★最近、現内閣における国務大臣が相次いで辞任するに至りました。行政権が帰属する内閣は,一人の内閣総理大臣とその他の国務大臣で構成されます。従って,国務大臣が辞任するということは,実際上は内閣総理大臣による更迭ではあっても内閣にとっては極めて重大な事柄です。そこで,今回は国務大臣の地位及び権能について概観してみたいと思います(なお,国務大臣という言葉は,広い意味では閣僚全部を意味しますが,ここでは内閣総理大臣以外の閣僚を意味するものとします)。

 

★国務大臣は,内閣総理大臣によって任命され,また,何時でも内閣総理大臣によって罷免されます。

国務大臣の過半数は国会議員でなければなりません。これは,日本国憲法が議院内閣制を採っていることによります。加えて,国務大臣は「文民」でなければなりません。文民とは,現在軍人でない者とこれまで軍人であったことのない者を意味するものとされていますが,自衛隊が存在することを前提とする限り,自衛官の職にある者やその職にあった者を除外する趣旨に解するべきでしょう。

 

★国務大臣は,内閣を構成する閣僚として閣議において発言権を有し,主任の国務大臣(外務大臣,法務大臣等)として法律や政令に署名し,衆議院及び参議院に出席して発言することや,案件の如何を問わず,内閣総理大臣に提出して閣議を求めることができるとされています。なお,国務大臣の中には,内閣総理大臣に事故があったり欠けたりしたときにおいて内閣総理大臣の職務を行う旨指定されている国務大臣がおり,その国務大臣が内閣官房長官以外の国務大臣である場合には「副総理」と呼ばれます。

 

★このように,国務大臣の権限は幅広いものですから,任命される者は人格・識見ともに優れていることが期待されます。国会で国務大臣が政治資金の処理が適正か否かやいかがわしい宗教団体との関わり合いについて国会議員から追及されること自体嘆かわしいことと言えましょう。内閣総理大臣の国務大臣任免権が国民の期待に応えるかたちで行使されることを期待したいところです。

 

 

 

『尾崎祐一法律事務所』公式ホームページはこちら

https://peraichi.com/landing_pages/view/ozakilaw