★令和4年7月29日,法務大臣が記者会見で①「外国人技能実習生について,実習先で暴行を受けるなど人権侵害が後を絶たない。」②「制度の趣旨と運用実態が乖離せず,整合することが必要である。」と述べて外国人技能実習制度の本格的な見直しを表明しました。

 

★外国人技能実習制度は,企業や農場などで外国人を受け入れて技術を習得してもらい,日本で習得した技術や知識を母国での発展に生かして貰う目的で平成5年に創設されたものです。実習生は建設現場や食品製造工場そして農場などの実習先で最長5年働くことができますが,違法な長時間労働や賃金不払いといった問題が発生しており,さらには,来日前に高額の手数料を仲介者に支払うことで多額の負債を負っている事案も報告されています。

 

★しかし,この制度の本格見直しには問題があります。まず,制度の趣旨と運用実態が乖離せず,整合させることなど不可能です。国際貢献という趣旨自体がまやかしであり,実際は安い労働力確保が運用実態に他なりません。技能実習制度を廃止して新たな外国人労働者を受け入れる制度をつくるべきではないでしょうか。

 

★また,技能実習生に対する人権侵害が後を絶たないのに,年内に有識者会議を設けようとしていますが,これでは遅すぎます。すぐにでも技能実習制度を廃止して新たな外国人労働者受け入れ制度をつくるべきです。年内に有識者会議を設けるとしたのは,同年10月に開会される臨時国会で入管法の改悪を実現させて外国人に対する管理を強化し,制度からはみ出してしまった外国人労働者を確実に強制送還できるようにしてから制度の改革の議論をしようという考えに基づくものであり,外国人労働者を日本の社会を作り上げる仲間として受け入れるのであれば,このような時間割にはならないはずです。

 

★これから日本の生産人口は減っていき,現在の生活水準を維持するためには外国人労働者を社会を構成する仲間として受け入れる制度を創ることが必要不可欠です。外国人を管理・取り締まる立場ではなく,労働者や市民の立場から技能実習制度の廃止とその後の外国人労働者受け入れ制度の議論を見守っていきたいと思います。

 

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