「歩き遍路をする際に準備するもの」について、終わったあとが一番情報として説得力があると思っていたのでこのタイミングでまとめる。

※自分も始めるときに色々調べたし、そういう方の助けになればと思う。

 

■大事なもの

・歩き遍路をする覚悟

 ちょっと歩いてみよう、というような気持ちでやるものではない。が、自分としてはたくさんの人に遍路を経験してほしいので「まずは徳島県分だけでも」くらいで始めるのは良いと思う。実際に歩いてみて、序盤の徳島県で遍路の基本や感覚が固まった気がする。当然無理そうなら区切るなり、やり方(車やバス、電車利用)を変更すればいい。

 道中でいろいろな人と話したが、”徳島分を歩けた人は最後まで歩ける”という意見は多かったし、自分もそう思う。なので無理だったなら、できるやり方でやれば良い(せっかく始めた遍路を途中で辞めるのももったいないし…。)

 ※歩き遍路にこだわらないならバスツアーとかがお手軽だと思うが、自分としてはやっぱり遍路は”道中”が最も醍醐味というか大きな割合を占めるところだと思うので、一度歩きも検討してみてほしい。

 

・時間(歩く期間)

 歩き遍路はおよそ40日程度かかると言われている。自分は46日かかった。

 自分は歩くペースは多分早めだったが、1日に進む距離は結局どこに宿を取るかで決まるので余裕を持って宿につくスケジュールを取っていた自分はちょっと日数かかったかも。一応、遍路地図に推奨経路・日程があったがそれは43日だった。

 早い人は40日を切るらしいが、始めて歩くのであれば「40日以上必要」と考えておくのが無難。

 なお、1日に歩く時間は人それぞれだが大体朝は6時〜7時くらいには出発、宿の到着は15時〜16時が目安。自分は道中の怪我や道間違いなどのトラブルや夕食、朝食のつかない宿の場合の買い物、先の宿の手配、ルートの予習などを考慮して到着は余裕を持って14時〜15時くらいになるようにした(これはこれで宿のチェックイン前になることが多いので検討の余地あり)。

 

・お金

 歩き遍路ではあまりお金を使わないイメージがあるかもしれない。実際、宿泊費と食事だけだがそれでおよそ1万円かかる。なので、先程の時間の話(40日以上必要)と合わせて「期間中に余裕を持って50万必要」

 ただこれは期間中だけの話なので、後述する荷物類の準備等は別途お金がかかる。

 

・健康な体

 当然と思われるかもしれないが、一番気にすべき部分だと思う。

 出発前はもちろん、期間中は宿以外ほぼ歩き続けているので体調を崩したり怪我や捻挫など、治療や回復を待ちながら進めるのはとても大変だと思う。生活面でも気をつけるべきだし、歩いている最中も気をつけるべき(無理なペース配分、不安定な足場を歩くなど)。歩き遍路では筋肉痛や捻挫などはありがちだと思うが、そもそもならないように可能な限り努力したほうが良い。

 

■荷物関係

大前提として荷物の重さはそのまま歩き遍路の難易度に比例していると思ったほうが良い。軽ければ軽いほど歩きやすい。

”いるかも…”くらいのものは必要になったら買う、使っていないなら道中で家に送り返すなり捨てたりしたほうがいい。ちなみに自分はかなり軽い方(どこの宿でも荷物少ないと言われた)。

 

あと、自分は5月(GW明け)〜6月末の時期だったので、その時期目線での記載になっているので時期が違うのであれば記載以外の物も考慮が必要。

 

〜リュック分(主に宿泊関係分)〜

まずは実際に自分が終了時に持っていた荷物の写真。

 ーリュック本体
  持ち物は人によるところもあるので調整は必要だが50L以下のものが適切だと思う。また、容量の他に気にすべき点として本体の軽さ胸・腰での留め具有無はちゃんと確認して選んだほうが良い。
 ー雨具
  上下着るタイプ、上から被るポンチョタイプが主流と思われる。自分はポンチョタイプだったが、これのメリットは雨が降る始めても歩きながら準備して着られる。一方デメリットは膝下あたりから下は無防備になる。自分の服装や歩く時期(梅雨とか雪とか)を考慮して好きな方を選べばいいと思う。四国は晴れの多い天気の良い地域だが、雨が全く降らないというのは無いと考えたほうが良いので準備は必要。

 ー服(2着目)

  1着は来て歩いて宿についたら洗濯する、次の日はもう1セット側を着るという形でローテーションした。なので常に2セット目がカバンには入っている状態。洗濯ができない宿もあるし、万が一破れるとかで使えなくなったらすぐに換えを用意するのが難しいと思う。(ちなみに一番消耗しそうな靴下は計3セットでスタートしたが結局2セットローテーションで進めて、30日を超えたりで穴が空き始めたので順次交換した。)ズボンだけは1セットで洗濯して着回した。宿で洗濯できるようなところは大抵浴衣などサービスがあるので朝起きた段階で乾いているような速乾性のズボンを使った。

 ー非常食(カロリーメイト)

  どうしてもお店がないような区間があるので、うまく計画できず食べるものがないといったときに必要。自分はそういったことはなかったので道中で入れ替えるような形で食べてはいた。

 ービニール袋

  上記の服と非常食は濡れると困るのでリュックの中の内袋として使用。濡れるの?と思われるかもしれないが、雨は当然として道中で購入した冷えた飲み物をリュックに入れて濡れる、山道などで背中とカバンが蒸されて湿るなどちょこちょこ濡れそうな場面はある。

 ー強力なテープ

  必須ではない。自分は笠の骨組みが崩れてきたときに使用。出番もそれだけだったので必要になって購入で良いと思う。

 ー薬(熱、かぜ)

  必須ではない。最初の1週間くらいのときに喉に違和感があり購入、使用。2日分くらいしか使ってない。必要になったら購入でいいが、ドラックストアとかは場所によっては全然無いので違和感があれば早めに購入すべき。

 ー眼鏡、コンタクト、保存液

  必要な人のみ。コンタクトは余裕を持った数あったほうが良いかもしれないが、保存液は大きいものは重いだけなのでコンビニなどで売っている旅行用の小さいボトルの保存液にしたほうが良い。

 ースマホ充電器

  言わずとも全員が持っていくだろう。ちなみにモバイルバッテリーを自分は開始時に持っていったが全く使わなかったので途中で家へ。自分のスマホはちょうど買い替えたところ(※)だったし、使用内容も経路アプリ、遍路アプリ、マップアプリ、写真撮影、宿泊の電話、ブログ投稿くらいだったので宿につくまでに充電が半分を切るようなことは稀だった。

 (※)2025年3月にASUSのzenfone10<2023年9月に国内発売>に゙買い替え。

 ー爪切り

  必須ではない。宿によっては貸してくれるところもあるのでなくても問題はない。足のマメを潰して水抜きする使い方を最初の頃にしたが、マメは潰さず放置したほうが治りが良いと聞いたので1回しかやってない。同じ理由でコンパクトな裁縫道具を持っていっていたが全く使わなかったので家へ。

 ー毛抜き

  必須ではない。木のささくれとかが刺さったときに使った。あまりささくれが刺さることは無いが、これ以外で対処が難しいと思うのであってもいいと思う。

 ーボールペン

  必須。メモや地図への印などの記入、後述の納札の記入に必要。

 ー耳栓

  必要な人のみ。宿によっては壁が薄かったり、そもそもゲストハウスの場合カーテン程度の敷居しか無いこともあり周りの話し声やいびきが気になるときに使用。自分は46日の間で2回しか使わなかったのでなくても良いかなと思う。

 ーポケットティッシュ

  必須ではない。自分は一度も使用しなかった。ただ、山道の休憩所などのトイレで紙がないとかはありそうなので1つお守り程度に持っておけば良いと思う。

 ーキズパワーパッド、絆創膏

  必須。断然キズパワーパッドをおすすめする。マメが潰れたときの保護力(?)が想像以上でほとんど痛みがなかった。ただ、マメができたということはその箇所が擦れているのでキズパワーパッドのゲル状の部分が持っても2日。自分はマメが3箇所に1回ずつしかできなかったので4−5枚しか使わなかった。大きいサイズと小さいサイズをひと箱分ずつ用意しておき足りなければ補充でOK。

 ークリアポーチ

  細かいものをリュックにそのままいれるとごちゃごちゃになるのでまとめるために使用。断然あったほうが良い。写真左下、クリアポーチ本体の上や手前にあるものをまとめて入れた。

 ー歯磨きセット

  ほとんどの宿には使い捨ての歯磨きセットが用意してあるが、稀にないところもある。自分も全く使わなかったわけではなく、複数回使用したので持っておいても良い。

 ー日焼け止め

  時期によるかもしれないがあったほうが良いと思う。歩き続けるので日焼けは避けられないが、ひどい日焼けになるとお風呂とかでしみるような症状になってしまうので。

 ー筋肉痛、捻挫等の鎮痛剤

  必須。自分はそれほどひどい症状にはならなかったが、初期の頃にシップタイプのものを10枚くらい使用→そんなにひどくなければ塗るタイプのほうが便利という考えでシップを使い切ったところで切り替え。たぶん最初はどうしても症状は重めになることが多いと思うのでシップタイプを数枚、日々予防の意味で塗るタイプを用意して持っていくのが良いと思う。

 

 

〜肩掛けカバン分(主に参拝関係分)〜

こちらも終了時の荷物の写真。

 ーカバン本体
  指定されているわけではないが、遍路をしている人はほとんどこのカバン。他のカバンでもよいが、肩掛けできるカバン自体は必須。大きい荷物を持たずに歩くときなどはこちらのカバンだけで行動する。
 ー地図
  必須ではないが、強く推奨。写真のような黄色い遍路用の地図が定期的に更新されて出ている。道中でほとんどの遍路の方が持っているし、持っていない方も存在を知っている。ただの地図ではなく、遍路の経路は当然として道中の宿やお店の場所情報、目印になるような建物、経路上の注意事項、大まかな全体経路の距離・高低差・日程スケジュールなど役立つ情報が多い。歩きながら何度も確認することになるのでこちらのカバンに入れてすぐ取り出せるようにする。
 ※黄色い遍路用地図は別途”解説編”もあるが、そちらは不要。
 ー参拝関係
  参拝関係の道具は各々の参拝の仕方にもよるので各自調整してください。なお参拝の方法自体はきっちりした正解は無いみたいなので、ある程度自分なりに調べて以下の形にした。
 ==自分の参拝方法==
 1.門に入るところで一礼
 (鐘を鳴らすのであれば順番としてはこの辺だけど、寺によって鳴らしてはいけないところもあるので自分は手順に入れていない)
 2.手水場(手洗い所)で手を洗う
 3.本堂にて”参拝”
 4.大師堂にて”参拝”
 5.納経所にて納経を記載してもらう
 6.門から出たところで一礼
 
 ”参拝”の部分も人により様々。以下自分の手順。
 1.線香(3本)を供える

 2.納札を納札入れにいれる

 3.お賽銭を賽銭箱にいれる

 4.お経を読む

 線香の前にロウソク(1本)を供える人もいるが、ロウソクは結構荷物になりそうなのと実施している人は少数みたいなので自分はやっていない。

 

 お経も読む箇所が人それぞれ。以下自分の場合。

 1.開経偈(かいきょうげ) 1回

 2.十三佛真言(じゅうさんぶつしんごん) 本堂のみ 3回

  御本尊真言とも言われる。寺によって祀られている(?)十三佛のいずれかが決まっているのでそれに応じた部分を読む。大抵、本堂の柱とかに表札のように書かれている。 例)薬師如来 「おんころころせんだりまとうぎそわか」

 3.光明真言(こうみょうしんごん) 3回

 4.大師宝号(たいしほうごう) 3回

 5.般若心経(はんにゃしんぎょう) 1回

 6.廻向(えこう) 1回

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 ー経本

  遍路用に経本がある。(お経自体はもっと長いらしいが、遍路用に必要な箇所のみの記載になっている)

 ー納札(多数)

  本堂と大師堂の参拝でそれぞれ1枚使うので、単純計算で88箇所×2枚=176枚必要。更にお接待頂いたときに渡すので200枚は超えると思う。大抵100枚組100円とかなので随時購入。ただ、事前に名前等記載しておく必要があるので準備も考えて余裕を持って早めに買っておき、宿で記入する。

 ー線香(多数)

  本堂と大師堂の参拝でそれぞれ3本つかうので、単純計算で88箇所×3本=264本必要。最初から必要数持っておくと荷物になるので減ってきたら補充する。コンビニや100均で簡単に買えるが一度に3本使うので、他のものより減りが早いことに気をつける。

 ーライター

  線香に火をつけるのに使用。1本あれば十分だが、つきにくくなったりするので随時買い替え(自分は計3本使った)。

 ーお賽銭

  本堂と大師堂の参拝でそれぞれ1回、88箇所×2回=176回必要。金額は自由だと思うが、結構な回数なので5円か10円が妥当だと思う。5円は安く収まるが手に入りにくいので補充手段を考える必要あり。10円は手に入りやすいが費用が5円の倍かかる。バラバラで持っておくのは大変なので保管方法を考えておくこと。1日に数寺回ることも多いのでそれなりの数準備しておく。

 ー納経帳

  納経(御朱印、スタンプラリー的なもの)をしてもらう本。お遍路用に88箇所の記載箇所(ページ)が決まっており、本自体のサイズや別格の20寺を含むかどうか、単純なデザインの違いなどがあるのでこだわる人はよく確認して購入が必要。

 ー御影(おすがた・おみえ)袋

  納経したときに一緒にもらえる札のようなもの。各寺の御本尊を指しているとのことで、1枚ではなく1体と呼ぶんだそうです。何も準備していなかったが、1番で写真のような袋をいただけたのでそれに保管していた。納経帳のように1体1体を保管できるようになっている御影帳というのもあるそうなので、きれいにしたい人は用意しておく(当然荷物が増えることになるが)。

 ークリアポーチ

  地図を非常に出し入れすることになるので、それ以外をまとめるために使用。また参拝系の道具は濡れると困るので濡れるのを防止する意味でも必要。結構参拝系道具はかさばるので大きめ(カバンと同等サイズくらい)のものが良いと思う。

 

〜服装〜

これも終了時の写真。

 ー菅笠(すげがさ)
  かぶっていない方もいたが自分はおすすめする。軽い雨ならこれだけでいいし、日差しが直接当たらないという点でも有用。ただ風に弱いので対策した方が良い。購入時写真一番上の紐が付属していたが、それを顎紐にするのではなく別途菅笠用の顎紐アタッチメントを購入推奨。頭に当たる部分がクッション材になるし、顎紐部分のこすれも楽になる。普通に紐で止めていた他の遍路の方が、紐だと風でだいぶ辛いと言っていた。
 ー金剛杖
  必須ではないが推奨。平坦な道では実感はなかったが、登り道下り道ではかなり便利。なんなら登山用の杖(トレッキングポール)を2本で歩いてる人もいた。
 ー白衣(はくえ)
  お遍路の衣装といえばこれ。夏用の袖無しを使用。ちなみに白衣に御朱印をいただくこともできるが、その場合着る用と御朱印用で別に用意すること。恥ずかしくて着るのが嫌な人はいるかもしれないが、四国ではわりかしよく見る風景。着る人が多数派だと思う。
 ー輪袈裟(わげさ)
  お遍路衣装といえば、その2。白衣を着ているならこれをつけている方がほとんど。リュックやカバンを持っているのでそれほどビラビラと風になびいたりしないが、気になる人は輪袈裟を止めるネクタイピン的なものもある。
 ー靴
  写真には取っていないが非常に重視すべき。自分は歩き遍路のために数万円のウォーキングシューズを新調。普通の靴ではダメになるので道中2-3回履き替えることになると聞いていて、良いものを1足用意したほうが断然いい。ものによるのかもしれないが自分が購入したものは防水もしっかりしていて外側からはほとんど濡れてこなかった(雨が激しいときは靴下を伝って中が濡れてくる、これは多分どんな靴でも防ぎようがない)。
 
あとは個別にスマホと財布を持っていた。(財布は雨が強ければポケットより肩掛けカバン内にいれるのが無難。濡れにくい。)

 

■アプリなど

自分は経路記録用にロガーアプリしか考えてなかったが道中で便利なものを教えてもらったりした。

 ーロガーアプリ

  必須ではない。ただ、自分が通ってきた経路がわかると今歩いている方向や道が一目でわかる。道がズレた場合にも修正可能なのか、戻ったほうが良いのかとかが考えやすくなる。

 ーHENRO HELPER(アプリ)

  海外の方が作成したアプリとのこと(なので日本語に非対応)。使い方はシンプルなので日本語でなくても感覚的にわかる。休憩所や宿など地図上にポイントしてほしいものをチェックするだけで、四国地図上にポイントしてくれる。全体の経路自体も基本のものを線で引いてくれているので、経路上で通るかもわかる。自分は宿予約のときの情報源の1つとして使用。(もっと有効活用できるかもしれない。)

 ー遍路宿ドットコム(webサイト)

  88箇所の寺と経路近辺の宿を1番からの距離順に並べて距離を書いてくれている。これの良いところは、道中が長い区間でも宿と宿の区間の距離を単純に引き算すれば宿間の距離を算出できる。つまり1日25キロ目安とか30キロ目安という歩く予定にたいして、現在の宿からその距離離れた宿を探せばいいだけになる。地図にも途中途中で距離は書いてくれていたりするが、縮尺が違ったり寺から進んだ距離で書いてあるので、複数の寺を回るような日には各経路の足し算などが必要になり面倒だし計算間違いしたら目も当てられない。自分は予定距離とこのサイトで1日の歩く予定を立てたと言っても過言ではないくらい利用した。

 

 

遍路を始めようと思ったときに自分が準備しようと調べた情報はほぼすべて書けたと思う。この内容をもとに遍路を始めてくれる人がいれば幸い。