★新聞あるいはテレビによれば,従業員の半数が解雇されたと報じられており,同社の日本法人で働く社員も対象で,既に解雇対象か解雇対象ではないかが記された英文のメールが送られてきたようです。同社は外資系企業ですが,同社の日本法人の解雇に関する法律問題については日本の労働法が適用されます。今回の同社の解雇は有効とされるのでしょうか。

 

★日本の労働法上,会社の経営状況を理由とする解雇(整理解雇と呼ばれています。)については,解雇の有効性を判断する上で,以下の4要件が問題とされることになります。すなわち①人員削減の必要性があること,②解雇を回避するための努力を尽くしたこと,③解雇の対象となる人選に合理性が認められること,そして,④従業員や労働組合側に誠意ある説明を尽くすなど手続に妥当性が認められること,以上になります。解雇は会社側の経営危機を脱するための最終手段ですから,これら①~④の要件を充足しなければ,当該整理解雇は有効なものとはされません。

 

★同社に関する場合,現金等資産は3200億円にも上る一方、2021年度は330億円程の赤字であったとのことです。これでは、会社が経営危機にあったとは言い難いのであり,人員削減の必要まであったとは言えないと考えます。同社の解雇は,経営合理化や競争力強化のための戦略として行われるものですが,このような目的の人員削減は,まずは配置転換や出向そして希望退職募集を募集することで実現されるべきであると考えられているのです

 

★そうすると,同社の日本法人の解雇については上記の①の要件を満たしているとは言えず,その余の要件について判断するまでもなく,整理解雇は日本の法律上無効と言わざるを得ないでしょう。ただ,会社側は,整理解雇ではなく労働者の能力の問題で解雇した旨主張してくることが考えられます。そのような場合には,労働者が団結して一丸となって会社側に対処していく、あるいは,弁護士等の法律の専門家に相談して裁判所において法的措置を講ずるなどの方法を選択すべきと考えます。

 

 

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