それでは、今回の句の発表です。
さくらんぼ落ちて明るし雨の道 純江
まなうら
眼裏にヒスイカヅラが焼きつけり なほ
子燕や古き駅舎の時計台 久雄
咲き残るつつじの里の小雨かな 英子
は
青葦や霽れて山脈近付きぬ 裕子
ごがつ は
小雨降る沼の静けさ五月果つ 翠
身を包むかすかな不安青葉風 淑江
じょうぬま ぎょうぎょうし*
城沼に耳そばたてり行々子 ルリ子
*行々子…ヨシキリのこと。葦の草むらに巣をつくり、その名の通りギョギョシ、ギョギョシとうるさく鳴く
桜の実踏む雨たのし歌たのし しのぶ
止みさうな雨なりトマト熟れゐたり
ブーゲンビレア黒髪風になびきけり 悠人
蓮の葉やポンプの音の響く午後
今日は、俳句のお手本のような句がありますので、その解説を少しさせていただきます。
あおあし は さんみゃくちかづ
青葦や霽れて山脈近付きぬ
←上五→← 中七 →← 下五 →
*俳句の3分轄を(かみご)(なかしち)(しもご)と呼びます。
まず「青葦や」と季語を上五に持ってきて「や」という切字(きれじ)を持ってきて詠嘆することで、青々と茂った葦の原を描き出します。
つづく中七の「晴れて」がこの句の巧いところで、「晴れて」ということで、今まで曇っていた景観を暗に伝えた上で、つづく「山脈近付きぬ」と下五へと流れています。実際、山脈の方が近付くなんてことはありませんが、「近付く」と言うことで、曇り空の一瞬の晴れ間に山脈がどっと迫り出した景がよく見えてきます。
もうひとつ加えますと、青葦という近景を見た上で、山脈という遠景を望み見ている視点の遠近が、言葉による景のスケッチをはっきりとさせています。
それでは、皆さんもちょっと息抜きに言葉遊びをお試しあれ。
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