★令和4年10月24日,最高裁判所は,音楽教室での生徒の演奏について著作権料を徴収できるかという争点について,徴収できないとの判断を示しました。この問題は,日本音楽著作権協会(JASRAC)が平成29年に音楽教室での楽曲の演奏について教師と生徒から著作権料を徴収しようとしたことから,音楽教室を経営する約250の事業者がJASRACに対して徴収権限がないことの確認を裁判所に求めて提訴したものです。

 

★1審の東京地方裁判所は,JASRACは事業者からも生徒からも徴収できる旨判断しましたが,控訴審の知的財産高等裁判所は,事業者からの徴収権限は認めたものの,生徒からの徴収権限を否定したことから,JASRAC側が上告していたものです。最高裁判所は,「生徒は技術向上を目的に,任意且つ自主的に演奏しているのであり,音楽教室から演奏を強制されているわけではない。」旨判断し,生徒の演奏に関しては音楽教室が著作物(楽曲)利用の主体とはいえないと結論づけました。JASRAC側が教師からの著作権料の徴収権限がある旨の知的財産高等裁判所の判断が最高裁判所でも維持されたのです。

 

★音楽教室側に対する著作権料の徴収は認められたものの,音楽教室側によれば,音楽教室を取り巻く環境は厳しいものがものがあり,新型コロナウィルスのまん延による密になりやすい教室の営業の悪化や演奏人口の減少といった問題があるとのことです。最高裁判所で著作権料に関する判断が確定したことから,今後は音楽教室側とJASRAC側とで楽曲の使用料率の協議が進められますが,実際に決定するには,教室内で生徒と教師がどの程度の割合で演奏しているのかや,著作権の保護期間にある曲がどの程度演奏されているかなど,算定の要素をどのように判断するかなど問題点は数多くあるようです。

 

★ここから先は余談ですが,私の好きなクラッシ音楽を教えている音楽教室では,殊にバロック音楽など既に作曲されてから300年以上も経過している曲が大半ですので,作曲家の残した譜面どおりに演奏していれば著作権の問題は起こりません。上記のような著作権を巡る紛争を耳にすると,法曹からみると何かホッとするような気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

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