それでは…いつもの通り、ご参加の皆さまの句に感想を付させて頂きます。あくまで個人的に思ったことを記しますので、ご参考程度になればと思います。
1.三姉妹集う館の風鈴よ 緑茶
「三姉妹」というのが良いですね。自分が三兄弟なので、男はいがみ合っていけません。…ご実家なのか、それともご会食の席なのか…窓辺の風鈴の音に合わせて、思い出話をしてみたり…そんな景が浮かびました。ガラスの風鈴の音だと軽やかで心地良いなぁ…なんて。片陰や去りゆくものの息遣い こちらも、景のよく見える一句でした。片陰に入って、少し息をついて…その陰を求めて新たに入られた方に会釈して出て行かれる…そんな様子ですね。
2.女郎花三代つづく紺屋かな 笑い仮面
こちらも漢字席題「三」の句でした。『三代続く紺屋』の鄙びた感と季語「女郎花」がマッチしてました。切字「かな」もいいですね。秋空や斎場行きのバス路線 こちらは『斎場行きの』バスを待ちつつ「秋空」を眺めておられるのでしょう。斎場ですから、大きな葬儀にはそれなりに送迎バスがあるのだと思いますが、今やこじんまりとした家族葬が多いでしょうから、…そうなんだろうなぁ…と思いました。静かな景ですが、空の向こうに逝かれた方を思う作者の思いや、ご自身の生死感のようなものが感じられました。
3.滝落ちて山かひに雲生まれけり あき坊
落瀑を観ながら、その向こうの谷にもくもくとせり上がる入道雲の様子がよく見えました。滝の下へと落ちる動きと、雲が生まれて昇っていく上への動きとを上手に配されたと思いました。夏雲や大極殿の朱の新た こちらも「夏雲」を詠まれた佳句だと思います。塗り直されたばかりの『太極殿』の重厚感と塗料の香と夏の青空の入道雲の色彩感のいい句でした。
11.三河屋と越後屋ならぶ秋灯 ひょうたん機
こちらも漢字席題「三」の句。『三河屋』は愛知の出で割と調子の良い軽妙感のある店、『越後屋』は新潟、雪国の重厚感のある店のように感じました。それぞれに商っているものも違うのでしょうが、ライバルではないけれど、どうもあまり仲良くなさげな雰囲気が合ったり…地名の商店名で読者にいろいろと連想させて、「秋灯」で締めくくるあたりは、やはり手練れの作品だなぁ…と思いました。朝焼や路傍の歌手の厭戦歌 この『路傍の歌手』は厭戦歌を夜通し歌っていたのではないかと自分は思いました。新宿・池袋の駅前辺りかなぁ。。。やり場のないパワーを厭戦歌に変えて…思いの丈を吐き出すように歌い続けたんだろうなぁ…なんてシンパシーを感じさせる一句でした。
15.わたつみや唯静かなる原爆忌 円路
『わたつみ』ー海神ーですね。広島も長崎も、海に面していて市街地が山に囲まれているため、原爆の被害の拡散はその地に留まる…ということで選ばれたという話を聴いたことがあります。長崎の対馬に海神神社があるそうなので、掲句は長崎を詠まれたのでしょうか…。『唯静かなる原爆忌』のフレーズは、あの時から79年…核に汚染されたあのときの、街も海も今は唯静かに平和を享受してるわけではないぞ…という逆説を読者に喚起させるようで…一見静かなようで、熱い一句だと思いました。炎天や「天地無用」の赤き文字 こちらは漢字席題の高得点句でした。自分が掲句で引っ掛かったのは「天地無用」のラベルですが、あれは赤地に白の文字…が大方のような気がして(最近は黄色の警告色に黒文字のものもありました)…ここが納得出来ませんでしたので「…」と記しました。「赤き札」という表現でいかがでしょうか?ご一考ください。
17.羅や静寂の中の書道展 カリン
カリンさんの句も同点巻頭でした。遅ればせながらおめでとうございます。季語「羅」と「書道展」がよくマッチしていました。同時に書道展の品の良さを感じさせてくれました。炎帝や吾の影小さく地を這へり ご自身のブログでも記されていましたが、空から見たら自分が蟻のように小さな存在だという感覚、私も同感です。共感できる一句でした。カリンさんの記事はこちら↓↓↓
”第112回blog句会「悠々自適」結果発表#2597” (リブログ) 8/23 | のんびり家庭菜園日記(旧カリンの革製品) (ameblo.jp)
19.昼顔や浜はキャンパス風は絵師 おみそ
「昼顔」という季語に対して、『浜はキャンパス風は絵師』という大胆な発想のフレーズが季語を引き立てていたと思いました。こうだ!と断定して言い切ったところも魅力がありました。宵宮や大小並ぶ寄進札 こちらは「宵宮」という「夏祭」の傍題の時間的要素のムード感が溢れる一句だったと思います。
半分終わりました。
続きは、また明日。