それでは・・・高齢(恒例)の感想を付させて頂きます。
7.千枚田すべて冬日の中にあり 静可愛
視点がいいですね!「千枚田」という割と大きな景を配して、そのすべてにあまねく冬日が当たっている・・・という写生ですが、こういう日当たりならお米も美味しい訳だと納得です。秒針の追いつく速さ年の暮 こちらは感覚的な句でした。たぶん人の行動より時計の秒針の方が速い・・・のですが、「年の暮」の慌ただしさ、あれやって、これやって・・・なんて頭の中がこんがらがっているうちに時は無情に過ぎていきます。
インパクトのあるフレーズと季語・・・。見事でした。
1.千三つの男ほがらか寒卵 笑い仮面
「千三つ」・・・千に三つくらいしか真実を述べない・・・もしくは当たらない・・・言わば「ほら吹き」ですが、・・・そんなことは気にしないほがらか男(ただの脳天気)の様子と「寒卵」の季語が妙にマッチしていたと思いました。半生をいけ火とともに過ごしけり こちらは作者ご自身の自懐の観点で詠まれたのだなぁと思います。・・・「いけ火」に味わいがありました。蛇足でもう一句、赤かぶら西日いきなり倒れたる 季語「赤かぶら」の収穫を終えて・・・でしょうか・・・「西日」が夏の季語ですからねぇ。こちらの季語の印象の方が強いので・・・季重なりにどうしてもなってしまう場合、どちらの季語が強い(主役)か、その辺をご検討頂きますよう。あと「西日」が「倒れた」という表現も気になりました。即興俳句・・・いつも有り難うございます。
2.途切れ無き生命線や去年今年 あき坊
「途切れ無き生命線」とはうらやましいものです。・・・と思いましたが、作者の解説をご自身のブログで書かれていて・・・大病を患われたとのこと。意味がさらに深まりました。季語「去年今年」も一年を振り返り・・・合っていると思いました。母の字の母の句帳や根深汁 お母様も俳句を詠まれたんでしょうね。その句帳を開いて思うこともいろいろと在ったことでしょう。ここでも「根深汁」の季語が動かないと思いました。
湯豆腐や幼馴染の顔の皺 掲句、句としては幼馴染と「湯豆腐」をつつく・・・ということにしみじみと感じ入り個人的には好きな句でしたが、どこからか、故藤田湘子の「あんまりジジくさい句を詠むな」という言葉が聞こえたように思いましたので、蛇足ながら一言書かせて頂きました。今年、新たにご参加頂き活気づきました。またどうぞよろしくお願い致します。
3.千羽鶴再生紙へと年暮るる カリン
今回「千羽鶴」の句が2つありましたが、こちらは、それが再生紙にという・・・お役を果たして「年の暮」に至ったという句。「年の暮」ではありますが、将来に明るい見通しがあるようで、そんなところに惹かれました。かたまつて鯉の背黒し冬日向 掲句、「かたまつて鯉の背黒し」のリアリティのある景に「冬日向」の配合が良かったと思います。
9.確率にすがる恋路や月冴えて ひょうたん機
よく「俳句に恋は合わない」と言われますが、掲句、現代の若者的恋愛観と「月冴ゆ」の季語がぴったりはまっていたと思いました。可愛くて幼馴染で雪女 「雪女」というと、美しさと、その中に幽玄な怖ろしさを感じておりましたが、それぞれの地域で「雪女」伝説があり、中には可愛らしいのもいたりとか・・・。「?」マークを付けてしまいましたが、個人的概念に囚われすぎたようです。失礼しました。
10.永久歯生まるるまへの花八手 粋子
発想は面白い句と思いました。「永久歯」が生える前と言えば・・・歯抜け・・・の状態です。「・・・生え始めけり花八手」とかいかがでしょうか?ご検討頂ければと思います。