それでは、いつものようにご参加の皆さんに敬意を込めて感想を付させて頂きます。

「点盛表」には印を付けておりませんでしたが、悠人「特選」を2句選出しました。

 

㊕18.人台に型紙あてる緑夜かな     カリン

㊕47.抜く足の凹み澄みたる植田かな   おみそ

 

まずは、特選の理由とともに掲句の順で感想記させて頂きます。

 

18.人台に型紙あてる緑夜かな     カリン

「人台」・・・いわゆるトルソーのことですが、「トルソー」としてしまうと、職人のテーラーさんのお店とか専門店を想像してしまいますが・・・「人台」とされたことで、和装の縫製が連想されました。「緑夜」という季語も適切で、時期的に、読者は、浴衣を縫われるのかな?それとも夏服、ブラウスなどを縫われるのかな?娘さんか誰かに差し上げるかしら・・・など、能動的な想像を働かせることが出来ました。季語と、「二物一章」というところが上手く成立していたと思います。風鈴や饂飩蒸籠の麺太し こちらの句も蒸籠に上げて冷やして麺のコシを出した饂飩がさも美味しげでした。

ややもすると、ちょっとセールスのポスターなどに出て来そうなところがちょっとだけ気になりましたが・・・いい句と思いました。

 

47.抜く足の凹み澄みたる植田かな   おみそ

今回の課題、「今を点で詠む」・・・これをきちんと当てはめられた句でした。「抜く足の凹み澄みたる」は次の瞬間には泥が混ざって濁ってしまったことでしょう。植田の景として、足元の一瞬を切り取ったという点で「特選」にさせて頂きました。深山の影もろともに最上川 「最上川」ですぐ連想されるのが芭蕉の句、五月雨を集めて早

し最上川 ですが、掲句も、その最上川の速さを大胆に詠まれていました。芸達者な方だなぁと改めて感心した次第です。

 

それでは、以後、順を追って記させて頂きます。

 

3.片足の残る籐椅子雨の音       笑い仮面

掲句、読者として、なんで片足を「籐椅子」に残したんだろう?という疑問から読み始めました。考え事・・・もしかしたら雨音に、何かしら過去の災害とか負の記憶が甦ったのではなかろうか・・・とか。「籐椅子」という季語をこういう形で詠まれた句にも接したことがなかったので選を入れさせて頂きました。母といふ字をたゆたはせ水母かな 自分も吟行でよく水族館とか出掛けた口ですが、ちょっと頭で作った感が否めなかったかなぁ・・・というのが見え隠れしていたように思います。まぁ、いつも“即興俳句”でご参加の笑い仮面さんですから、さもありなん・・・ですね。

 

6.花南天明かせばほんの小さきこと   粋子

この句は個人的にすごく好きな一句でした。「花南天」の白い花が好きなこともありますが、「明かせばほんの小さきこと」というフレーズに納得でした。自分で抱え込んでいるうちは、あぁ大変だ・・・と気が重くなるものですが、人と話しているうちに、解決策の糸口が見えてきたり、人の意見に・・・そっか!?と納得出来たり・・・そういうことってありますよね。そんなところがスッキリ詠まれていたところに、粋子さん、本当に“粋”だわ!と感動でした。蛍袋一両だけの夜行かな 景として田舎の夜の車輌一両の電車の灯火の鮮やかさが伝わりました。が、果たして「蛍袋」が田舎の暗い駅で見えるのかしら?という疑問が湧きました。その辺をクリアされるとより良い句に様変わりするのでは・・・と思います。

 

7.染筆や窓に濡れそむ額の花       森 器

作者ご自身が、父君のことを詠まれた・・・と仰っておられましたが、それはずるいことでも何でもありません。自分の体感した事物事象を一句に出来ればそれに超したことはありませんが、観たもの・・・も、やはり俳句に残すべきと思います。書画の一筆目を入れるというのは、油絵なんかと違って多分に悩ましいものです。きっと父君も、その一筆を入れる前に窓の外を眺められたのだと思います。自然の有り様に気をもらい筆を進められたことでしょう。佳句と思いました。白日の草にとりつく灯蛾かな 掲句の場合、「灯蛾」という季語が正しいのか、疑問を感じました。「灯蛾」とするとやはり読者は、夏の夜、灯火に誘われてやって来る蛾を連想してしまいます。それで、歳時記を捲ってみましたところ、こんな例句がありました。

 蛾のまなこ赤光なれば海を恋う     金子兜太

 土くさき遺跡の炉辺の白蛾かな     堤 高嶺

 蛾の骸眼赤きは何を見し        岸原清行

 天蛾(すずめが)のかしらの鬼符も能の里 鈴木 明

これらの例句を観た場合、「蛾」そのものが夏の季語として成立しているのが解ります。「灯蛾」を少し変えれば一句、無理なく成立すると思いました。

*こういうのを確かめるためにも『歳時記』はあるんです。←これは初心者、中級者向けの言葉です。

 

9.小鯵刺ただ海の青空の青       円路

掲句もスッキリときれいな一句でした。ただひとつ「海の青空の青」という字面が気になりました。「青」と言っても「青、蒼、碧」と色がそれぞれ在りますから、「海の碧空の青」もしくは「海のあを空の青」と字面まで気にかけてくださったら、もうワンランク上にいったかなぁ・・・と思いました。ただ景は本当に清々しい良い景を観させて頂きました。振りかぶる第一球や若葉風 こちらも爽やかな景、一瞬を切り取る・・・という点では成功していたと思います。ただ、類そうが多そうな気がしました。

 

12.青鷺の両足揃ふ離陸かな       ハイジ

ハイジさんがご自身ブログで素敵な写真を載せておられましたので、共有させて頂きます。↓ ↓ ↓

「悠々自適」句会 6月結果  | ハイジのブログ (ameblo.jp)

一物の俳句でしたが、やはり観察眼がしっかりしていないとこういう句は詠めないと思いました。青鷺・・・ですから、人間と違ってジャンプする必要はありません。翼をはためかせて風に浮力をもらってすうっと飛び立つのでしょう。そんな一瞬を捉えたところが良かったですね。大鍋にぱつと開くや冷素麺 こちらは生活感溢れる一句でした。数分で、美味しい「冷素麺」にありつけたことでしょう。


・・・と、ここまでで

本日は筆を折らせて頂きます。

 

続きは乞うご期待。