感想、続けます。

 

29.秋刀魚焼く青磁の皿の出番なり   みなみ

「秋刀魚」に「青磁の皿」を配した掲句、北王子魯山人の説いた料理と器の関係を思い出せてくれる一句でした。青磁の皿の出番・・・年に何回あるのでしょう? とにかく、というか、秋刀魚・・・昨今、高級魚になりつつあります。青磁の皿に盛り付けて・・・いいんじゃないでしょうか。鷹渡る太平の世の天守閣 日本の、まぁ、太平と言える状態の中で見上げた天守閣の先に鷹が渡ってきたのを見つけた。なかなかいい景でした。

 

30.野葡萄や酸いも甘いも知りてなお  木人28

木人28さん、「酸いも甘いも知りてなお」・・・の続きが気になります(笑)。まぁ、野葡萄らしさはあると思いました。秋茄子や惣菜店で買う夕餉 「惣菜店で」買った夕餉に調理された「秋茄子」が入っていたのでしょうか? 上五が「や」で切れていたので「秋茄子」は秋茄子として惣菜店の近くにあって、別のお惣菜を買われたのでしょうか? いずれにせよ、秋茄子の美味しさが伝わってこなかったのが残念です。

 

36.空高し呑気な雲と墓参り      緑茶

先に「天高し」の句で辛口コメントしてしまいましたが、・・・掲句、「呑気な雲と墓参り」というフレーズが現在進行形で続いているのが良かったと思います。秋の空が高い頃の「墓参り」と言えば、秋彼岸ですが、そんな陰気さを消し去っているところもよかったと思います。実際、墓参りは一つの行事で、「なんか美味しいモン食べて帰ろう」みたいな・・・現代的な感覚に魅力を感じました。

 

37.月もがな道を外れし旅の宿     あき坊

掲句、「月もがな」は、現代語に訳せば、「月があるといいなぁ」という感じになります。・・・ということで、こちらの句は「無月」という季語が当てはまる情景です。幹線道路から外れたちょっと暗いところにぽつんと旅の宿・・・。まぁ、これはこれで風流じゃないですか? 菊かをれ緩和ケアの病個室 自分もこの歳になると、こういう「緩和ケア」の方の見舞いが多くなります。「菊かをれ」・・・は、作者の見舞いの心持ちやご性格を映し出していると思いました。

 

40.秋冷やモウセンゴケに残る翅    おみそ

掲句、「モウセンゴケに残る翅」というフレーズに対し、「秋冷」という季語を配されました。「そぞろ寒」なんかだと、本当に寒々しい光景になりますが、「秋冷」くらいでちょうど良かったように思いました。自然の“生々流転”の営みを垣間見る一句だったと思います。絵灯篭手漉きの和紙の月上がる ちょうど、東京目黒の雅叙園で「和のあかり」という展示を観てきたので、そんな雰囲気のある句と思いました。日本文化の風情・・・というもの、最近の若い方たちより、外国人の方が高く評価しているように思えて、お若い方たちにも俳句とか、和の文化にもっとふれてほしいと思ってしまいます。

 

42.塩辛蜻蛉もうすぐ雨とスマホの児     粋子

掲句、面白いところに視点を置かれたなぁ・・・と感心しました。「もうすぐ雨とスマホの児」のフレーズ・・・、今頃はいいお歳の大人より子供たちの方がスマホや電子機器、上手に使いこなしますものね。雨雲レーダーとかアプリから確認されたんですね。「塩辛蜻蛉」だとどうしても字余りが気になってしまいますので、「蜻蛉(とんぼう)や」くらいで良かったのかもと思いました。

 

43.蓮咲けり古の香を放ちつつ     秋月

私の住む埼玉県の県北に「古代蓮の里」という公園があります。きっと同じ蓮を観ながら掲句を詠まれたことでしょう。古来から連綿とつづく遺伝子と、その花の放つ同じ香り・・・着目されたところが良かったと思いました。翔平や拍手喝采獺祭忌 まさしく「獺祭忌」の日に“50-50”達成でしたね。時事句として、こういう句もありなのだと思いますが、ともすると俗になりがちなので、ご注意を。あと「翔平や」だと、大谷翔平選手が句の主人公になり、「獺祭忌」が後付けになっていますので、その辺もご注意を。やはり俳句の主役はあくまで季語でなければと思います。

 

以上、泯さま、ご参加ありがとうございました。