★弁護士業界のニュースによれば,最高裁判所は令和4年12月12日,賃貸住宅の家賃を借り主が2カ月滞納するなどして連絡も取れない場合,物件を明け渡したとみなす家賃保証会社の契約条項の是非が争われた訴訟の判決で,消費者契約法に基づいてかかる条項を違法とする初判断を示して条項の使用差し止めを命じました。悪質な滞納者追い出し条項を制限したものです。

 

★この事件で争点とされたのは,家賃保証会社が借り主らと交わしていた契約条項であり,その内容は,家賃を2カ月以上滞納して電気やガスの使用状況から部屋を利用していないとみられる場合などに部屋を明け渡したとみなすとしていました。最高裁判所は,賃貸借契約を直接結んでいるのが家主と借り主である点を重視し,借り主の権利が当事者ではない家賃保証会社の一存で制限されて法的な手続きに基づかずに明け渡しと同様の状態になる点を著しく不当である旨判断しました。

 

★さらにこの事件では,借り主が3カ月以上の家賃を滞納した場合に家賃保証会社が事前通告なく賃貸借契約を解除できるとした別の条項も同様に違法である旨指摘して,「契約解除は生活の基盤を失わせる重大な事態を招き得るため,先立って通告する必要性は大きい。」旨判断しました。

 

★消費者契約法10条では,消費者と事業者が有する情報量の程度やその質、また両者が有する交渉力に大きな差があることを前提に消費者の権利を制限したり義務を加重する条項で消費者の利益を一方的に害するものは無効である旨規定しています。今回の最高裁判所の判断は,同法条に基づいて本件追い出し条項を無効である旨判断したものです。

 

★賃貸住宅では,入居に際して家賃滞納時に滞納分を家主側へ立て替え払いする家賃保証会社との契約を求めるケースが近年急増しており,滞納者への悪質な行為が問題化しております。借り主側の保護を重視した今回の最高裁判決は今後の賃貸借契約締結実務に大きな影響を与えそうです。

 

『尾崎祐一法律事務所』公式ホームページはこちら

https://peraichi.com/landing_pages/view/ozakilaw