11月23日は、小説家樋口一葉の忌日である。

樋口一葉とは、言わずと知れた五千円札の肖像の、あの方である。代表作「たけくらべ」が有名であるが、その声明の絶頂に24歳の若さで永逝。肺結核による。


瀬戸内寂聴さんも、著書『わたしの樋口一葉』の中で、その才能について触れている。

『…このごろしきりに思うんですけれども、やはり人間の才能の分量というものはもう決まっておりまして、早死にする人は早死にする時点で持っているものを全部出しきって死んでいるような気がするんですね。…一葉は、作品の数は少ないけれども、明治以降の日本の若い文壇の中で、女ではただ一人の職業作家として成功しました。…』


若くしてその才能を出し切ったと言われる一葉の暮らしぶりは、決して楽なもではなかった。明治22年、父の死去に遭ってからというもの、一葉が戸主となり、母妹との3人暮らしの生計を、和服の仕立てや洗い張りで立てていたという。それでも暮らしはままならず、生活費の不足は借金や質入で補っていた。そんな暮らしぶりについて、先の瀬戸内寂聴さんは次のように書いている。

『ドストエフスキーがばくちですった借金の返済に追われて書きつづけて古今の傑作を遺し、一葉は貧に追われて一家の糊口のために書きつづけて名作を残した。…』


若くして亡くなるまで生活苦と闘った一葉の忌日が勤労感謝の日と重なる。

本当は大恋愛などもしたかったろうに…。



一葉忌をんなを傘に入れにけり  悠人



今日の関東は快晴だった。

ただ一葉忌を思うとき、雨もまた似合うと思った。




ランキング

こちらも応援クリックして頂けると大変励みになります。宜しくお願いします。