しばらく進むと曇天の下、どこかそこだけ明かりが灯ったような景色に出会った。
メタセコイアの黄葉(もみじ)が実に見事で、思わずため息が出るほどだった。
写真でも言葉でも何かうまく伝えられない…どこか荘厳な思いに満たされた。大自然は、そのものがまさに偉大な芸術家なのだと思う。いかなる絵描きも彫刻家も及ぶことの出来ない色を、光を、景色を見せてくれる…芸術家だ。
我々はしばし無言で佇んで、拙い言葉でなんとか景を切り取ろうとするのみだった。
多摩川の清流の音が響いてくる。
―この下に川原がありますから降りてみましょう。
冷たい冬の川がそこに横たわっていた。
皆、川原で一所懸命に言葉のスケッチをしている。
冬の川の、この碧さに見惚れてしまった。
若者たちが向こうの方で投石の「水切り」をしていた。
なかなか日が差さない冷たい空気を斬るように鶺鴒が川面を掠め飛んでいった。
少し先の堤に登ると、いろは紅葉が出迎えてくれた。
一つの樹の梢の方から順々に紅葉していく姿は、神秘めいていて、これをどうやって言葉で表わすべきかと首を傾げて思いにふけった。
しばし愁思。
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