肩こりに対する西洋医学的な鑑別と弁証論治セミナー | YNSA(山元式新頭針療法)による難病治療 難病改善人冨田祥史(とみたよしふみ)のぶろぐ

肩こりに対する西洋医学的な鑑別と弁証論治セミナー

9月1日に関西中医研究会において「肩こりの西洋医学的鑑別と東洋医学的治療の総論」についてのセミナーが行われます。
皆さんが臨床上遭遇することの多い肩こりについて、新しい知見が発見されると思います。ぜひご参加ください。
このレベルでの肩こりの臨床セミナーはなかなか無いと思います。
定員100名ですが残席が限られていますのでぜひご参加ください。

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9月1日に関西中医研究会で「肩こりと痃癖の分析(肩こりの弁証論治)」を講義と実技します(※1)が、最初に西洋医学分野では、『セグメンタル・アナトミー』を引用しつつ、「肩こり」と内臓体壁反射について基礎からお話します。

 肩コリの部分はC4デルマトームです。

 よく「胃」が悪いと左肩がこるといいます。日本の『はりきゅう理論』の教科書では、胃腸管はT6-T11になります。内臓体壁反射では、ミゾオチはT7で、臍がT10ですから、「胃腸管」の反応は、日月(GB24)のツボなど季肋部からヘソ下あたりのハズです(笑)。肩とは関係しません。

「胆石症」の内臓体壁反射では右肩に関連痛が出る場合があります。「肝臓」「胆囊」の 「ヴィッセロトーム(Viscerotome:内臓分節)」はT8からT11なので、やはり肩とは関係ありません。

「狭心症」の患者さんも肩がコリます。日本の『はりきゅう理論』の教科書では、心臓はT1-T5です。やはり肩とは関係ありません。たまに、良い解剖学の本では、心臓の関連痛として胸部から上腕そして左小指を図示しています。小指はT8デルマトームです。やはり、心臓の 「ヴィッセロトーム(Viscerotome:内臓分節)」のT1-T5と大きくズレます。

 しかし、現実に、「胃の肩こり」、「胆石症の肩こり」、「心臓の肩こり」、「肺呼吸器の肩こり」は存在しますし、論文もあります。トリガーポイントの創案者ジャネット・トラベルは循環器専門医であり、「心臓の肩痛」や「結核の肩痛」を記録しています。

 内臓体壁反射について、1852年にドイツの医師イシュマール・イシドール・ボアズ(Ismar Isidor Boas:1858-1938)が胃潰瘍の「ボアス点(Boas' point、Boas-Druckpunkt)」を発見しました。左第10胸椎から第12胸椎の間であり、ちょうど脾兪と胃兪のツボに相当します。イシドール・ボアズはドイツ消化器学会(Deutsche Gesellschaft für Gastroenterologie)を創ったドイツ医学史に残る人物です。
1894年にアメリカの医師チャールズ・マックバーネー(Charles Heber McBurney:1845-1913)が1894年に急性虫垂炎の「マックバーネー点(McBurney's point)」を発見しました。
 1893年に偉大な心臓病医師ジェームズ・マッケンジー(James Mackenzie:1853-1925)の『マッケンジー帯(Mackenzie's zones)』が発表されます。
 1894年にはヘンリー・ヘッドが『 ヘッド帯(Head's zones)』を発見しました。

1852年「ボアス点」の発見
1893年「マッケンジー帯」の発見 
1894年「マックバーネー点」の発見
1894年「ヘッド帯」の発見
という時系列になります。

 19世紀後半から盛り上がった「圧診点」の研究は、今では「マックバーネー点」以外に西洋医学の教科書には残っていません。
これらの内臓関連痛の研究は、英米ではイギリスのイギリスの最初のリウマチ専門医ジョナス・ケルグレン(Jonas Henrik Kellgren :1911–2002)やトリガーポイントの創始者、アメリカの心臓病専門医のジャネット・トラベルに受け継がれました。ジャネット・トラベルは1936年に心筋梗塞での肩甲骨の痛み(トリガーゾーン)ということに気づきました。それから結核病院で肺から腕の関連痛に気づきます。さらにベス・イスラエル病院で心臓から腕の関連痛に気づきましたが、これらの関連痛は、当時の医学では無視されていました。1940年代になると、トラベルは、トリガーポイントへの1パーセントプロカイン注射を試みるようになりました。これは、1938年にジョナス・ケルグレンが「筋肉から起こる関連痛」でプロカイン注射をしていたことにヒントを得ました。

※ジョナス・ケルグレン「筋肉から起こる関連痛」
Referred pains arising from muscle. 
Kellgren JH.
Br Med J 1938;1:325–7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2085707/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/…/PMC2…/pdf/brmedj04263-0006.pdf

トリガーポイントのジャネット・トラベル以外に内臓関連痛の研究を継いだのは、日本の医師達でした。

京都大学生理学教室の石川日出鶴丸教授(1848-1947)門下の後藤道雄が「ヘッド氏帯の臨牀的応用と鍼灸術」刀圭書院1917年(大正6年)を書きました。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/981024
(国立国会図書館 近代デジタル・ライブラリー)

さらに日本の医師、小野寺直助先生が登場します。小野寺直助先生は、1916年(大正5年)にマッサージ師さんに「小野寺殿部圧診点」をおそわり、1921年(大正10年)には医学雑誌に発表されています。1937年(昭和13年)以降、多くの論文が消化器系の医学雑誌に発表されています。

小野寺直助「胃癌・胃十二指腸潰瘍診斷例の二, 三」
『消化器病学』Vol. 2 (1937) No. 6 P 1097-1102
https://www.jstage.jst.go.jp/…/nisshoshi1…/2/6/2_6_1097/_pdf
※胃ガン・十二指腸潰瘍と小野寺殿部圧診点

小野寺 直助著
「圧診点および2, 3の応用」
『日本鍼灸治療学会誌』Vol. 14 (1964-1965) No. 2 P 1-8
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1955/…/14_2_1/_pdf

弘前医科大学教授、松永藤雄(まつなが・ふじお:1911-1997)先生は、小野寺直助先生の後継者です。小野寺殿部圧診点を追試して、このような圧診法の価値を外国人に客観的に理解させるために、「内臓の病気の場合、内臓の状態を反映する背部兪穴の部分の温度が低下する」という「エアポケット現象」を研究し、『日本消化器病学会雑誌』などで発表しました。

「壓診法(圧診法)と其の吟味」
松永 藤雄、 弘前醫科大學
『日本消化機病學會雜誌』Vol. 48 (1950-1951) No. 1-2 P 1-23
https://www.jstage.jst.go.jp/…/nisshos…/48/1-2/48_1-2_1/_pdf

「内臓疾患と皮膚温度, とくにエアポケット現象を中心として」
松永 藤雄『日本鍼灸治療学会誌』Vol. 20 (1971) No. 2 P 1-10
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1955/…/20_2_1/_pdf

 内臓体壁反射を研究される場合は、間中喜雄(まなか・よしお)先生の『医家のための鍼術入門講座』が最も参考になります。ここに、1950年に医師の成田夬介(なりた・かいすけ)先生が出版された『圧診と撮診』という本の重要部分が全て転載されています。皮膚をつまむ『撮診(擦診)点』は、経絡治療の岡部素道先生に取り入れられました。
 この1950年には、医師の中谷義雄(なかたに・よしお:1945-1978)が良導絡・良導点を発見し、1953年には『日本東洋医学会雑誌』に「経穴經絡の本態について」を発表しています。さらに、医師で北陸大学教授の藤田六郎(ふじた・ろくろう:1903-2004)が1954年に、デルマトームに沿った「丘疹点(きゅうしんてん)」を発見・発表し、多くの「経絡現象」を写真で発表しました。

 日本の内臓体壁反射研究は、間違いなく、世界のトップでした。

 わたしが研究した限りでは、現在の多くの方が「デルマトーム」や内臓体壁反射について、不十分な知識しか持っていないです。

2008年「ヒトのデルマトームへの科学的根拠に基づくアプローチ」
An evidence-based approach to human dermatomes.
Lee MW, McPhee RW, Stringer MD.
Clin Anat. 2008 Jul;21(5):363-73. doi: 10.1002/ca.20636.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18470936 

この衝撃的な研究は2005年以降に出版された『グレイ解剖学』のような一流の医学部教科書13冊から14種類のユニークなデルマトーム・マップを見つけ、それらの根拠になっている文献が1933年のFoersterと1948年のキーガンとギャレットによるものであり、しかも誤りを多く含んでいることをつきとめました。誰もが疑わない医学の権威の教科書『グレイ解剖学』に挑戦し、しかも証拠に基づいて『グレイ解剖学』に圧勝しました・・・。 これこそがサイエンスです。

2011年『整形外科とスポーツ理学療法』掲載の論文
「競合するデルマトーム・マップ:教育と臨床の関係」
Conflicting Dermatome Maps: Educational and Clinical Implications
Mary Beth Downs, PhD, Cindy Laporte, PT, PhD
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2011, Volume: 41 Issue: 6 Pages: 427-434 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21628826 

以下、引用。
「われわれは過去60年間の文献を調査したが、キーガンとギャレットの仕事を確証するいかなる実験も発見することはできなかった。反対に彼らの結果を反証するような証拠は発見できた」
Although we have searched the literature of the past 60 years, we have found no experimental confirmation of Keegan and Garrett's work. On the contrary, we have found evidence contradicting both their results and the validity of their techniques.

「3つのコア・マップの中で最も欠陥を持っているにも関わらず、キーガンとギャレットのマップは広く無批判に再生産されている。そして、まだ、キーガンとギャレットのデルマトーム・マップは教科書に浸透して、理学療法教育プログラムを広く支えているのである」
despite the widespread uncritical reproduction of the Keegan and Garrett map, it is the most flawed of the three core maps.” Yet the Keegan and Garrett dermatome map permeates textbooks and atlases commonly used in physical therapy education programs 
以上、引用終わり。

 ヘンリー・ヘッド卿のあと、1933年にナチス・ドイツのフォースター(Otfrid Foerster)という医師は人間の神経を切断することでデルマトーム・マップを作成しました(Foerster O. The dermatones in man. Brain 1933;56:1–39)。
そして、1948年にネブラスカ大学のジェイ・キーガンとフレデリック・ギャレットが現在流通しているようなデルマトーム・マップを作成して出版しました。マップは椎間板ヘルニアの知覚脱失に基づき、神経根に2パーセントのノボカイン麻酔薬をブロック注射して、マッピングを行いました(The segmental distribution of the cutaneous nerves in the limbs of man. Keegan JJ, Garrett FD. Anat Rec. 1948;102:409–437)。

 そして、現在の世界中のデルマトーム・マップは、これらの転載であり、転載ミスが重なって、間違いだらけなのです!!!

 9月1日の講義は、これらの最新知識に基づいた、肩こりの西洋医学的病態分析からスタートします。
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(※1)「肩こりと痃癖の分析」
9月1日土曜日18時ー21時
大阪市立総合生涯学習センター(大阪駅前第2ビル5階)第1研修室
申し込みは、以下のフォームからお願いいたします。

https://ssl.form-mailer.jp/fms/b9f7591b536599

研究会のホームページ

http://www001.upp.so-net.ne.jp/yuihari/top.htm