士会に通知されていないことが判明しました。弁護士会の受付が時間外だったため翌11月1日朝に通知がなされ,弁護士と接見できたのは午前10時半頃と午後3時頃でした。

 

★判決は,警察署員らの証言を踏まえて捜査担当者が留置担当者に引き継ぐことを失念したと認定しました。大阪府側は当番弁護士の派遣要請を通知する義務はないと反論したのですが,判決は「当番弁護士制度が全国的に定着している。」として,被疑者の防御権を尊重し「当番弁護士の派遣要請をできる限り速やかに通知する義務があった。」旨と判断しました。

 

★当番弁護士制度は,憲法に由来する弁護士との接見交通権を具体化する制度であり,大阪府が訴訟で主張したように警察が被疑者の当番弁護士の派遣要請を通知する義務がないということになれば,接見交通権は絵に描いた餅になってしまいます。従って,上記大阪地裁判決は極めて妥当なものと考えます。私も弁護士会の当番弁護士に登録しています。年間約6日ですが,被疑者からの派遣要請のために事務所で待機しております。微力ですが,被疑者の接見交通権の具体化に多少でも役に立てれば幸いと思います。

 

★年の初めから重たい話題だったかもしれませんが,刑事弁護における重要な問題なので,敢えて取り上げさせていただきました。本年の皆様のご多幸をお祈りいたします。

 

 

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