田山花袋記念文学館で、もうひとつ目に留まった言葉がある。
絶望と
悲哀と
寂寞とに
堪え得るような
まことなる生活を送れ
「田舎教師」より
現代人の生活を慮ったような言葉にどきっとした。虚飾に満ちた表面的にきらびやかな暮らしよりも、心にひとつしっかと根ざすものを持った「まことなる生活」をせよ!との言葉に、身につまされる思いがした。この明治の文豪の書斎というのは至って簡素なものであった。展示室の一角に復元されていた。
「絶望…悲哀…寂寞…」…誰しも多かれ少なかれ抱えているものだが、それに堪える簡素な暮らし、ものの真髄を見極めようとした、文学ひとすじに生きた花袋の生き様を、そこに垣間見たのだった。
上の写真は、花袋が少年時代を送った館林の旧家。文学館と道を隔てた向かいに建っている。
茅葺の屋根が陽光に映えた。
敷地内にもうひとつ建っているのが、旧上毛モスリン事務所。
明治後期のシンメトリー式洋風建築の様子が覗えた。
朝は風も凪いでいたのが、日が高くなるにつれ、時折、澱んだような生暖かい風が街に吹き始めていた。ここからは再度、車で移動し、つつじが岡公園内で蓮見舟を楽しむ予定にしている。
…水辺ならば、それでも幾らかは涼しかろう…。
ボート小屋に到着すると、船頭が既に支度を終えて、いつでも出発できるように待ってくれていた。
桟橋の照り返しが眩しかった。
…11時をまわって、まだ蓮は花を開いているだろうか?
ボートのエンジンの音が湖面に鳴り渡り出発となった。
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次号いよいよ蓮の花と句会の様子をお伝えします。